アイズワイドシャット | Sound@Cinema

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))) Cinema Sound Works シャチョーの日々 (((
映画の音響技術評価などをプロ目線で、車系もたまにw
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私がこの仕事を始めるきっかけとなり、

人間形成に最大の影響を及ぼしたのは

スタンリー・キューブリックです。

 

撮影機材で様々な工夫を凝らし、その方が

着目されていますが、自分で編集を行い

音の入れ方についても独特の癖があって、

これらに魅了されてしまって、今の仕事

を生業にすることを選びました。

 

ま、これは追々語るとして、6,000回近くも

記事を挙げてきましたがキューブリックの

作品に関しては未だ1本もレビューしていません。

 

しかし、どこかでやらねばならないので

50代半ばの時点ですが、今の想いも

含めて振り返っていこうと思います。

 

まずは遺作となった”アイズワイドシャット”

から行ってみます。

 

初見時と今では大分感じ方が異なったのは

ちょっと驚きで、トムとキッドマンのお芝居に

異様な違和感を覚えます。名演と迄言われた

キッドマンのお芝居ですが、動き一つとっても

全部決まった工程をトレースしているように

見えました。台詞の言い出しと動きのリンク

が殊の外スムース過ぎて、まるで型枠の中で

演じている様です。

 

これはおそらく執拗にリハーサルをやらされた

結果に辿り着いた結果なんじゃないかな?
 

それから夫婦の空気間も30代夫婦には

見えず、相当に年月の経った間柄の様です。

性的な疑念を吹っ掛けてはくるので、若い

夫婦に事象の様にも聞こえるのですが、

相当に枯れた観念の上でのやり取りに

感じるのは私だけですかね?

謎や誤解、行き違い、勘違いのオンパレード

の本作では。人の思い込みの愚かさを示唆

し、かなり老獪な視線から

 

「人間なんてこんなもんだよ」

 

と耳元で囁かれているのな錯覚を覚えます。

 

内容的には物凄いものがありますが、

まるで人生の教科書の様な作品です。

 

まさにキューブリックの人類に対する遺言かと、、、

 

それにしてもピアノの単打が効いています。

こんなシンプルな一音源でも圧倒する力を

持ち得るってのは、使い様なんですね。