前回、「経営者や上司の人材育成の「目的」が間違ってると、成長が止まる。 (前編)」の続きです。
前編では、
「お前は馬鹿だから考えるな。とにかく動け」
というメッセージ性が含まれているマネジメント、
たとえば
「俺の言うことが正しいんだから、いいからやれ!」
というような指示をしていると、相手は自発的に自由に考えることをストップし成長が止まる。
そして、利益を生むことは当然で、さらに組織を引っ張り支える人材に育てることが
理想のマネジメントであり、それは可能である。
そのためには人材育成の目的を認識することが必要。
アドラー心理学では、教育の目的を定義している。
ということをお伝えしました。
前述の若手社員の例は、
「言われた通りにがむしゃらに行動し、契約してくる」ということをゴールにしているわけですから、
そのマネジメントは、見事に目的を達成しているわけです。
ある意味失敗していないのです。思い描いた通りになっている。
人が為すことは、意識的にも無意識的にも、思い描いたことが実現します。
アドラー心理学の目的論という概念です。
だから、目的を履き違えないことが大切なんです。
自己啓発の源流アドラー心理学では、教育の目的を二つ定義しています。
これは子育てにおいても、企業の人材育成においても、非常に役に立ちますので、
ぜひ参考にして頂ければと思います。
目的の一つ目は、
「自立」
二つ目は、
「調和」
です。
ここでいう『自立』とは、一人前の仕事ができるようになったとか、
経済的に人に頼らなくなったという意味ではありません。
そうではなく、「自分には能力があると思えること」です。
つまり、私はできる、と思えるということです。
仕事も人生も、必ず困難が降りかかります。これは絶対に避けることができません。
そして、できることもあるし、できないこともある。自分の強みもあるし弱みもある。
それらを自覚し、困難を「乗り越えられる」「がんばろう」と思えるという力です。
もう一つの『調和』は、「人を仲間だと思える」ということです。
助け合いながら共通の目的を達成する力です。
困った時には人に頼ることができ、人が困っているときには力を貸す。
また、1+1を3以上の力に変える力です。
『自立』と『調和』、この二つが教育のゴール、目的だと、アドラーは言っています。
この自立と調和は、企業組織においても当てはまる大切なことですね。
失敗を恐れず自分の強みを活かして困難なことにチャレンジする。
敵対した競争よりも、共創する姿勢で一人では成し得ない大きな成果を上げる。
そういった人材が欲しいと思いますよね?
「お前は馬鹿なんだから考えるな、いいから俺の言う通りやれ」
という意味が含まれるマネジメントすることは、相手の自立と調和を著しく損なうやり方です。
馬鹿扱いされれば、自分に能力があると思えないのは当然ですし、
いいから売れ、契約してこい、というマネジメントは、
売ることが最優先、売れないと自分は居場所がない、と思うようになります。
【注目したところが伸びる】
ではどうすれば、利益を伴う自立と調和を育むマネジメントになるのか。
繰り返しますが、
自分にはできる、困難に挑戦したい、
人と助け合うことでより大きなことができる。
そう思えることが目的です。
人の心は、意識したことが大きくなります。
注目すればするほど大きくなります。
ですから、「絶対に失敗するなよ!」と言えば言うほど、失敗することが頭から離れなくなる。
結果、失敗する確率が高まってしまいます。
人を育てるのが上手な人は、この作用を良い方向へ向けるために利用しています。
優れたマネジメントをする人は、
その相手らしい長所、失敗の中でもできたこと、困難に挑戦しようとした姿勢、
すでにできているところに着目します。
できてないところを指摘し過ぎると伸びないですし、それどころか人の心は折れてしまいます。
つまり、欠点よりも長所、できてない所よりできた所を見る目を持ち、伸ばしています。
また、人との比較ではなく、自分の過去と比べて成長できた距離を指摘してあげることも
とても重要です。
【承認欲求を満たしてはいけない。貢献感を満たす。】
売上を上げたから、達成したから評価する、褒めるのではなく、
組織やチーム、また自分や誰かに貢献してくれたことを褒めることが調和の力を育む秘訣です。
褒められて嬉しいという感情を大きくすればするほど、褒められたいがために努力することになり、褒められないと努力しなくなります。
また、会社や上司は褒めて当然、評価して当然、という依存心を育んでしまうのです。
それに、褒めてくれないと、それを不満に思うようになったり、
自分以外に褒められる人を妬み、敵と感じるようになってしまいます。
だから、できたときは褒める、できないときは厳しくする、というアメとムチのマネジメントではなく、
組織やチームや仲間、また顧客に貢献している所を見い出してあげること。
褒められなくても、もっと貢献したいという自発的な気持ちが湧いてきます。
【タテの関係からヨコの関係へ】
「よくやった」と褒めるのは、上から目線のタテの関係です。
たしかに褒められれば嬉しくなるのが人間ですが、
褒められること自体が目的となり、褒められないと頑張らなくなるのも人間です。
これは自立の反対の依存を生むことにつながります。
対してヨコの関係は、褒めるのではなく感謝です。
「ありがとう」
「おかげで助かったよ」
という言葉が相手の自立と調和を育むのです。
褒めて気分を良くさせてもっと頑張らせよう、という姿勢は、
めちゃくちゃ勝手で上からな行為です。
人はつながりを求める生き物です。自分らしさや、自分の頑張りが
誰かの役に立っているという実感が、最も強く、最も長持ちするモチベーションになります。
【大事なのは、やり方よりあり方】
ここで一番重要なことは、テクニック論ではありません。
関係性です。
「いいから俺の言う通りやれ」というマネジメントは、上からのタテの関係です。
上司の言うことが正しい、正義、という前提を作っています。
そうではなく、新人扱いするのでもダメ社員扱いするのでもなく、
一人の人間として、仲間として扱うのです。
これはタテでなくヨコの関係です。
ヨコから見ることで、その人の長所や才能が見えるようになります。
すでにできているところ、うまくいった過程、長所、得意分野などを見つけてあげるマネジメントは、人間の才能と意欲を引き出します。
また相手にとっては、本音が言えるようになります。
この天才だったのが吉田松陰です。
わずか2年あまりで革命を起こす人材を何人も育て上げました。
吉田松陰が残した、こんな言葉があります。
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人を信ずることは、もちろん、遥かに人を疑うことに勝っている。
わたくしは、人を信じ過ぎる欠点があったとしても、
絶対に人を疑い過ぎる欠点は
ないようにしたいと思う。
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【型にはめるのは悪か?】
ここで一つ浮かぶ疑問は、型にはめることは悪いことなのか問題です。
しかし、基礎を知らない人には、教えてあげることが必要です。
これは自立を妨げることではありません。
大事なことは自立を作る教育は、「教」が「育」を上回らないことです。
教えることは基礎的なことで十分です。
ですから基本の型を教えることは必要です。
【まとめ】
目的の通りに人は育つ。
育成や教育の目的は、『自立』と『調和』。
育成や教育の目的は、『自立』と『調和』。
タテの関係で上で指示する、褒める、のではなく、
ヨコの関係で対話し、感謝する。
できていないところを指摘するよりも、できているところを指摘する方が伸びる。
大切なことはテクニックのやり方ではなく、関係性のあり方。
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能力を発揮するのは、心の状態次第。
困難を乗り越える、限界を超えることを支えます。
世の中を変革する人、世界を感動させる人の
心を整え、その夢を実現するパートナーになります。
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