アヒルと鴨のコインロッカー | にゃ~・しねま・ぱらだいす

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ドコにもダレにも媚を売らずに、劇場・DVDなどで鑑賞した映画の勝手な私評を。

アヒルと鴨のコインロッカー


【監督】中村義洋
【主演】濱田岳、瑛太、関めぐみ、松田龍平、大塚寧々
【オフィシャルサイト】http://www.ahiru-kamo.jp/

最近『キテる』と話題の井坂幸太郎の話題作を映画化。
伸び盛りの若手キャストが、珍妙な掛け合いとどんでん返しのストーリーを熱演。
優秀な脚本と引き目の演出リズムが、懐かしき邦画の香りを醸し出す良作。

大学入学で仙台に転居してきた椎名は、隣人河崎に声を掛けられる。
ボブ・ディランの『風に吹かれて』がお気に入りという共通項をもった2人は意気投合、
というか半強制的に『同じ棟に済む貧しいブータンの留学生ドルジのために広辞苑を盗む』
という河崎の意味不明の大命題の元、本屋強襲という事件に関わることになってしまう。

事件は公にはならなかったが大学で出逢ったペット店店長・麗子は、椎名に
不思議な言葉を残す。『河崎のことは信用するな。』と。

神出鬼没の河崎、謎の留学生ドルジ、そして彼らの間で揺れる元彼女・琴美の存在。
彼等3人の愛しくも切ない物語に、平凡でパッとしない大学生・椎名は参加していく-。

無駄に豪華でなくても途方もない予算をかけなくても、脚本が芝居がきっちりしていれば、
映画は良作になる-そんな典型的な見本のような作品。
荒唐無稽のナンセンスなプロットが続く前半と、その全ての裏付けを行っていく後半の
切り返しをナレーションやト書きでクドクドと説明をせずに、劇中の台詞と客観的な視点で
全て解き明かしていく様は、地味だが職人的な確かな仕事ができる高い実力を感じる。

ミニシアター系で話題になっていたのを耳にしていたとはいえ、正直なところ前半は
『古の邦画テイスト』的なイヤな感じが拭えなかったが、物語が様変わりする後半からは、
淀みのない脚本・流れるような演出が冴え渡る、高い評価を与えられる傑作へと
物語同様どんでん返し。

ここ数年でも邦画何本かに入る秀作。イイ意味で裏切られてみたいヒトにお勧め。


【評価】
★★★★☆