綾野剛主演のヤクザ物。監督・脚本は、藤井道人。
口コミでは高評価で、映画館も予想以上に混んでいた。コロナ下では健闘している方だろう。が、残念ながら完成度は期待ほどでもなかった・・
舞台は1999年の静岡。製紙工場が立ち並ぶエリア。山本賢治(綾野剛)はヤクザだった父が死んだ後、柴咲博(舘ひろし)が率いる暴力団、柴咲組の一員となる。
2005年頃には賢治は柴咲組の幹部となっていた。組が経営するクラブで働く工藤由香(尾野真千子)と懇意になる。ある日、敵対組織との抗争による殺人罪で賢治は逮捕され、刑務所へ。
それから14年が経った2019年。賢治は出所するのだったが、世の中は大きく変わり、ヤクザが生きづらくなっていた。由香との再会も果たすのだったが・・
1999年、2005年、2019年の3つの時代で構成されている。賢治は、それぞれ、20歳、26歳、そして40歳である。組同士の抗争がらみの殺人で14年も服役するというのはちょっと長い気がする。仮出所でもっと早く出てきてもよさそうなものだ。それはそうと、「暴対法」が施行された結果、ヤクザは「反社」となり、シノギ(飯のタネ)の減少で衰退が著しい。恐らくヤクザという仕事は21世紀の半ばには消滅することだろう。そうなった時に、人々はこうした映画により、かつて存在したヤクザという人種を知るのだろう。だが、そういう「ヤクザの記録映画」としては、北野武の「アウトレイジ」3部作という金字塔があり、それと比べると本作はかなり見劣りせざるを得ない。
前述の3つの時代だが、1999年、2005年の部分はなかなか楽しめたのだが、2019年になって一気につまらなくなる。本来はここが見せ場になるはずなのに。
主演の綾野剛は平均的な出来。別段、上手いとも思わなかった。また相手役の尾野真千子はミスキャストに感じた。老けすぎである。もっと若い女優を起用すべきだったろう。舘ひろしも妙に善人で、暴力団の組長という感じがせず、リアリティに欠ける感じ。と言っても僕ら一般人には真のヤクザの世界など無縁だから、リアリティがどうこうという議論がそもそもおかしいのだが・・
良いと思ったのは柴咲組の若頭、中村を演じる北村有起哉。出番も多く、全編で存在感を示した。
賢治は考えた末に組を抜け、由香とその娘と暮らすことで、束の間の幸せを得るのだったが、その幸せはすぐに崩れる。それはいいのだが、その崩れる理由がかなり無理があると感じた。