オススメ最新作(※ネタバレなし)
これは21年の年末最後の拾い物でした!
面白い!
久しぶりにオススメのフランス映画に出会えました。
サスペンスでもありつつ、ブラックコメディでもある本作。
キャッチコピーにもある「人間は偶然には勝てない」という言葉が何より雄弁にこの映画の面白さを語っています。
偶然の連鎖によりトラブルが雪だるま式に拡がっていったその先に見えるものは───?
『Only The Animals』
[邦題:悪なき殺人]
(2021)
フランスの村で起きたひとつの失踪事件。
殺人か失踪か。殺人だとしたら遺体はどこに?
というサスペンスを軸にしつつ、そのミステリーというよりはそれが起こった「偶然」と「繋がり」の過程で魅せる映画です。
『ウィンドリバー』
『ヘイトフル・エイト』
『スノーロワイヤル』
などなど、閉ざされた雪山が舞台というだけでミステリーものとしてワクワクしてしまう自分がいます(笑)
本作はそのシチュエーションの魅力を引き継ぎつつも、後半にはなんとびっくり灼熱のアフリカが映し出されるという予想外の展開もあり、最後まで面白く観れる作品でした。
そこは監督の構成力というか、そのエピソードをこの脚本に盛り込むと決めた監督の功績だと思います。
「この記事を観てくれたのも偶然?」
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■『悪なき殺人』あらすじ
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この物語は、ある女性の殺人事件から始まる・・・はずだった。 偶然の連鎖翻弄される運命を、誰が予想できただろうか
フランスの山中にある寒村で、一人の女性が失踪し殺された。
疑われたのは農夫・ジョゼフ。
ジョゼフと不倫する女・アリス。
妻のアリスに隠れてネット恋愛する夫・ミシェル。
そして遠く離れたアフリカで詐欺を行うアルマン。
秘密を抱えた5人の男女がひとつの殺人事件を介して絡まり合っていく。
だが、我々はまだ知らない・・・
この事件がフランスから5000kmも離れた場所から始まり、たったひとつの「偶然」が連鎖し、悪意なき人間が殺人者になることを。
(映画『悪なき殺人』公式サイトより)
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■全体評
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滑稽さのパス回しみたいな映画です。
雪の閉ざされた環境の中で身近な関係や状況に飽きて、外への渇望を抱いている登場人物ばかりなんですが、その渇望ゆえに欲望丸出しで行動する登場人物たちの「滑稽さ」がこの映画のキーになってます。
その感じがある種の可笑しさに繋がっており、サスペンス調の本作にブラックコメディ感をもたらしてます。
とにかく脚本が素晴らしい!
全体で輪っかのように物語が繋がっているイメージで、オチの付け方もよく考えられてたなぁと。
ミシェル役のオチはこの映画の「滑稽さ」の賜物ですね。
ジョゼフ役の章は設定やオチもなかなかエッヂが効いているので、あまり考えすぎず「そういう人も世の中にいる」、くらいの気持ちで観ることをおすすめします。
全5章から構成されており、各登場人物ごとに視点が切り替わる映画です。
羅生門スタイルとも言われるこの手の映画は古今東西たくさんあります。
最近も『最後の決闘裁判』も似た構成を採用してましたし、あとは『バーティカルリミット』や『ジャッキーブラウン』などなど。
本作がすごいのは、それら同じエピソードを違う視点からという構成はともすれば何度も同じ話やセリフや展開を聞かされてげんなり、ということもあるのですが、本作はまぁ無駄がない。
前のエピソードでチラッとだけ描いておいて次のエピソードで明かすところのバランスや、同じシーンが再度出てくるところは極力前後無駄なシーンは省かれており、テンポを殺さずに物語が展開していきます。
また、冒頭で述べた通りですが、途中でコートジボワールのシーンに切り替わり、凍えるような雪山のシーンから、一気に汗や暑さや渇きやむっとした熱気を感じるシーンに展開していくのもこの映画が面白いと感じるポイントかもしれません。
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■あとがき
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邦題はキャッチーな点は◎なんですが、若干本編鑑賞後は「?」が浮かびます。
悪なき殺人ではないかなーと。
まぁ、悪意ではないし勘違いはあれど、明確に誰かを排除しようという意思は存在してます。
まぁ、大した問題ではないですし、実際自分もこのタイトルに惹かれたところもあるのでどの口が言うんだという感じですね汗
雪の景色が冒頭から映るもんだと思ってたら、灼熱の国でガゼルを担いで走る少年の映像から始まるし、遺体の行方や消えた登場人物の行方は気になるし、誰かの何かの言動がどこの誰の人生に影響するか分からんし、最後まで観客を惹きつけてやまない映画でした。
オススメのフランス映画です!
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■予告編
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