八日目の蝉 2011年  日本  148分  ★★★ | 新作映画の評価 どれを観ようか? ネタバレなし

新作映画の評価 どれを観ようか? ネタバレなし

映画が大好き。都内千代田区在住です。

評価は5段階で
★★★★★ 最高! 面白い! もう1回見たい!
★★★★  オススメ 見ておくべき1本です
★★★   普通かな? 見て損はない
★★    うーん、ちょっと微妙かな?
★     つまらん

角田光代の原作を、脚本 奥寺佐渡子、監督 成島出で映画化。
日本アカデミー賞では10冠を獲得するなど2011年公開の邦画として高評価を得た作品であるが、
僕の感想としてはかなり微妙。ギリギリで★3つかな?


秋山丈博(田中哲司)の愛人であった野々宮希和子(永作博美)は秋山宅に侵入して、
眠っていた生後4ヵ月の女児を衝動的に誘拐する。希和子は「薫」と名づけたその子と逃亡を始める。

最初は友人に頼っていたが、やがて女性だけで共同生活を送る「エンジェルホーム」に入所。
さらにエンジェルホームで出会った共同生活者の手助けを得て、小豆島に逃亡。
そこで職も得て、母子で幸せな日々を送っていたのだが・・

物語は、母子の逃亡生活と、21歳になった薫こと秋山恵理菜(井上真央)のダブルプロットで進行する。
大学生の恵理菜は岸田孝史(劇団ひとり)という妻子持ちの男性と付き合っているのだが、彼の子を妊娠してしまう。
時同じくして、ライターを名乗る安藤千草(小池栄子)という女性が接近してくる。恵理菜と千草は友人になるのだが、
実は千草はかつてエンジェルホームで恵理菜たちと一緒に暮らしていたことを告白する。
二人は小豆島へ向かうのだったが・・

原作小説は未読だが、そこから幾つかのエピソードがカットされているようだ。それはそれで良いのだが、内容と尺がアンバランスというか、
尺のわりに内容が薄いというのが率直な感想。全体を通じて不自然に「間」が長いシーンが何ヵ所もあり、それが自分には合わない感じだ。
2時間28分という比較的長尺なのに、鑑賞後に物足りなさ、あるいは消化不良感が残る。同内容なら2時間に収められるはずだし、逆にこの尺ならもう少し内容を増やせたのに、という中途半端な思いだ。

エンジェルホームという「駆け込み寺」が面白かった。自給自足で、よく言えばアーミッシュ悪く言えばカルト教団のような集団である。
代表者のエンジェル(余貴美子)という女性がオカルティックというか漫画チック。逃亡中の母子はここにいたので、
世間の目から隠れられたわけだ。

その後、母子は小豆島へ。この地も身を隠すには好適だったのだが、夏祭りで撮られた写真がたまたま全国版の新聞に掲載されてしまい、そのために希和子は逮捕される。幸せな生活の中での一瞬の気の緩みが命取りになったということか。
本作は写真がキーアイテムになっている。件の写真のほか、島の写真館で撮った母子のポートレート。ただポートレートの方は上手く活かせていない感じだ。

本作のテーマは「母と娘の愛」というわかりやすいものであるが、「誰が被害者で、誰が加害者か?」となると、実の母も育ての母も、そして恵理菜自身も被害者だと思う。
一方、加害者というか一番悪いのは明確で、もちろん恵理菜の父。愛人を妊娠させて煮え切らないからこのような悲劇を招くのだ。そして娘もやはり父親のようなダメ男の子を妊娠する。似たもの親子ということだろうか・・