ボビー・フィッシャーを探して
(1993年)この映画は、天才チェス少年の実話をもとにしたノンフィクションだそうです。
私にはチェスの知識なんて全く無いのですが、十分に楽しんでみることができました。
7歳の少年がチェスに目覚め、周囲の大人を軽々と負かしてしまう。
そこで父親は彼にチェスの教師をつけ、本格的に学ばせることに。
何といってもチェスシーンがスリリング。
主人公の少年・ジョシュや、彼の両親、教師、チェスのライバルたちなど、登場人物の心理が繊細に描かれており、人間ドラマとしてもすぐれた映画だと思います。
映画のあらすじ(ネタバレあり)と英語のセリフ
自分の息子がチェスの天才であることを知った父親は、夢中になってしまいます。
学校の勉強や、友達との付き合いよりも何よりもチェスをさせることを優先するようになります。
父親は、自分がこれまでの人生で息子がチェスをするように得意だったことは何もなかった、と言います。
息子は天才であると。
"gift" は 贈り物、という意味ですが、ここでは神から授けられた才能、という意味で使われています。
「才能がある」は have a gift というのですね。
天才の息子を持ち、有頂天になる父親。
そんな父の期待に応えるために一生懸命チェスをがんばるジョシュが健気です。
ジョシュは数々のキッズ・チェス大会で優勝します。
でもそこに強力なライバルが出現して…
ジョシュは負けることを恐れるようになります。
ジョシュが不安になって父親に「負けるのが怖い」と弱音を吐くシーンが切ない。
"top-ranked" = トップに位置づけられた
Mabye it's betther not to be the best...
こう小さく呟くジョシュが可哀想でした…
父親の期待と、常にトップであることのプレッシャーに押しつぶれそうになっていくジョシュ。
ジョシュは初めて大会で負けてしまいます。
負けた事に憤る父親が「ジョシュはスランプなんだ」と言います。
"it happens" = よくあることだ、という意味。
"get into a slump and get out of it"
スランプに入っていて抜け出す、という表現が面白いですね。
父親のこの言葉に対して、反論する母親のセリフに胸が熱くなりました。
"disapprove" = 見下す、不賛成である
approve が 価値を認める、という意味の単語ですので、その反義語ですね。
母親のこの言葉は的を得ていると思います。
ジョシュがチェスに勝ちたいのは、父親を喜ばすためで、負けるのが怖いのは父親を失望させることになるから。
お父さんは本来は温かな人なのですが、息子のチェスに夢中になるあまり、心のつながりを見失ってしまったのですね。。
勝ち負けにこだわって、ジョシュの持っている誠実さを奪ってしまうようなら、私はあの子を連れ去るわ。
そうはっきり言ったお母さんがかっこよかったです。
ジョシュには、心からの誠実さと、相手に対する思いやりが常にあって、誰も打ち負かしたいとは思っていない。
それが彼の心の美しさなのですね。
ジョシュを演じた少年のきらきらした澄んだ目が印象的でした。
個人的には強敵ライバル役の少年の、いかにも性格の悪そうな表情も好きでしたが(笑)
負けるのを恐れて不安で揺れる子どもたちの心、そしてチェス大会での心理戦など、微妙な心理描写がみごと。
最後の大会シーンでは背中がゾクゾクしました。
陰影のある柔らかな映像も素晴らしかったです。