Sweet Rain 死神の精度 | にゃ~・しねま・ぱらだいす

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ドコにもダレにも媚を売らずに、劇場・DVDなどで鑑賞した映画の勝手な私評を。

Sweet Rain 死神の精度 コレクターズ・エディション


【原作】伊坂幸太郎
【監督】筧昌也
【主演】金城武、小西真奈美、富司純子
【オフィシャルサイト】http://www.shinigaminoseido.jp/

直木賞を辞退したことでも話題になった、各界注目の伊坂幸太郎のベストセラーが映画化。
前作『アヒルと鴨のコインロッカー 』が予想以上の傑作だったため期待をしていたものの、
どんなに原作が良くても味付けが悪ければ駄作になるのだな、というある意味悪い見本に。

音楽=ミュージックをこよなく愛する千葉は、人間を7日間観察しその死を判定する死神。
特別な理由がない限り、その判定は『実行』であり『見送り』になることは稀であった。

今回のターゲット・藤木一恵は、メーカーのサポートセンターで電話応対をしている女性。
不思議と彼女の周囲では死が身近であり、両親・恋人も事故でなくすという不幸に見舞われていた。
そして今はしつこいクレーマーに付きまとわれ、人生に絶望しかかっている状況にあった。
身分を隠し人間として彼女に接触した千葉だったが、彼の文字通り浮世離れした天然ぶりに、
彼女の心は静かに氷解していく。判定にゆれる死神・千葉。その決断が彼の未来も微妙に変えていく-。

感覚というのは人それぞれ、千差万別。音楽、小説、漫画、そして勿論・映画。
人が薦めてくれたからといって、同じように自分が共感できるとは限らない。
だからこのBlogとて例外ではなく作品鑑賞の指針になってくれれば有り難いと思ってはいるが、
自分とは評価が分かれることもある筈だと思っているので、あくまで個人的な備忘録として位置付けている。

他人の評価が高くて自分は相容れないもの-作家でいうと宮部みゆき嬢、そしてこの伊坂幸太郎。
知人の薦めと映画『アヒルと鴨の~』のデキが良かったので数冊目を通してはみたのだが、
残念ながらどうしても世間一般の評価ほど面白いとは思えなかった。
そしてトドメのこの作品。おそらく余程のことがない限り、また手にとることはあるまい。

原作が映画よりも面白いであろうことは想像に難くない。
逆に言えば、素材がどんなに良くても料理人の腕が悪ければ食べ物にさえならない場合がある。
原作者は金城武主演が条件で映画化を許可した、との話があるが、結果的にこれがまた裏目。
彼の朴訥とした芝居はただでさえ現実感のない物語を小芝居にまで貶めてしまい、演出・美術・音楽の
経験不足から来る実力不足が全て画面に露呈する結果となってしまった。
早い話が全てが『学芸会レベル』言い換えれば『TVドラマレベル』で劇場鑑賞に堪えられるものでは
なくなってしまったのだった。CGやキャスト・画作りにおけるおそまつなレベルから考えても、
実際予算も2時間ドラマ程度しかなかったのだろうが。

同情の余地はあるが、演出家としては致命的。
まだ若く一般ウケのする伊坂作品は今後も映像化される機会が多いかもしれないが、残念だが
本編を撮れるチャンスは回ってこないかもしれない。映画監督としてのキャリアは今後難しくなるだろう。

最近は小粒でもツブ揃いの邦画が多く見受けられたので期待していたのだが、久々の大ハズレ。


【評価】
☆☆☆☆☆