2008年。「純喫茶磯辺」製作委員会。
  吉田恵輔監督・脚本。
 宮迫博之、仲里依紗、麻生久美子、その他出演。
 父親の遺産を手にしただらしない男が、喫茶店を開業し、やがて閉店に追い込まれるまでの物語。

 テレビでは大して面白くないものの、(嫁をネタにした小話もあきられてきた)、常々、宮迫はハードボイルドな俳優としての素質を持っている、と思っていた。
 特に、『魍魎の匣』 を見たときに、和製ハンフリー・ボガードは宮迫がもっともふさわしい、という気がした。
 芸人になる前は、警察官志望だった、というような話をしていたこともあり、タフガイに見えないこともない顔もしているので、メタボリック気味の体型をきたえれば、小柄な探偵役などが似合いそうな可能性がある。
 異常なまでの美声の持ち主であることも、映画となると、生かせる場面も出てくる。

 この映画は、ゆるそうなコメディで、ほとんど見る気はない映画だったが、(今年それを見逃したら映画ファン失格だろう、ということが明らかな、『百万円と苦虫女』や、『歩いても歩いても』は見事に見逃してしまった)、
 期待のなさに反して、素晴らしかった。
 タイトルは副題に、『磯辺裕次郎のブルース』、または、『磯辺咲子のブルース』と入れても良いほどに、主人公磯辺親子の人生が描かれていた。

 この映画が意外にすぐれていることは、出演者と舞台を、パリの下町か、ニューヨークのブルックリンあたりに置き換えて同じ映画を作ったら、高い評価を受けるに違いない、と思われることからそう考えた。
           公式サイト
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 裕次郎(宮迫博之)と咲子(仲里依紗)との磯辺親子が開業した『純喫茶磯辺』の栄枯盛衰の物語。
 仲里依紗の、微妙にあまりかわいらしくない存在が良い結果をもたらしていた。
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 末端の建設労働者として、低賃金労働に明け暮れていた裕次郎だったが、遺産相続によって、生来のだらしなさがあらわれて喫茶店開業を思いつく。
 開業当初は、小太りの女性、江頭(ハリセンボンの近藤春菜)をウェイトレスに採用していた。
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 ウェイトレスに謎の女、菅原素子(麻生久美子)が参加してきた時期から、店に波乱が巻き起こり始める。
 麻生久美子は最後まで謎の女だった。
 店を辞める前に裕次郎に渡した手紙の内容を見せなかった点は素晴らしい演出だと思った。
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 ダンカン、和田聰宏、斎藤洋介、ミッキー・カーティス、などが店の常連客として登場する。
 イケメンなのに、不気味なロリコン男を演じた和田聰宏の気持ち悪さが、コメディなので最後にフォローされる。
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 元妻の役で濱田マリが登場して、面白いエピソードはなかったが、物語に深みを与える役割は果たしていた。
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 素子にプロポーズしようとさえ考えていた裕次郎だったが、素子の私生活についての告白にドン引きする。
 映画の全篇に流れる横山剣(クレイジーケンバンド)の音楽が映画に独自の味わいを生み出していた。
 1960年代のイタリアのコメディ映画風の音楽みたいに聞こえた。
 しかし、主題歌の『男の滑走路』は、磯辺裕次郎と磯辺咲子とのブルージーな気分を十分には表現できていなかったような印象がある。
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