お昼ごはんに立ち寄ったのは
東日本にたくさんある
チェーンの定食屋さん

お惣菜やら
ガッツリしたオカズやら
チャーハン
ラーメンまで
自分でチョイスして
トレーに載せていく

暑さでイマイチ食欲がない
とか言いながら
やっぱり大好きな揚げ出し豆腐

後はかぼちゃの煮物とネバネバオクラ納豆



店の1番奥のテーブルで
食べ始めてすぐに
DANさんの携帯が鳴り
店外に出て行ってしまったので
1人で黙々と食べる

その時

お昼少し前の割と空いてる店内で
食器返却口にトレーを返した
おじさんを
ボヤーっと見送りながら

あれ?なんか…泣きそうになった


最初理由はわからなかったけど

いろんな記憶が急に溢れてきた

そしてその理由は
そのおじさんの

「ごちそうさん」ってひと言

声とイントネーションが
私に父を思い出させた


あれは高校生の頃

父が母や私達と別れ
家を出て行き4年目くらいだった

同じ町に住んでいた父の所へ
私は学校帰りに
ごはんを作ったりしに通っていた事がある

料理なんて家でもした事がないのに
見よう見まねで作ったのは
カレーやハンバーグ

1DKの小さなガランとした部屋で
父が1人で居るのかと思うと
何かせずにはいられなかった

その頃はもちろん携帯もなくて
父は部屋にも電話を引いてなかったので
いったいどうやって連絡してたんだっけ?

多分行き当たりばったりで
父が不在で会えなくて
材料を持って
がっかりして帰ったことが
結構あったように記憶している


その日は父が
どんな経緯だったか忘れたけど
よくゴハンを食べに行く定食屋さんに
連れて行ってくれた

今のように綺麗な
画一化されたお店ではなく
昔ながらの割烹着姿のおばちゃんがいて
ショーケースの中からおかずを取って
ごはんを盛ってもらい
父と向かい合って食べた


制服を着ていた私の事を
お店の人全員が珍しげに見ていて

大っきなお嬢さんがいるんだねぇ
って
おばちゃんはにこにこしていた


父は常連さんらしく
下の名前に
ちゃん付けで呼ばれていた


昔から周りの人を穏やかにする
ほっておけない坊ちゃん気質の父は
少しも肩の力を入れて
生きてるようには見えず
きっとひとりで居るのは
色々としんどかったと思うけど


私はこんな場所が父にある事に
なんだかホッとしていた


ごはんを食べ終えて
爪楊枝くわえながら

「ごちそうさん」って

ちょっと大阪弁のイントネーション

父の後ろで
ちょっと頭を下げて
お店を後にした

どんな話をその時したのか
それは全然思い出せないのに

その時の父の声が
ふいに甦ってきた



あの頃あのお店にいたおばちゃん

もうとっくに父が亡くなった事
知らないだろうなぁ
60代で亡くなるなんて
思ってもなかっただろうなぁ


ごはん食べながら
なんだってそんな面倒な事
思ったりするんだろ
急にウルウルきて
喉が詰まりそうになるやん


8月やなぁ
お盆やぞ
会いにこんのか?

そう言いたいのかな
お父さん

今年は行けそうにないから
急に出てきた?


電話を終えたDANさんが戻って来た時
涙目なのがバレないように
お味噌汁が東北仕立てで
やっぱり辛いね
って
ちょっと怒ったみたいに言ったけど

美味しかったです
かぼちゃの煮物