ノルウェイの森 | にゃ~・しねま・ぱらだいす

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ドコにもダレにも媚を売らずに、劇場・DVDなどで鑑賞した映画の勝手な私評を。

ノルウェイの森 【スペシャル・エディション2枚組】 [DVD]/松山ケンイチ,菊地凛子,水原希子

【監督】トラン・アン・ユン
【主演】松山ケンイチ、菊地凛子、水原希子、玉山鉄二、高良健吾、霧島れいか
【オフィシャルサイト】http://www.norway-mori.com/index.html

オッサン世代なら誰もが当時読んだ(後首をかしげた)であろう村上春樹ベストセラーが映画化。
『何故今更』『何故中国人監督』『何故菊地凛子』など様々な疑問を含みつつ、だが若干の郷愁もあり。
こうして映像化されると『リアリティのない感じが受け入れられたシアワセな時代だったんだ』ことを実感。

高校時代に親友キズキと彼の恋人直子と共に青春時代を送ったワタナベだったが、
キズキが自殺でこの世を去ってから無気力感に襲われ、1人東京の大学に出てきていた。

しかしある日、偶然直子と再会したところから再び止まっていた時間が動き出していく。
複雑な思いを抱きつつも、直子に惹かれて行くワタナベ。
一方その思いを知りつつも、孤独感を深めていく直子。
2人の思いが重なった夜にその亀裂は決定的となり、直子はワタナベの前から姿を消してしまう。


そんな折、大学で出逢った少女・緑に心惹かれつつも、心を閉ざしてしまった直子が
療養所にいることを知ったワタナベは雪道を1人歩いていく-。

ご他聞に漏れず、自分もベストセラーとなった当時興味を持って読んでいるが、
難解な文章(いや言葉は簡単なのだが)と回りくどい表現に感情移入できず、酷く読了まで
時間がかかったことを覚えている。当然読後『ナンじゃこりゃ』と首をかしげたのは言うまでもない。

それでもあの時代は、村上春樹のエッセイっぽい文体が新しかったことは間違いない。
それを読んで分かった気になる、なれる人間が、オピニオンリーダーぶれる時代でもあった。
だから人々はこぞって買い求め、半分も理解できずにいても勝手に妄想し、時にはワタナベに、
時には直子に、そして終末思想を持つ人間はキズキに同調したのだった。

時は流れ21世紀。時代は変わった。分からないものは分からないと言える人間が増加し、
難読な書籍は売れないユトリ脳も増えた。そもそも本自体を読まない世代ばかりとなった。
そんな時代の映像化である。当時も沢山の企画が上がったであろうに、今になってである。

映像としてはよく出来ている。

トラン・アン・ユン監督の美意識がカメラワークや絵作りのアチコチに散りばめられており、
(偏った昭和を模した)モダンPVとしての完成度は決して低くないと思う。
だがやはり村上ワールド的な台詞回しは物語にリアリティを与えられず、意味ありげでなさげな動きは、
大学生制作する不条理インディペンデント映画のようでもある。

そういう1人であった自分には、苦笑が出るほど懐かしい。
だが、これを商用映画でやってしまえるという恥ずかしさも同時に込み上げるのだ。
良くも悪くも厨二病の作品-そんな印象だけが2時間強押し寄せたまま、引くことはなかった。

キャスト陣は奮闘している。特に映画初出演という水原希子は、その縁起の拙さが逆に
村上ワールドの住民独特の存在感の無さで存在感を発揮(変な日本語w)。
リアリティが求められる作品は難しそうだが、昨今流行の漫画原作モノやコメディなどなら
対応していけそうな期待感も若干(本当若干だが)。
賛否両論というよりおそらく否の方が多いであろう菊地凛子の起用は、半分アタリで半分ハズレ。
後半の病んでいく姿は自で行けるだろうw、という熱演だが、ワタナベが惹かれて行く前半はうーむ。
神秘的な存在感があるようには思えないし、女性としての魅力があるようには思えない。
…まぁ、これは好みもあるのでナンとも。

全体的に『何故』が漂う作品であることは間違いないが、あの時代(設定の時代ではなく流行った時代)
を思い返すには、悪くないかもしれない。今更思い返す必要もないかもしれないけど。


【評価】
★★☆☆☆