【原題】36 QUAI DES ORFEVRES
【監督】オリヴィエ・マルシャル
【主演】ダニエル・オートゥイユ、ジェラール・ドパルデュー、アンドレ・デュソリエ、ヴァレリア・ゴリノ
【オフィシャルサイト】http://www.eiga.com/official/aruinu/
ロバート・デ・ニーロ&ジョージ・クルーニーという濃いコンビでのハリウッドリメイクも決まっている
フランス・パリ警視庁を舞台とした、骨太の愛憎劇。実話に基づいていることもあり重厚な物語が展開。
ちなみに原題の『36 QUAI DES ORFEVRES』はオルフェーヴル河岸36番地というパリ警視庁の住所。
久々にツボにハマる邦題が鑑賞後にさらにズシリ。
パリ警視庁のBRI(探索出動班] のレオ・ヴリンクスとBRB(強盗鎮圧班)のドニ・クランは、
かつては親友だったが捜査方針の違いや女性関係から現在は対立する状態が続いていた。
そんな折、多発する現金輸送車強奪事件の犯人逮捕のため特別体制が取られたが、
長官はレオを指揮官として任命した。この一件が次期長官としての椅子を巡る戦いでもあったのだ。
それが面白くないドニは、レオの命令に背き単独で犯人のアジトに乗り込む。
想定外の戦いを強いられた警察は、レオの相棒エディの殉職という後味の悪い結果を残す。
警察内では勝手な行動をとった反ドニの空気が流れるが、アジトの情報がレオの情報屋からの
リークで、しかもレオ自身が情報屋が起こした別の殺害事件に関与していたことが判明し、
レオは内部調査により逮捕・投獄されてしまう。
かくしてドニはレオを貶め、念願通り長官の座を手に入れたのだったが-。
キャストやセットで焼き直しのストーリーを描き『豪華』などと謳うドラマ製作者には是非見て欲しい。
淀みのないプロット、無駄のないシークエンス、リアルな銃撃戦シーン、そして複雑な人間模様。
本当に重厚なドラマはこのように描くべし、という教科書を越えた参考書のような作品。
ほとんど笑顔のないキャストたちは視線で語り、瞬きで呟く。
カメラはそれを低い視点から覚めた目で見つめていく。
警察官とはいえ人間であり、正義とは正しいことばかりとは限らない。
結果だけを見つめていては盲目になってしまう複雑な過程がある。
本音は内に秘め行った行動は自分で全て責任をもつ。男子本懐はこうあるべし。
女性にはあまり向かないかもしれず公開している映画館も数少ないし、
気軽に見に行ける作品ではないのだが、映画好きを自称するなら必ず見るべき。
久々の5点満点は個人的に『劇場で見るべき価値のある作品』という評価。
高村薫作品をこのテイストで映画化して欲しい、と切に願う。
【評価】★★★★★