
直訳すると「自転車についての話ではない」というタイトルの本で、日本では『ただマイヨ・ジョーヌのためでなく』と訳されているランス・アームストロングという自転車のプロロードレーサーの自伝書である。
彼については、前に少し触れたが、生存率3%の癌から生還し、その後ツール・ド・フランスで7年連続総合優勝をした人物である。
因みにマイヨ・ジョーヌとはツール・ド・フランスで個人総合成績1位の選手に与えられる黄色のジャージの事である。
本を読む前は華々しい活躍がメインで軽~く闘病生活が書かれたものだと思い読み始めたが丸っきり違っていた。
生まれつき父親が居ない幼少時代の話、母親が再婚し新しい父親となった人との生活。いきなり面食らった(笑)
青年期は片田舎の生活に飽きていた彼がトライアスロンを始めて、徐々に自分の可能性や自信を見い出していき、やがては自転車のプロロードレーサーとしてデビューをしていく話。
そして、デビュー後は無鉄砲で監督の指示にも従わないレーサーであった彼がレースの駆け引きを学び大きなレースを勝てるまで成長を遂げていくのである。
ここまでの内容は本書ではプロローグに過ぎない。
ようやく世界のトップランカーになった矢先に彼の体内から癌が発見されるのである。
睾丸癌であり、化学療法での影響で子供を産ませる事が出来なくなる為、手術前に個室で射精をして精子を残しておく作業のこと、多くの医師に癌治療の方法を聴き、自らも自分の症状の治療例を調べ抗ガン薬の勉強をした事、また、化学療法での副作用との生々しい闘いと苦悩、契約していたチームから切られた話、
化学療法が終わり、1年間癌の再発に脅える生活と自転車に対し無気力になってしまった事が赤裸々に綴られている。
そんな時期に将来の妻になる人と出会い、その妻の一言で彼は再び、プロロードレーサーとしての人生を選択したのである。
その後2人は結婚するのだが、子供を授かる為には手術前に残した精子による体外受精しか可能性が残されていなく、その為の検査の事、排卵抑制剤を毎日自分で注射をする話、こちらに関しても克明に綴られている。
その後は先に述べたように、奇跡的な復活で優勝したツール・ド・フランスの事が書かれて終わりとなる。
平ったいけど、重たい内容満載ではあるが読み応えある本でした。
闘病中の周りの人達のサポート、ランスも包み隠さず接しているから周りも理解して辛抱強くサポート出来るんだろうなと感じました。もちろん理解しようとしなければそれは不可能だろうけど。
また、癌患者やその他の病気、日々の生活でいろんな事と闘っている人達に何かしら感じたり共感できる部分がある本だと思う。
最後に自分が印象に残ってる文章を。
ある記者がランスの山々での走りを「飛ぶように走っている」という表現をした。でも山を「飛ぶように上る」ことなどできない。僕にできることは『ゆっくりと苦しみながらも、ひたすらペダルをこぎ続け、あらゆる努力を惜しまずに上っていく』ことだけだ。そうすれば、もしかしたら最初に頂上にたどり着けるかもしれないのだ。 という文章である。
今の自分に置き換え、そんなに楽に早く出来るようにはならない。苦しみながらもゆっくりと努力を惜しまず続ける事だ。
努力したからといって出来るとは限らないが出来るようになるかもしれない。
何かにつまづいた時には、またこの本を読もうとおもう。