すばらしき世界 | Sound@Cinema

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))) Cinema Sound Works シャチョーの日々 (((
映画の音響技術評価などをプロ目線で、車系もたまにw
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21年公開の作品です。


西川美和監督作品で佐木隆三の小説”身分帳”を

原案とし、設定を現代に落とし込んでありました。

珍しく原作は読んでおり佐木隆三独特の淡々と

した説明調のリアリティに加え、昭和のアウト

サイダーの様な流れでしたが、大分柔らかい

印象に代わっております。

 

役所を主演に迎えてとの事で、俄然彼のお芝居

に目が行くわけですが、、、

 

 

 

 

実際の刑務所をお借り出来たようで、冒頭の

出所迄の流れはかなりリアルに見えました。

 

なんせ、人生の大半を刑務所で過ごした三上

(役所広司)の、住み慣れた場所で身に付いた

収監者としての行動が恐ろしく板に付いており、

この辺の下調べの厚みが序盤から滲み出ます。

 

 

 

 

シャバに出ると、ひょんな事から取材を受ける

事になり、ディレクター役の津乃田(仲野太賀)

との付き合い中などで隔世感のある三上が徐々に

生き方の修正を余儀なくされます。

 

 

 

 

敢えて男の背中で語らせるカット構成の多用

には、相当な妙味を感じ得ずになられないと

同時に、隠す芝居でも表現出来る役所の旨さ

が光る場面でもあります。

 

この背中芝居に何度もやられてしまいます(汗)

 

 

 

 

結局は、育ちの悪さから両極端な性格を擁す

三上の我慢と更生の一方、信じらないぐらい

優しくて理解の有る人々に守られ、後押し

されていき、彼の狂暴さが徐々になりを潜め

普通のおじさんになっていきます。

 

久しぶりに、ずっとこの人の人生を見ていたい

と思わせる様な役所の芝居に引き込まれました。

 

目配せや仕草の一つをとっても全てに意味の

有る様な芝居を塗されて行くと、ドンドンと

役者一個人を超越し、劇中の三上という男に

興味が湧いて仕方が無くなります。

 

役所広司は本当に上手いな、これに尽きる作品でした。