№17
日付:2023/5/1
タイトル:聖地には蜘蛛が巣を張る | HOLY SPIDER
監督・共同脚本:Ali Abbasi
劇場名:シネプレックス平塚 screen2
パンフレット:あり(\1,000)
評価:5
予告編を観て観賞意欲が湧いた作品。
イランの聖地マシュハドで実際に起きた、連続娼婦殺人事件を描いた本作。女に生まれたというだけで制約事項の多いこの国で、女性ジャーナリストが事件の真相を追い求める。
イラン出身者が中心となって撮った、デンマークを中心とする北欧・西欧諸国の合作映画。実話を再現しながらアリ・アッバシ監督が描くのはミソジニー(misogyny)、女性の自由と不自由の問題。
ミソジニー≒女性蔑視と訳されていますが、この作品でも描かれ且つ世界中で起きている問題の多くは「蔑視」ではなく「軽視」。男共が築き上げたこの常識を覆す大変さは私でも想像がつきますが、ここに宗教の問題までが絡んでくると厳しさを増す。八百万の神を崇める薄っぺらな信仰心しか持たない日本人の私にとって、殺人犯サイードの言い分も彼に賛同する“普通の人々”の存在も、ひいてはこの国と彼の信仰心も、もはや畏怖の対象でしかない。
女性ジャーナリストの主人公ラヒミを演じたザール・アミール=エブラヒミは、当初キャスティング・ディレクターとして参加したものの、ラヒミ役が降板したことでお鉢が回ってきたらしい。その降板理由が、劇中でヒジャブ(頭を覆い隠すスカーフ)をベッドに投げ捨てるシーンに恐れをなしたというから、こちらが恐れ入る。
監督は「ペルシャ語のフィルム・ノワールを作りたいと思った」と語っていますが、通常そこで描かれるのはお天道様の目が届かない裏社会の筈。本作で描かれるのは、こちらの物差しでは測れない倫理観と常識を持ったイランという国全体のようでもあり、本作が終始醸し出している薄気味悪さの正体はそこにある。
午後9時45分上映開始、日付が変わる直前に終了した本作を観終わって、鬱々たる気分で劇場を後にする事に。後味の悪い作品ではありました。
白いペラ紙のカバー(?)付き
パンフレット
チラシ