今年2月に行われたベルリン映画祭のクロージング作品だったフランソワ・オゾンの『エンジェル』がこの秋公開されます。
ベルリンは、1日早く帰ってきてしまったので、ミスしていましたが、やっと観られました。
20世紀初頭の英国が舞台。主演のエンジェルは、食料品店を営むシングル・マザーの母と店の2階に住んでいますが、近くにあるお金持ちのお屋敷“パラダイス”に住むことを夢見ている少女。モノを書くことが大好きで、やがてその小説が出版され、成功を収めたエンジェルは、売りに出ていた“パラダイス”を購入……。
願えばかなわないことはない、というタフで現代的な考え方の女性と、また、どんなに成功しても、人の心はお金では買えない、成功と幸福は別のものだというパラドックスをオゾンらしく、優雅でかつシニカルに描いていて、面白い作品です。
女性作家を主人公とした点では、『スイミング・プール』の姉妹編ともいえますが、テクニカラーや女性映画を意識した点では、『8人の女たち』との共通点もあります。
それにしても、トッド・ヘインズ監督など、この世代の監督たちが揃って、ハリウッド黄金期のテクニカラーやメロドラマなどを引用していることは、単なる偶然なのでしょうか。
以前インタビューの際、オゾンにもトッド・ソロンズにも聞いてみましたが、ふたりともお互いの作品を見ていなくて、明確な回答が返ってきませんでしたが、次回、方向性を変えて、この謎については質問してみたいと思います。
そういえば、トッド・ヘインズの新作『アイム・ナット・ゼアー』が、今月末から始まるヴェネチア映画祭で上映されます。6人の俳優(女優含む)が、ボブ・ディランを演じる(?)という、シノプシスだけ読むと珍品系?????な気もしますが、トッドのこと、面白いに違いないのでこちらも楽しみ。