私がまだ小さかった時、オペラは何となく違和感があるものでした。
その多くは、男女が出会って恋愛をして、心中するか相手を殺すか、自殺するかといった
超エキセントリックなものばかりで、感情移入できませんでした。
でも、初めて師匠に勉強になるからとエキストラさせてもらった「カルメン」で、
目からうろこが落ちるような体験をしたことが、私をここまで連れて来てくれた様に思います。
そんな大事なオペラの愛しい登場人物たちを、一人ずつ身近な人を紹介するように
みんなに好きになってもらいたい、共有したいと思い至りました。
なので、ヅカファンが好きなスターを語るがごとく、皆様の熱い意見をお聞きしたく思います。
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私が初めてオケピに入った時はまだ中学生だったので、
カルメンのあの圧倒的なモテっぷりや、自由さ、セクシーさにとにかく憧れました。
当時トランぺッターであったゆえ、あの男前振りやエスカミーリョのイケメンっぷりに
オケピの中から身もだえしていたものでした。
それに引き換え、このドンホセの愚直なまでの一途さは凄いと思うものの、
「この人、なんか情けないなあ。もう諦めればいいのに。好きじゃないって言われてるんだから。
ミカエラ可愛そう・・・。(でも、彼女結構計算高そう)」等と思ってました。
特に最後、カルメンが刺される前に「殺すなら殺せ!」というところなんて、
オケピで地団太踏むくらいでした。
けれど、それから何年かたって
自分が人生の中でカルメン(ここまでかっこよくないけど人に好かれても振る事がある)や、
ミカエラ(どんなに頑張っても、婚約者を取られてしまうこともある)を体験してみると、
このドンホセという人の人生が何とも言えず、自分のものとして迫ってくるようになりました。
田舎町で素朴に育ち、恐らく片親である母の為軍隊に入り、
それなりの役職もつき(ドンホセは伍長)、婚約者ミカエラもいる。
そのままいけば、何の問題もなかったはずの人生にいきなり表れた
ファム・ファタル(カルメン)のせいでどんどん彼の人生が狂って行く。
牢屋に入る羽目になり、密輸入に関与したうえ軍隊も除隊せざるを得なくなり、
婚約を破棄した挙句、新しい恋人(エスカミーリョ)に心変わりした女を刺し殺すという、
見事なまでの岩が転げ落ちるような転落人生。
ある程度の大人になったら、人生がうまくいかないことや
カッコ良く身を引けなかった経験や、誰にも言えないけど心の隅の
深いところで見えない暗い闇があることなんて普通だ。
それくらいの大人になって初めて、ドンホセという人の憐れさや
悲しいけど覚えのある惨めさや憎しみに、身につまされるようになってきたのです。
ドンホセのいちばん有名なアリアに
"La fleur que tu m'avais jetée"(お前が俺に投げたこの花)があるのですが、
彼の心の葛藤がとてもよく表れた名曲です。
私のこだわりなのですが、最後の
Et j'étais une chose à toiは、絶対に(!)ピアノで終わってほしい!
直訳すると「そして俺はお前のものになった。」なのですが、
そこに前の歌詞にあるように、一生懸命に抗ったにも拘わらず
どうしようもなく恋に落ちてしまった彼の心境が現れるように思うからです。
そして、搾り出すように、決心したようにJe t'aime!と言ってほしいのです。
平凡に普通の幸せを探して生きてきたのに、上手くいかなくなってしまう、
どんな人の中にもあるカッコ悪い思い出。
ドンホセは私だなあと胸がちょっとチクっとするのでした。
