長男28歳
小3で始めたバスケは最初は
とても楽しかったらしい
けれど5年になって
レギュラー入りすると地獄の特訓が
待っていた
その頃の先生は30代
バスケに関しては鬼コーチで
市内でも有名
その頃ちょっと流行ってた
ロン毛の兄ちゃんスタイルなんだけど
とにかく厳しく無愛想
親なんて子供を人質に取られてる
みたいなもんで
言いたい事も言えない雰囲気
試合中失敗すると
スリッパは飛んでくるし
突き飛ばされる事もあった
でもそれって
だいたいどこのチームも
多かれ少なかれあった時代
頭に血がのぼる人が多かった?
いやコーチはそうなっていくのか?
試合中にビンタを見た事は
しょっちゅうあるし
どこかのコーチが椅子投げて退場に
なったのも見た事がある
長男ともう一人は5年から
レギュラー入りしたもので
6年生に混じっての練習や試合に
緊張でいつも引きつった表情で
見ていて可哀想だった
先生がキレまくりながら
負けた時は
5キロはあろうかという道程を
試合後走って学校まで帰り
そのまま練習に突入した事もある
その時もレギュラーの一人が
やらかしたミスのせいだから
そいつのせいで走るんだぞ
って宣言してのランニング
どんだけ追い込むんだか😓
けれど当事者の親は何も言わない
6年生の父兄は
それが伝統だから
それでも強くなるなら
言うのが怖いから…で
みんな先生のご機嫌とるばかり
その年の夏休みも例年どおり
朝から夕方までの練習に追われ
長男は成長するどころか
どんどんゲッソリとなっていく
聞くと先輩含め
ほとんどの子が吐いたり
ぶっ倒れたりしながら
練習してるとか
長男も昼休みに家に戻り
お昼ゴハンを用意しても手をつけず
吐き気でうずくまることも
しばしばある夏だった
ひと昔前の
スポ根ドラマじゃあるまいし
そんな事してたら体壊すやん
それでも練習にいくと言う長男を
ハラハラしながら見守るしかできず
しかしある朝
とうとう長男が言った
練習に行けない
お腹が痛い
だよね
行かなくていいよ
連絡しておくから
今日は休もう
やつれた長男の覇気のない顔を見て
ゆっくり寝るように言うと
ホッとしたような表情をみせた
そして翌日も
出かける間際の長男の顔色は冴えない
その朝は同じくレギュラー入りした
同級生が心配したのか迎えに来たので
長男と二人揃って元気なく
練習に行くのを見送った
その1時間後
バタバタと帰って来たので
どうしたのかと聞くと
誰だかが怒られて
今日はもうみんな帰れー!って
先生が言ったから帰って来た
という話
そっかそっか
よかったね〜ゆっくりできるやん
シャワー浴びて着替えり〜
とお風呂に入れた途端
チャイムが鳴り
そこには先輩の6年生が立っていて
先生が今すぐ戻れって言ってる
とお迎えに来た
長男はびしょ濡れのまま
半ばパニックになりながら
着替えて出て行った
その夜帰宅した長男の話を聞きながら
私の導火線に火がついた
まさか帰れと言われて帰るとは
思わなかった
それでも練習させて下さいって
なんで言わんのかと
その日のメニューはしごきに近く
何人も吐いたらしい
それから
やめろという私と
やめたくないという長男で
もめにもめて
とりあえず今日は休みなさいと
翌日の練習に行かせなかった
その夕方
練習が終わるのを待って
先生に話があると言うと
夏休みのほとんど人のいない校舎の
校長室に招かれ
話をすることになった
ギロッと睨まれたら
声もでなくなりそうな迫力のある人で
正直本当に怖かったけど
私はもう黙っていられなくて
今まで見てきて
思ってた事を全部ぶちまけた
バスケが好きな子供達の気持ちを
もっと大事にしてほしい
吐くまで
お腹痛くなるまで
追い詰める必要があるの
責めるだけではなくて
褒めてあげないと子供は萎縮して
伸びない
だいたい先生は人を褒める事が
なさ過ぎ
一旦口火を切ると
もう止まらなくて言いたい放題
言ってしまった
しかも私
内心はバクバクしていて
死にそうに緊張していても
そういう時ほど口調は
冷静で落ち着いてみえるらしい
先生はほとんど口を挟まず
私の話を聞いて
僕には僕の考えがある
と返してきた
先生が教職の仕事をしながら
夏休みなのに
ボランティアで指導してくれてる事は
本当に感謝してる
それがわかってるから
今まで誰も先生のすることに
口を出さなかったのもわかる
でも私は子供の
身体も心も守る義務があるから
引けません
バスケを好きな子供の気持ちを
壊さないで欲しい
そういうと
先生はしばらく黙った後に
拍子抜けするくらいあっさりと言った
わかりました
検討します
へ?
冗談やなくて?
ちゃんと考えてくれるの?
8割方交渉は決裂し
それでも
長男にそんな理由で
バスケを諦めさせる事は
できないので引越しも覚悟していた
でも検討って…
まさかあの先生からそんな言葉が
でるとは
これは後に保護者の方に話した時に
みんな一様に驚いてた
そして更に驚いたのは
その後の先生の振る舞いが
明らかに変わったこと
怒るのは以前と変わらない
テンションではあったけど
いいプレーができた時に
褒める言葉を言うようになった
最初にそれを聞いた時
見ていた父兄も言われた当人も
ぽか〜んとなるほどビックリ
その後も厳しさは相変わらずでは
あったけど
以前よりはずっと穏やかな雰囲気で
練習も一人をとことん
追い込むような事はなくなり
長男は前より少しだけ楽しげに
バスケをする事ができた
そしてずっと頑張ってきた
そのシーズンの6年生の代は
区で優勝した
6年生の卒業と同時に
私達も区外に引越しをする事になり
チームから離れる話をした時に
長男は初めて
先生に褒めてもらえたという
5年生にしては本当にいい選手に
なった
これならどこに行っても大丈夫
バスケはずっと続けて欲しい
無愛想でいつも眉間にシワを寄せて
怒鳴ってばかりの先生に
名前呼ばれただけで動きを止める程
ビビっていた長男は
その言葉にもただただビックリした
と言いながらとても嬉しそうだった
その先生とは
不思議な縁があり
後に私達が転居した区に
転勤で移動されて
長男はその時中学生だったけど
次男がまたバスケをしていたので
試合会場に行くたびに顔を合わせる
ようになった
試合の合間の休憩時間に
話す機会も増え
私と年がタメである事がわかり
それからは友達みたいに話す仲に
なって
このオバちゃん
俺とタイマン張りに来て
メッチャ言いたい放題云う女で
俺初めて怒られた💦
って他のコーチに
告げ口されてしまったり
長男が中学で悩んでいる時に
相談に乗ってもらったり
ずっと昔から知ってる同級生みたいな
関係になった
一度コーチ同士の飲み会に
参加する機会があり
お酒も入ってたせいかな
あそこまで言われたら
そうかなぁと思って
褒めてみたけど
最初はやりづらかったわ
でもその後チームの動きがよくなった
このオバちゃんのおかげ
ってやっぱり眉間に皺を寄せて笑った
それから三年後
先生が率いた小学校の女子チームは
県大会で優勝した
その後会った時に
よそのチームに行ってから
優勝とかさせんでよかとよ
なんでうちの時にしきらんかなぁ
って言ったら
うるせー!ばばあ
おめでとうって言わんか〜!
って返された😑
