本日7月8日は、アンジェリカ・ヒューストンの生誕73周年となります。

それを記念して彼女の作品を紹介します。


アンジェリカ・ヒューストン / Anjelica Huston

  • 1951年7月8日 サンタモニカ生まれ
  • 父は監督のジョン・ヒューストン。
  • 父の『アフリカの女王』撮影中に生まれ、アイルランドで育つ。
  • 1961年『荒馬と女』の撮影直後に両親が離婚し母と共にロンドンへ移住。
  • 1969年 本人が嫌がる中、無理やり父が出演させた『愛と死の果てるまで』で映画デビュー。
  • 1970年 母の死をきっかけにNYに渡り、モデルとして活動し始める。
  • その後本格的に演技を学ぶ。
  • 1985年 『女と男の名誉』でアカデミー最優秀助演女優賞を受賞。

 

『ザ・デッド/「ダブリン市民」より』(1987)
監督 ジョン・ヒューストン
共演 ドナル・マッキャン
撮影 フレッド・マーフィ

【あらすじ】
1904年のクリスマスを迎えたダブリン。
叔母姉妹が開いた毎年恒例の舞踏会に中年夫妻ガブリエルとグレタが現われる。
なごやかなムードの中続けられた宴は、やがて終わりの時を迎え帰り際にグレタが聞いた“オーリムの乙女”。
宿泊先のホテルでガブリエルはその歌にまつわる妻グレタの若き日の恋人との悲しい思い出を知ることになる……


たまに映画を観ていて、起伏の激しい起承転結が辛いときがあります。
ジェットコースターのような映画は、ある程度は必要だとは思うのですが、もう若いとは言えない存在としては、緩やかに始まり、緩やかに終わる映画の方を愛します。

魅力的な風景や住居のショットから始まる小津安二郎の映画や、スペインの寒々しい光景にキャメラを向けるビクトル・エリセの映画は、まさにそうした映画の代表に入ります。

物語など全て語られてしまったので、どの作品も、目先の時事問題で切り口を変えただけで、基本はどれもこれも似たようなものなのですから、あとは、ときに華麗に、ときに痛々しく、美しい感情や動きをキャメラで切り取ってくれればいいとさえ、思います。

さて、この作品は、正にそうした、起承転結の激しくない、豊饒な映画の1つであり、大変素晴らしい出来となっています。










この作品は、遅咲きのアンジェリカが、34歳で父であるジョン・ヒューストンの 『女と男の名誉』でアカデミー最優秀助演女優賞を受賞してから、再び出演した父の作品となります。
それが、奇しくもジョン・ヒューストンの遺作となるのですが、ジョン・ヒューストンの最も素晴らしい作品の1つとなりました。

ハリウッドの生粋の映画一家であるヒューストン一家が、アイルランドのダブリンの物語を取り上げているのは、一瞬意外な感じがするのですが、ヒューストン一家が元はアイルランド系であるので、むしろ本来的です。


80分ほどの短い映画ですが、これほどまでに豊饒な映画はすぐには思いつきません。

クリスマスのディナーを描いた映画として、アルノー・デプレシャンの『クリスマス・ストーリー』(2008)がありますが、ドヌーヴが出ていると言っても、フランスの俳優が神経質な会話を交わしており、豊饒とは言えません。

ドキュメンタリー映画ではないのですが、老人たちがオペラについて語り合う点において、ダニエル・シュミットの『トスカの接吻』(1984)に近い印象を持ちます。
すなわち、悲惨であるはずのものが、嘘のような単純さで、幸福のイメージを喚起するのです。

アンジェリカ・ヒューストンは、夫のドナル・マッキャンとともに、クリスマス舞踏会のホステスをつとめ、親戚の親子を送ってから、宿泊先であるホテルへと逗留します。

ホテルへ帰る直前に聴いた『オーリムの乙女』の素晴らしさもさることながら、それに耳を傾けたアンジェリカ・ヒューストンのたおやかな姿は本当に美しく、後に『アダムスファミリー』などでコメディエンヌを演じる役者とは思えません。












デイナー風景。
それだけの映画なんですよ。晩ごはんのとき、十四、五人のお方が集まって、それぞれの会話を交わす。
それがなんとも知れん上品で、インテリジェントで、ダブリンの人の愛情が出ました。
おばあちゃんが三人いて、その一番上のおばあちゃんが歌うんだけれど、上手じゃないのね。
親戚の娘さんがピアノを弾くと、おばあちゃんがそれを見て、いちいち楽譜をめくってやる。
そのあたりの人と人との馴れ合いさすり合い。
善人、善人が集まってのなんとも楽しい会の描写がいいんですね。
(淀川長治)

 

『ザ・デッド』は、何よりもまずパーティーの映画だ。
クリスマスの晩、ダブリン市民たちがある家に集まってくる。

扉をあけ、階段を昇り、挨拶を交わし、いくぶん華やいだ雰囲気の中で会話し、ともに食卓を囲み、料理が運ばれ、ちょっとした演説があり、グラスを傾け、踊り、そして去ってゆく。
ただ、それだけのことが、楽しい。
つまり、映画という器械に快く同調する顔と声の持主たちが、それぞれのパートを音楽のように演奏し、しかもその演奏が、たった一人の聴き手に最適の音量でとどくように持続しているのだ。
たった一人の聴き手とは、もちろん、演出のジョン・ヒューストンである。
(蓮實重彦)



なお、黒澤明も好きな映画100本の1本に挙げています。

#映画好きな人と繋がりたい
#洋画好きな人と繋がりたい
#女優好きな人と繋がりたい 
#女優さん好きな人と繋がりたい
#女優好きさんと繋がりたい
#エレガンス
#女優志願
#女優志望
#クラシック映画
#最も偉大な女優
#アンジェリカヒューストン

#cinemaclassic 
#classicmovies 
#vintagemovie
#actress
#elegance
#élégance
#AnjelicaHuston
#thedead

#ジョイス
#ダブリン市民
#jamesjoyce
#dubliners