【スパイダーマン:スパイダーバース】 | シネフィル倶楽部

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洋邦ジャンル問わず最新作から過去の名作まで色んな作品ついて、ライトな感想や様々な解釈・評論を掲載orつらつらと私「どい」こと井戸陽介の感想を書く場にしたいと思います!観ようと思ってる作品、観たい過去の作品を探す時とかの参考書みたいに活用してもらえればと♪

NEWオススメ作品(※ネタバレありまくり)

 

歴代スパイダーマン映画の中でも1,2位を争う面白さ

 

スラダンの映像表現が発明と感じられたように、今作も発明だと感じられる仕上がりになっていました。

 

THE FIRST SLAM DUNK』がまさに井上雄彦の漫画がそのまま動いてる!漫画の体験が映像でもできてる!と感じられたように、本作はアメコミがそのまま動いてる!という漫画の追体験ができる一作です。

 

ワタクシ、この作品の虜です。

 

『SPIDER-MAN:INTO THE SPIDER-VERSE』

[邦題:スパイダーマン:スパイダーバース]

(2023)

 

『ヴェノム』の本編終了後、ポストクレジットシーンでこの映画の映像が流れた時は「ナニコレ?」とついていけなかったのです。

 

昨今のヒーローものは大方がポストクレジットシーンがありますが、アニメの映像が流れたのは初じゃないでしょうか。

 

正直に言うと、ついてけなかったどころではなく、突然訳の分からないものを観させられて、腹立たしいとさえ感じていました

 

でも今思うと、それだけこの映像表現が革命的で斬新だったので置いてけぼりを喰らった、が正しいかもしれません。

 

そのついてけない自分に腹が立ってたようにも感じます。

 

その後、本公開が迫る過程で数々の賞レースで話題になっているのを横目で見、「それだけ言われるなら映画ファンとしては観とかないとか…」と思い、観に行ったのがきっかけです。

 

 

観終わった後、本当に安堵したのを覚えてます。

 

本作を劇場で観ていないかもしれない別ユニバースの自分───自分はそうならなくて良かった…!と。

 

もうね、この映画最高です

 

コメディ、アクション、ドラマ、音楽、すべて満点。

 

セリフのチョイスやコメディシーンのテンポ感が端切れよくて、何度でも観たくなる仕上がりです。

 

「OK。じゃあもう一度だけ説明しよう」

 

あと、マイルス覚醒直後「What's up danger」をBGMにニューヨークの夜を駆ける様子がアガりまくります。

 

あの覚醒シーンの爽快感、すごいです。

サウナ水風呂外気浴後のととのいと同等レベル

 

 

大好きなところが多い本作、いくつかの切口で紹介していきます。

 

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■『スパイダーマン:スパイダーバース』あらすじ

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スパイダーマン、死す――


スパイダーマンことピーター・パーカーの突然の訃報により、ニューヨーク市民は悲しみに包まれる。

 

13歳のマイルス・モラレスもその一人――彼こそがピーターの後を継ぐ“新生スパイダーマン”だが、その力を未だに上手くコントロール出来ずにいた。

 

そんなある日、何者かにより時空が歪められる大事故が起こる。

 

その天地を揺るがす激しい衝撃により歪められた時空から集められたのは、スパイダー・グウェン、スパイダーマン・ノワール、スパイダー・ハム、そしてペニー・パーカーと彼女が操るパワードスーツ。

 

彼らは全く別の次元=ユニバースで活躍する様々なスパイダーマン達だった。

 

 

(映画『スパイダーマン:スパイダーバース』公式サイトより)

 

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■映画のイントロにかかる"フリ"と"リフ"

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まず最初。映画の冒頭。

 

映画のテンポにグッと心を掴まれました。

 

OK、じゃあもう一度だけ説明しよう」ってフリが後々映画のラストまで効いてる構成が最高です。

 

その自己紹介を本作で登場するスパイダーマン全員にやらせる事で、そのシーンがなんというか音楽でいうと名リフみたいな感じになってます。

 

サビではなく主にイントロで印象的なメロディが繰り返し使われてるのと同じ役割のシーンなんですが、観るもの聴くものに現在地を知らせてくれ、楽しむポイントのひとつになっていたり、全体をリズミカルに聴かせてくれるアクセントになっています。

 

 

このシーンが生まれ得たのは、ひとえにこれまでの積み重ねの賜物ですね。

 

トム・ホランド主演の『ホーム』シリーズ3部作もそうですが、これまで長い年月浸透させてきたスパイダーマンの映画という世界観で浸透してきたものや観客、それら素地を活かすようにしているのが最近の傾向かと思います。

 

ホームシリーズではスパイダーマンになるまでをバッサリ省略するなど。もう知ってるよね?という前提で話を進めるのは、長い事繰り返し作り続けてきたことの賜物ですね。

 

 

本作はその素地の活かし方が特に顕著。

 

なんたって出だしが「OK、じゃあもう一度だけ説明しよう」と言って、スパイダーマンの成り立ちを10秒程度のナレーションと映像で済ませてますからね(笑)

 

そのシーンを劇中で何度も使い回し、使い回す事自体がコメディになっており、数々出てくるスパイダーマンの自己紹介をミニマムにすることができ、何度も使う事でフリが徐々に効いてきて笑いに繋がりやすくなり、果ては映画の締めにも役立ってるという、神懸かったシーンとなりました。

 

長年かけて培ってきた資産を余すところなく活かしている最高の"リフ"シーンです。

 

 

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■セルフパロディ

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自虐ネタというかセルフパロディも本作の特徴。

 

スパイダーマンや世界観、キャラクター、取り巻く現実世界をうまく揶揄して観客を巻き込み、その上でこの「スパイダーバース」の虜にしてくれます。

 

『スパイダーマン3』の調子乗ってるブラックピーターのダンスをいじってみたり、スパイダーマンのアニメ主題歌が出てきたり、「皆死ぬって状況になって実際は死ぬまで猶予があってそこがスパイダーマンの出番だ」と言ってみたり、スパイダーマンの悪役がいかにも言いそうな「24時間でやれ」を先回りして言う、スパイダーマンはマント着ないの!etc.

 

挙げていったらキリがありませんが、「コミコンで聞けよ」「コミコンって?」がだいぶお気に入りです。

 

 

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■細やかな伏線

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最近思うのは、同じ上映時間で体感が違うのって映画の密度や濃度が影響してると感じてます。

 

その密度や濃度に影響してるのは、伏線の散りばめ方と回収率に影響されるのではないかと思いました。

 

その意味で、本作は117分と昨今のトレンドの中は短い尺にも関わらず、尋常じゃない量の伏線と回収率を誇ります

 

 

  • マイルスのリラックスする方法(冒頭のsunflower鼻歌)が後にコミカルシーンに繋がる
  • 学校の授業中のVTRにドックオクことリズが映り、マルチバースについて語ってる
  • マイルスの登校中に「昨日の地震気づいた?」←おそらく加速器のテストの影響
  • 靴紐解けてるのを再三周りから言われるも直してないマイルス→屋上から落下&グーバー破壊の憂き目
    • ※靴紐はポスタービジュアルにも反映されており、マスクをしててもマイルスと分かる
  • おじさんから「ヘ〜〜イ」伝授→キングピンに殺されるおじさん→甥っ子マイルスからの「ヘ〜〜イ」でキングピンを吹っ飛ばしトドメという構図
  • 製作配給会社ロゴ直後に「42」のクローズアップ→まさかの続編で伏線回収
  • 失敗して「AAAAAAA」で落ちて、覚醒して「WOOOOOO」でアガる
  • 子供を欲しくなかったBパーカーが、マイルスの覚醒を経て気持ちが変化する
 

 

〜アクロス・ザ・スパイダーバース』もかなり面白かったので、『〜ビヨンド・ザ・スパイダーバース』で壮大なシリーズ伏線回収を楽しみにしてます!

 

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■字幕、否、吹替

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圧倒的な字幕派の自分でも、最近、吹き替えで観たい海外作品が出てきてますが、本作はその最たる例。

 

なんなら吹き替えの方が笑えます

 

特にピーター・B・パーカーの声優っぷりが最高。

ぐーたらスパイダーマンをコミカルに愛嬌たっぷりに演じてます。

 

グウェンの声優さんも格好良く、コミカルに演じられてます。

特にクライマックスバトルでの「アタシ教えてない…」のトーンが好きです(笑)

 

 

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■ポスタービジュアル

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本作の魅力をポスターがうまく引き出してますよねー。

 

飛び上がったスパイダーマンが空から降下してきてる画なんですが、それを天地逆にしてビル群が上にありそこにスパイダーマンが飛び込んでるような一枚。

 

単体で目を引く違和感のある映画の構図をそのまま切り取ってるんですが、これが格好いい

 

ビジュアル的にも部屋に飾っておきたいポスターです。

 

 

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■音楽

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サントラがまたいいのよぉ♪

 

メインテーマも格好いいですし、スパイダーマン達が潜入する際の音楽も印象的な仕上がりです。

 

あとは歌が格好いい。

 

♪♪Sunflower

 

♪♪What's up danger

 

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■あとがき

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蜘蛛に噛みつかれた直後、痛がって衝撃を受けるかと思いきやサラッとペチッと終わらせるとか、メイおばさんがやたら格好いい!とか、定石を裏切ってくる感じも観ていて驚きの連続でした。

 

各ユニバースの背景トーンをきちんと描き分けてるのもすごいです。

 

他にも好きなところ挙げたらキリがないですね。

 

マイルスがBパーカーに罪悪感を感じさせてる下りとか。

 

ドックオクがデスクトップにアイコン置きすぎな件とか。

 

パトカーから父さんへの愛を催促されるとか。

 

「バカなフリ」→「モラレスって誰?」→「さすがに無理だろ!

 

スパイダーマンの能力トレーニングシーンで、ビルジャンプで怖気付くシークエンスとか。

 

ピーターポーカーのこまっしゃくれた可愛いさ。

 

スパイダーノワールの格好よさ。

 

「おいお前冗談だろ」「なんで風ないのにあいつのマント、ハタハタしてるんだ」とかピーターらしい戦いの最中に軽口叩きまくる感じとか。

 

あかん、おもしろポイント多すぎです。

 

 

すんごい変化球に見えて、蜘蛛に噛まれた普通の高校生がスーパーパワーを得て、おじさんの死亡が覚醒のきっかけになり、悪を倒して、街のヒーローになる───親愛なる隣人として、という実は王道というこも好きなポイントです。

 

悪役側のキングピンに説得力があり共感できるドラマがあったのも、映画としての質が高い理由かもしれません。

 

 

続編となる『〜アクロス・ザ・スパイダーバース』も凄かったです。

 

最終作となる『〜ビヨンド・ザ・スパイダーバース』もヒジョーーーに楽しみにしております!

 

あと、マイルスのスパイダーマンは是非実写でも観てみたいです気がします(^^)

 

 

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■予告編

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