№32
日付:2023/8/20
タイトル:リボルバー・リリー
監督・共同脚本:行定勲
劇場名:シネプレックス平塚 screen7
パンフレット:あり(\1,100)
評価:5.5

 

今の日本で見応えあるアクションをこなせるトップ女優さんといえば、一番最初に名前が挙がりそうな綾瀬はるかさん。行定勲監督作品はというと「ピンクとグレー」以来。

大正ロマンたっぷりの世界観を手間暇掛けてしっかりと構築していて、それだけでこの娯楽映画の世界に引き込まれる。幣原機関なるスパイ養成組織で最高傑作と謳われた伝説の殺し屋。小山ゆう作「あずみ」的なお話は古今東西枚挙に暇がなく、でもって非常に魅力的なモチーフでもある。本作の主人公もかなり素敵。挨拶代わりの列車内でのひと暴れもイカしている。

 

綾瀬はるか嬢は、鬼神のような戦闘力と心優しき菩薩の両面を持ち合わせる女性ヒロインを演じたら右に出る者がいないんじゃなかろうか。本作の小曾根百合も実に魅力的で、恋してしまいそう。そんな彼女をシシドカフカ、長谷川博己といった頼もしい布陣が支える構図もなかなかよろしい。彼女と伍する強敵の配置にも抜かりがない。

 

ただお話が進むにつれて、徐々に疑問符が増えてくる。

例えば、

敵に追われる少年が逃げ込んだ森の中の掘っ立て小屋。そのサイズと追っ手の数からすれば、どう考えても小屋の周りは包囲されていて然るべき。にもかかわらず、裏手から子供を逃がして無事逃げおおせてしまう不自然さ。

リリーが不死身のサイボーグであるかのように、そこを撃たれて何故平気?とか、多勢に無勢のシチュエーションで展開される銃撃戦の納得感の無さとか、少々安易で粗雑なシークエンスがちょいちょい出てきて観応えの回転数がそこで下がる。ヒトにもモノにも十二分にお金を掛けていながら、シナリオ推敲の時間はなかった?上映時間139分の中に、随分とお粗末な演出箇所が散見される事で、間延びもしてしまった。

 

ちょっと残念な思いで迎えたラスト・シークエンスとエンドロール。これがプロローグ同様にイカしていて、再びテンション上向きに。なんだか色々と惜しいし勿体ない。

安直な展開を許した原因は一体何処にあったのか。この残念さを取り除いた上で、再びリリーの活躍を観てみたいとは思いました。

 

 

 

 

 

 


パンフレット

・イントロダクション
・ストーリー/用語集
・相関図
・ロードマップ 百合と慎太の足取り
・綾瀬はるか インタビュー
・長谷川博己 インタビュー
・羽村仁成 インタビュー
・ジェシー インタビュー
・その他出演者コメント
・アクション女優としての綾瀬はるかの真価 平田真人(フリーライター)
・行定勲監督インタビュー
・長浦京(原作者)インタビュー
・紀伊宗之(企画・プロデュース)インタビュー
・スタッフ紹介
・女性映画としての行定勲の歩み 相田冬二(映画批評家)
・アクション(田淵景也×遊木康剛×大槻響)
・ガン(武藤竜馬×納富貴久男)
・コスチューム(黒澤和子×城山春久)
・ヘアメイク(稲垣亮弐)
・美術(清水剛)
・VFX(尾上克郎)
・音楽(半野善弘)
・リボルバー・リリーの大正 虚構と現実の間で 木俣冬
・コラム 浅井カヨ(一般社団法人日本モダンガール協會代表)
・クレジット
&正誤表(訂正箇所多数あり)

チラシ①

チラシ②