№22
日付:1984/4/3
タイトル:廃市
監督:大林宣彦
劇場名:ジャヴ50(閉館)
パンフレット:あり・中古(\400)
評価:-

 

ジャヴ50って、吉祥寺にあったとても小さなミニシアターだったと思うのだけれど、大学のクラスメイト大澤君に誘われて観に行った記憶がある。この年は「転校生」も観ていて、これも大澤君と一緒に観た筈。作品については柳川を舞台にしたモノクロ映画だったくらいしか覚えていない。

 

※ジャヴ50

場所は西友の対面あたりにあった(月窓寺の敷地の一部らしい)。変遷をみるとオープンしたての頃に訪問していた。

 

2022年11月8日

WOWOWシネマ放送(2022/5/24)分を鑑賞。

記憶っていい加減、モノクロ映画じゃなかった(最初だけモノクロ調)。

とある町が火事で焼失したという新聞記事を目にした主人公の江口が振り返る当時の記憶。そこは当時大学4年の彼が、親戚の伝手で訪れた水郷の町。卒論制作の為に滞在したその地で彼が目にした、ひと夏の出来事。

 

彼が身を寄せる旧家とその一族はどこかミステリアスで、徐々にその人間関係が明かされていく。まるでその土地に縛り付けられているかのような諦観の中で暮らす人々が織りなす人間模様と、その先に訪れる運命にたまたま立ち会った江口。

 

映画におけるモノローグ否定派の私ですが、大林監督が自ら担当する現在の私(江口)がその夏を振り返るつぶやきが文豪小説的でとてもイイ感じ。

山下規介はこれがデビュー作。小林聡美のお嬢様ぶりが新鮮。尾美としのり君はラストで見せ場が。そしてなんといっても峰岸徹さん、ハマり役過ぎます。

 

福永武彦の原作が発表されたのは1959年(昭和34年)で、大林監督が映画化したのが1984年。監督が映像化した世界は大正・昭和初期の純文学的世界そのものといった雰囲気で、没落する旧家の人々が織り成す古き良き(?)恋情のもつれと、そこに居合わせた江口の異邦人としての視線とが交わって、この町の陰陽と共に趣きのある作品に仕上がっている。

 

大林監督らしい思わせぶりな演出も、観終わって後を引いた。

観賞後は消去するつもりだったのですが、消すのが惜しくなりました。

 

 

 

中古で購入したアートシアター(ATG版パンフ)

本作の撮影は2週間(「転校生」や「時をかける少女」は倍の4週間)、「廃市」はNHKとTBSで2度TVドラマ化されていて、その出来に福永氏はいたく不満で、以降自分の作品の映画化を全て断っていた、福永氏は柳川には行ったことがなかった、、、等々。

監督と品田雄吉氏の対談、貞子夫人の付記より(本作の映画化は作者の死後、夫人が許可した模様)。高林陽一氏の柳川同行記も興味深く拝読。シナリオが掲載されているのが有難いと、初めて思った。

 

大判のチラシ表裏