学生時代、就職など念頭になく、映画ばかり見ていた。
卒業証書は貰ったが、無職渡世人とカッコつけていた。
某日、新聞の求人欄に、"映画配給会社の社員募集"が、目に入る。"ジョイパック・フィルム"?知らんな……。ま、行ってみるか……。
ワンルームに、男3人、オバさん1人。
早々面接。何を聞かれたか、忘れた。映画の話を、しゃべり続けたと思う。
"何をやりたい?"と聞かれて、即"宣伝!"
かくして、「ジョイパックフィルム 関西支社 宣伝部」が生まれた。
後で知るが、みんな20世紀FOXのOB。しかも、男3人営業の出。誰も宣伝のい・ろ・は教えてくれない。
営業のひとりに、"お前を一人前の営業マンにしたるからな。"と、云われた。"とんでもない!"
宣伝の魅力は、学生時代にバイトしていた配給会社——ヘラルド映画で、あの大愚作「エマニエル夫人」が、大化けした面白さ、知っているから、宣伝やりたいのだ!!
で、GW明けから出社。一応、サラリーマンだね。
当時、上映中だったのは、P・フォンダの「ダーティ・ハンター」。この後、殺人映画「スナッフ」から、仕事始める。
こんなゲテ映画やるんかい!と思い??「エマニエル夫人」の例を知っているから、"年に300本、映画を見ているボクが、その迫力に度肝を抜かれたデス"と、吹きまくって、スポーツ紙、夕刊紙に記事にして貰った。ま、コレらは、広告費とバーターみたいなもんなのだが……。
"エグい!恐い!すごい!"と、しゃべっていたら、何故かヒット。初宣伝で大入袋が出た。
フム、フム、やっぱ宣伝に向いておると、少しだけ鼻高。
次が、何んとシネラマOS劇場で公開が決った、「F-1グランプリ 栄光の男たち」。
ドキュメンタリーだ。マックイーンの「栄光のル・マン」ならまだしも、ドキュメンタリー、そして、車。全く興味ナシ。試写も見ず、レーサーの名前を頭にたたき込んで、始める。
何んせ、公開日が、当時の話題作「オーメン」と同じ。こっちは、阪急プラザ劇場。
先ず、どっか企画忘れたが、タイアップして、レーシングカーのカレンダー作成。
タウン誌「プレイガイドジャーナル」初、裏全面広告。映画でも初めてだと、担当ハルキ㐂ぶ。
で、コレも、暴走族風のアンちゃんらが押し寄せ、大入袋また出た!
営業の人が、某劇場に100万で売れたと、㐂んでいた。
で、次が、十一月公開、正月前の消化番組。何んと、ポルノではない、スエーデン映画「サッカー小僧」。
コレが当れば、オレはヘラルドの原正人だ!
正月映画の話題作「がんばれ!ベアーズ」にひっかけ、'76年は、ちびっ子ヒーローブームだ!と、やり出した。
結果は、ポルノじゃないスエーデン映画だなんて……であった。
で、サラリーマン生活最大の楽しみ——ボーナス。人生、初ボーナス。ヘラルド「エマニエル」バブルを知っている。こっちは2本大入袋ダ!
ひとケタ違った。ショックだった。
この後、春迄作品がないと云われ、暇を持て余している時、「シネマぱらだいす」の、水町亮介が、誘惑に現れる。
余談だが、営業の人から聞いた、面白い話。
鳥取では、一番ヒットした伝説の映画は、大映の「日蓮と蒙古大襲来」。理由は、判りますネ。砂丘でロケして、県民エキストラで出たから。それを、破ったのが、かのFOX超大作「史上最大の作戦」とのこと。