№19
日付:2009/7/20
タイトル:おと・な・り
監督:熊澤尚人
劇場名:シネプレックス平塚 シネマ1
パンフレット:あり(\800)
評価:★★★
コメント:
タイトルにはふたつの意味が掛け合わされていて、そのひとつが"音"。全編を通じて登場人物の周りでさざめく自然や人の生活が紡ぎだす音が、登場人物と同じくらいの存在感を持ってこの作品を盛り立てています。
聡(岡田准一)の元彼女、七緒(麻生久美子)が働く花屋の後輩、コンビニの店員といった連中が吐くセリフや行動の安直さ、押し付けがましさに前半はどうしようもない居心地の悪さを感じ、このまま行くとどーなっちゃうんだ?と危機感が募りました。
たまたま隣り合った部屋に住んだ男女。隣から漏れる日々の生活音をお互いが受け入れる毎日。聡と七緒がそれぞれ人生の岐路を迎えようとしている中、壁を挟んでいつもよりほんの少しだけ心を通わせた二人に待ち受ける、運命の糸・・・・
中盤以降の、まるで現代のお伽噺のような展開に心惹かれました。おとなりから漏れる日々の生活音、その居心地の良さがお互いにとってかけがえのない存在であった証に結び付く瞬間。こういう幸せな気持ちで席を立つ事のできる映画が、私は大好きです。
大学時代から東京で一人暮らしを始め、安アパートで生活していた身からすると、ここまで隣の音がまる聞こえの部屋なんかありえねぇよと思いながら、そんな観客にも最後にそれもまたひとつのファンタジーとして許容させてしまう、まさに映画力。
七緒のくしゃみネタを観て、「サブウェイ・パニック」を思い出しましたが、こういう演出の中にも優しさを感じます。
ラストも本当に素敵。
終わりよければ全てよし。前半のエピソードと人物描写の立て付けの悪さがなければ(こういう作品には、"良い人"しか登場させない方が良いのでは)★4つをあげたい佳作です。