007 ユア・アイズ・オンリー  1981年  英・米  128分  ★★★ | 新作映画の評価 どれを観ようか? ネタバレなし

新作映画の評価 どれを観ようか? ネタバレなし

映画が大好き。都内千代田区在住です。

評価は5段階で
★★★★★ 最高! 面白い! もう1回見たい!
★★★★  オススメ 見ておくべき1本です
★★★   普通かな? 見て損はない
★★    うーん、ちょっと微妙かな?
★     つまらん

原題: 007 For Your Eyes Only
007映画の12作目。ボンド役はロジャー・ムーアで、彼がボンドを演じた7作の中の5作目となる。監督は本作から、ジョン・グレンになった。
10作目の「私を愛したスパイ」 11作目の「ムーンレイカー」は共に好評をもって迎えられ、興行的にも成功を収めたが、話が派手かつ荒唐無稽になった感は否めなかった。特に「ムーンレイカー」ではスペースシャトルに乗って宇宙に飛び出す等のやり過ぎがあり、漫画チックになったしまったことに対する批判もあった。

そのために、本作は007映画の原点に回帰するというコンセプトの元、リアルなアクション主体となり、所謂、「秘密兵器」も登場しないという、地味な007映画なのである。

ガンバレル・シークエンス(円のなかをボンドが歩いてきて銃を撃つ冒頭部分)の後には本編とは直接関係のない寸劇が入るのはいつも通りだが、この寸劇がピカイチである。妻トレーシーの墓参をしていたボンドの所に、緊急事態ということでヘリコプターが迎えに来る。が、飛行中にヘリコプターのパイロットは殺され、操縦不可能に。何者かが遠隔操縦しているのだ。飛行するヘリの中で絶体絶命のピンチに陥るボンド。この遠隔操縦の主は、車椅子に乗って、ペルシア猫を抱き、首にギプスを巻いた禿げ頭の男。そう、ボンドの宿敵ブロフェルドなのである。ボンドは機外を伝わってコックピットに侵入、そして操縦系を奪い返すことに成功する。逃げるブロフェルドを追いかけ、車椅子をヘリコプターに引っ掛けたまま飛行。命乞いするブロフェルドを車椅子ごと煙突の中に放り込む。ちなみにこの男、だれがどう見てもブロフェルドなのだが、公式にはブロフェルドとは言及されていない。著作権の関係らしいが。ともあれ宿敵を葬り去ったことの意味は大きい。
続くテーマ曲はシーナ・イーストンによるが、特筆すべきは彼女自身が登場すること。美人だからというのが理由らしい。

地中海アルバニア沖にて、漁船に偽装した英国情報部の船「セント・ジョージ」が何者かが仕掛けた機雷によって沈没。この船にはイギリス軍のミサイルを自由に操れる装置、ATACが搭載されていた。それを知ったソ連のゴゴール将軍はギリシャの組織にATACを手に入れるように依頼する。
ボンド(ロジャー・ムーア)は敵を追ってスペインへ飛ぶが、そこで美しい娘メリナ(キャロル・ブーケ)と遭遇。そして紆余曲折を経てギリシャへ飛ぶのだったが・・

アクションシーンは多彩。水中とスキーリゾートでの戦闘を中心に全編に展開。クライマックス 敵のアジトに忍び寄るときには断崖絶壁を登るロッククライミングもある。もちろんカーチェイスも。ボンドカーはロータスエスプリターボなのだが、敵により爆破されるので全く活躍出来ず肩透かしをくらう。その代わりシトロエン2CVによる峠道でのチェイスはなかなか見応えがある。

ボンドガールは、シャネルのモデルだったキャロル・ブーケ。長黒髪の理知的な美女で、これまでのボンドガールとはちょっと趣を異にする。またサブのボンドガールとして、スケート選手のリン=ホリー・ジョンソンがビビ役で、カサンドラ・ハリスが伯爵夫人役でそれぞれ登場する。ちなみにボンドの十八番であるカジノでの賭博シーンもあるのだが、そこはやや物足りなかった。

原点回帰はわかるのだが、ストーリー的にそう面白いとも思えないこと。悪役のスケールが小さいこと。キャロル・ブーケは美しいがセクシーさが抑え気味であること。秘密兵器が出てこないこと。ボンド映画には欠かせないゴージャスかつ頽廃的な雰囲気が希薄なこと。ファッションが今イチなこともあり、ムーアが年齢を感じさせること・・
以上により僕としては一抹の寂しさというか物足りなさを感じてしまった。