№20
日付:2024/5/16
タイトル:霧の淵
監督・脚本:村瀬大智
劇場名:kino cinema立川髙島屋S.C.館 シアター3
パンフレット:あり(\880)
評価:5.5

 

予告編の映像ショットに観賞意欲をそそられたものの、ほぼどこの劇場も上映を終了していて、唯一都内で上映していた立川の映画館まで足を運びました(しかも上映開始は21時20分!)。

 

奈良の山奥で代々旅館業を営む一家に生じた問題と、かつての賑わいを失くしてしまった集落の現状とがシンクロする物語。

固定化されたカメラで切り取られてゆく、山村とこの一家の日常。スタンダードサイズで映し出されるその映像が、とても魅力的で惹き込まれる。

その一方で、夫との別れ話も祖父の失踪も、この物語においてとても重要なシーケンスとして描いておきながら、監督は幻想的な描写で観客を煙に巻いてしまう。

 

エンドロールで、エグゼクティブプロデューサーとして河瀬直美さんのお名前を見つけて、「あー、なるほどな」と妙に腑に落ちた。

本作が「なら国際映画祭 NARAtive」プロジェクトの「奈良の魅力を世界中の人々に届ける」「奈良らしさを映画におさめ語り継いでいく」というコンセプトのもと、撮影地も指定された上で製作された作品であると知って、更に納得がいった。

本作の主役は奈良県川上村。この地在住のフォトグラファーでもあり初めて撮影を担当した百々武撮影監督が愛情もって切り取った画からは、決して「廃れゆく村」ではなく、今の川上村の魅力で溢れている。

 

そして旅館を切り盛りする母役の水川あさみ、一人娘イヒカ役の三宅朱莉、祖父役の堀田眞三、別居中の父役の三浦誠己。この一家の各々が役回りを心得た上で、川上村の住人として好演。それだけに、NARAtiveのコンセプト抜きにこの一家の物語としても映画として帰結して欲しかった。

 

色々と後を引く作品にもなりました。村瀬大智監督は次回作も要チェック。

 

 

 

 

 

 

パンフレット

・イントロダクション
・ストーリー
・異界としての”淵” 石川直樹(写真家)
・キャスト・インタビュー
 三宅朱莉
 水川あさみ
 三浦誠己
 堀田眞三
・村瀬大智監督インタビュー
・百々武(撮影)インタビュー
・河瀨直美(エグゼクティブプロデューサー)インタビュー
・プロダクション・ノート
・川上村マップ
・スタッフ

・クレジット

チラシ