あのこは貴族  2021年  日本  124分  ★★★★ | 新作映画の評価 どれを観ようか? ネタバレなし

新作映画の評価 どれを観ようか? ネタバレなし

映画が大好き。都内千代田区在住です。

評価は5段階で
★★★★★ 最高! 面白い! もう1回見たい!
★★★★  オススメ 見ておくべき1本です
★★★   普通かな? 見て損はない
★★    うーん、ちょっと微妙かな?
★     つまらん

 

山内マリコの原作を、岨手由貴子の脚本・監督で映画化。
結論から言うと、とても良かった。原作も読んでみたくなり、今、読んでいる途中である。

27歳の華子(門脇麦)は医者の一族に生まれ、何不自由ない暮らしをしてきたお嬢様。実家は渋谷区の松濤である。彼女は婚約者と別れ、仕事もやめてしまっていた。結婚に焦る華子は、お見合いでハンサムな弁護士・幸一郎(高良健吾)と出会う。二人は結婚する。一方で富山県出身の美紀(水原希子)32歳。猛勉強の末に慶應義塾大学に入学するも経済的理由で中退。実は美紀は10年前から幸一郎と腐れ縁のような関係を続けていた。ある日、華子は美紀の存在を知ることになる・・

広義の恋愛モノではあるが、東京という街を丁寧に描写した「東京図鑑」でもある。これが東京で生まれ育った僕のような人間に心地よさをもたらすのだ。華子は本物のセレブなので、一流ホテルのラウンジとか一流のレストランなどの場所にしか行かない。東京はお金さえあれば本当に楽しいのだなということが伝わってくる。幸一郎が「雨男」という設定なので、雨のシーンがとても多いのだが、それも東京の良さを引き立たたせているように思えた。

ストーリーは、章立てで進行する。時間軸を行ったり来たりするなどの手法は使わないので、非常に簡潔でわかりやすい。そしてハプニングとは無縁の平凡な日常が淡々と続く。この単調さが心地良い。主演の3人は、抜群に良いというわけではないが、もちろんミスキャストでもなく、いい意味で普通の仕上がり。演技が前面に出過ぎないのだ。

華子もセレブだが、幸一郎の一族はさらにレベルが上。有力政治家も輩出しており、弁護士の幸一郎も出馬を視野に入れているのだ。が、この幸一郎の一族は、かなり漫画的というか、デフォルメ過剰である。セレブとしてのランクは下がるのかもしれないが、僕には華子の一族の方が快適そうに思えた。

結婚した二人は豊洲に住むのだが、幸一郎は仕事が忙しくて、なかなかかまってくれない。よくある話である。そしてあろうことか、華子は離婚を決意するのだ。この辺り、原作ではどう書かれているのか興味が沸くが、映画ではプロセスを思いきり省いているのだろうか? とにかくかなり唐突に離婚に至ってしまうのだ。この点に不満を持つ人も多いだろう。幸一郎には別に離婚されるような非はないのだから。ただ華子はこう見えて意外と頑固なのだろうというのはわかる。3人姉妹の末っ子で、しかも一番美人だから、両親にとっても可愛い娘に違いない。「我慢して結婚生活を続けるくらいなら、戻ってきなさい」的な経緯は当然あったのだろう。もちろん、美紀と出会い、美紀の人柄や生き方に好感を持ったことが少なからず影響しているだろう。

一方の美紀だが、確かに田舎の出身なのだが、特に貧困家庭というわけでもない。頑張って慶應に入ったのだから、基本的には能力の高い人間なのだ。学費を稼ぐために始めた水商売が元で大学を中退するわけだが、そんなことで慶應義塾大学を中退するなんてもったいない話ではある。奨学金でもなんでも使って普通は卒業するはず。慶應なんて学費安いんだし・・

美紀は友人と起業し、華子は友人のバイオリニストの秘書的なことをやる。夢を叶えたわけではないが、一応、二人ともやりたいことをやっているわけだ。この二人の10年後、20年後はどんなだろう?と思ってしまった。