※ネタバレはありません。
「No soy coreano,
ni soy japones,
yo soy desarraigado」
ni soy japones,
yo soy desarraigado」
名監督が手掛けた青春映画の金字塔。
実はMr.Childrenの名曲「youthful days」はボーカルの桜井さんが本作『GO』の主人公2人をイメージして書いたものなんです♪
当時窪塚洋介の人気を不動のものにした作品であり、
『バトル・ロワイヤル』のエッヂの効いた役でメジャーデビューした柴咲コウに、日本アカデミー賞最優秀助演女優賞/キネマ旬報ベスト・テン最優秀助演女優賞をもたらし女優としての地位を確立した作品でもあり、行定勲監督と宮藤官九郎、彼らの代表作の一つになった作品です。
自分が高校の時に公開になった作品で、結構話題になった一作。
行定監督の中でも一番好きです♪
ちなみに2番目は『パレード』です。
ではココであらすじをご紹介。
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■『GO』あらすじ
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「民族学校開校以来のばか」と言われる男がいた。
これは彼の"恋愛"に関する物語────。
その時───。
彼はバスケコートのど真ん中で静かに佇んでいた。
「…民族、祖国、国家、単一」
周りには同い年ほどの男たちが大勢。
皆汗をかき、必死でボールを追いかけている。
驚いた事に試合の真っ最中である。
「えー、愛国、統合、同胞、親善、キモチワル」
しかし誰一人として彼を見ようとはしない。
「支配、抑圧、奴属…あ、隷属か」
皆、まるで彼が存在しないかのように振る舞っている。
何事もないかのように進む試合。
「侵略、偏見、差別、なんじゃそりゃ」
ふと、こぼれたボールが彼の手元に来る。
「排斥、排他、選民、混血、純血、団結…」
奪い返すようにその手元からボールを取り、当たり前のように彼を殴る男たち。
次の瞬間。
彼はキレた─────。
彼の名は杉原。
周囲が「コリアンジャパニーズ」と呼ぶ存在である。
様々な経験を経て日本の普通科の高校に通う3年生。
父親に叩き込まれたボクシングで、ヤクザの息子の加藤や朝鮮学校時代の悪友たちとケンカや悪さに明け暮れる日々を送っていた。
そんなある日、杉原は加藤の開いたパーティで桜井という風変わりな少女と出会う。
ぎこちなくも心に残るデートを重ねながら、少しずつお互いの気持ちを近づけていくが…。
…もう一度云う。
これは彼の"恋愛"に関する物語である。
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■物語について
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えも言われぬ爽やかな感動が眠ってる作品。
本当にざっくりまとめてしまえば在日韓国人の主人公が恋愛してケンカして成長して友達を作ってまたケンカして人と離れて人と近付いてって話なんですが、それに留まらない何かがある作品。
なんら境界の上に立っていない自分が、共感できるなんてセリフを吐いていいような軽々しいテーマではない。
それでも気付くと感情移入してしまっていたり、主人公と一緒に憤ったり笑ったり怒ったり悲しんだりしている。
主人公が在日韓国人だろうが日系二世だろうがハーフだろうがクオーターだろうがゲイだろうがレズだろうが。
青春ストーリーに仕上げている事で、色々な人を巻き込めているのも多分に影響しているが、起こっている事を自分に置き換えれば意外にも近くに感じることができる。
この映画自体に共感することが既に、杉原の言う『俺は物体X』というセリフに賛同しているんじゃなかろうか。
人種の違う人を描いたストーリーに共感できる。
遠い異国の人の境遇に涙できる。
自分とは縁遠い内容の映画の主人公に肩入れする。
もともと皆、「どこどこの誰それです」なんて事はなく、ただの物体X。
何も属さない根無し草。
物体X、根無し草、バラの名、色々なフィルターを通して語られるのが、自分が何かの枠に属すとか、名前っていう属性に囚われるとか、そういうのってもうあんまり意味ないし、そういうのもったいなくね?
っていう事。
この映画の詰まるところはそういうところが多くの人を惹きつけたのかなと思います。
冒頭で描かれる現在と三年前の描写で映画の掴みはばっちりだし。
中盤には男もきゅんと来ちゃうようなシーンや展開が盛り沢山だし。
クライマックスの杉原と親父の対決シーンがすっごく格好良いし。
なんだろうなー。めっちゃ好きです。
ただ、こういう色のついた作品は好みが分かれます。
そのテンポやテンションに対する味づけが美味しいと思えなければ、最後まで不味いのは間違いない(笑)
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■主人公・杉原とその親子について
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冒頭で書いた外国語の台詞はスペイン語で、劇中で登場するものです。
『ノソイコレアーノ、ニソイハポネス、ヨソイデサライガード(俺は朝鮮人でも日本人でもない、ただの根無し草だ)』
主人公・杉原の父親が、これから色々な壁にぶち当たるであろう息子に投げ掛ける言葉です。
この父親を山崎努が演じていて、この怪物役者によくまぁ窪塚は食われなかったもんだなぁと(笑)
変な角度の感想ですが(笑)
よくある親父が息子に語るシーン。
杉原の親父がかっこつけたいような、「そういうシーンはこういう処で行われるべき!」というイメージがあるのか。
「やっぱそういう時は海でしょ」という定番を演出する感じで、わざわざ車をとめて砂浜で息子に語る。
けどそこに加えてぼそっと一言。
「もちょっと綺麗な海がよかったんだけどなぁ…」
茶目っ気たっぷりというか可愛い一面のある父親役です。
結構若者向けのテイストに作られた作品の中で、ばりばりの存在感でぴりっと物語を締めてくれています。
若者向けのテイストと言ったのは、笑いの演出、時間軸の入れ替えや、カット割に変則的なテンポを加えたり、そういう意味では独特のケレン味が施された作品だからです。
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■コミカルな要素について
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本作、笑いの要素が満載(笑)
キャラクターが立ってて、セリフも立ってて、一言で言うと「濃い」(笑)
決してそこに作品の軸が置かれている訳ではありませんが(笑)
大竹しのぶが怠惰な高校生の頭を思いっきりはたいたり、
大竹しのぶが勘違いな夫を容赦なくほうきでぶっ叩いたり、
大竹しのぶが窪塚と『俺にもしゃぶしゃぶさせろよ』『母ちゃんがしゃぶしゃぶした方が旨いんだよ』って会話をしたり。
あれ…
大竹しのぶばっかだ(笑)
もちろん他にもいっぱいあります。
デートの待ち合わせそこ?!とか。
お宝ガールズの事とか。
スーパーグレートチキンレースの事とか。
父ちゃんと母ちゃんの痴話喧嘩とか。
書ききれないほど満載。
それぞれのツボを探してみてください♪
上記でも書きましたが、柴咲コウは本作での演技が高く評価され、その年の映画賞を総なめしました。
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■柴咲コウ
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柴咲コウは好きな女優の一人ですが、この作品で一気に好きになりました。
原作者である金城一紀が「映画化する際の桜井は柴咲コウ」と最初から彼女をイメージしており、まさに狙い通りになりましたね。
確かに本作での桜井役、えらい可愛い(笑)
男子諸君、いかがでしょ?(笑)
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■ミスチル「youthful days」と映画「GO」
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それと驚いたのが、本作とミスチル楽曲との関連性。
なんと、大ヒットソング「youthful days」は主人公の杉原と桜井の2人をイメージして桜井さんが書いた曲なんだそうです。
最初知った時はびっくりしました(笑)
歌詞を改めて観てみると、
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気持ちの良い一組のカップルの描写や、花の描写。
可愛さと少しの色っぽさが同居する彼女の描写。
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ぎこちなくも新鮮な恋愛を描いた歌詞になっていますね。
♪♪youthful days / Mr.Children
確かに言われてみて読んでみると、ぴったり来る。
この作品がきっかけで、当時窪塚と桜井さんは対談もしたそうです。
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■キャストについて
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それにしてもまぁ名優がいっぱい出てるんです。
・山崎努
・大竹しのぶ
・柴咲コウ
・山本太郎
・新井浩文
・水川あさみ
・塩見三省
・大杉漣
・萩原聖人
・田中要次
・津田寛治
・平田満
オイシイところで出てくる萩原聖人が良い雰囲気出してます。
彼じゃないと成立しないんじゃないかな、と。
だらしないような優しいような。
頼りないような分け隔てないような。
そんな人が演じないと中々収まりがきかないシーンなので。
にしても、田中要次さんも津田寛治さんも、まぁよく見る!!
名脇役の方々ですね。
そして、今振り返って観てみると初々しい水川あさみが出ているのもオドロキ。
誰がどこで出ているかも映画的な楽しみとして是非チェックしてみて下さい♪
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■主題歌
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The Kaleidoscope「幸せのありか -theme of GO」。
ボーカルの方の歌声ってなんだか不思議なトーンですが、メロディがとっても耳に残ります。
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■宮藤官九郎
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言わずと知れた脚本家さんですね。
手掛けた作品で好きなのはこんな感じです。
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『GO』
『ピンポン』
『69 sixty nine』
『少年メリケンサック』
『流星の絆』
この人が手掛けた作品は、歳がいった人程理解しにくい、はず(笑)
言葉のチョイスや会話のテンポや人物像が若い感性に対してとっても響きやすいものを創る人だなぁと思います。
でも個人的には、意外に役者としての宮藤さんのが好きなんです。
というか最初にこの人を知ったのは脚本家としてでなく役者「宮藤官九郎」でした。
『13階段』という映画があります。
これは死刑囚の無実をはらすために刑務官と元受刑者が真相を追うが、実は当事者たちと以外な共通点が見つかり…という内容のものです。
反町隆史と山崎努主演。
冤罪や死刑制度をテーマにした重めのサスペンスドラマの映画で、大好きな高野和明さんの原作がとっても素晴らしい。
全体的に切ない物語なんですが、この作品でキーとなる記憶をなくした死刑囚役で出演しているのが宮藤官九郎。
ここで死刑に怯える姿がとっても印象的だったのを子供心に覚えています。
あとは京極夏彦の京極堂シリーズを原田眞人監督で実写化したシリーズ第二弾『魍魎の匣』ですね。
これにもキーマンの久保竣公役で出演していますが、独特の雰囲気で演じ上げていましたね~。
個人的には雰囲気役者だと思っていて、使われどころとしてはそういうキーマン的なポジションを求められる役者さんかなぁと思います。
それが悉くハマってる(笑)
これからどんな作品に出てくれますかねぇ。
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■あとがき
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『名前ってなに?バラと呼んでいる花を別の名前にしてみても
美しい香りはそのまま───「ロミオとジュリエット」シェイクスピア』
冒頭に映るこの言葉が、そっくりそのままこの映画の核に触れていますね。
ワルだけど優しくて、喧嘩は強くて、ユーモアがあって、ちょっとした持ち合わせの知性を絶妙なところで使えて、ワルの友達も良い友達もいて、落語を聞いてて、愛嬌があって、かっこよくて、礼儀も知ってて、無礼も知ってる────。
近いやつはいたりするかもだけど、そこまで「イケてる」奴、まぁいません(笑)
けどそれを物語の中とはいえ、きっちり成立させていて窪塚の魅力が詰め込まれた作品です。
おすすめです!
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■予告編
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■特集『新生活♪春映画特集』
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第1弾【プラダを着た悪魔】
第2弾【GO】
第3弾【おと・な・り】