脳内麻薬の続きを書きます。

 

前回の記事はこちらです。

 

 

今回は悪魔術について書くので邪気でしんどいですが、大事なところなので書きます。

 

一方アンヌは、シャルルがとても醜いことに気づき、絶望していた。

 

『何なのよ…栄えある次期神聖ローマ皇后の私が、こんな小柄で頭でっかちで醜い男と結婚ですって?』

 

マクシミリアンの肖像画を事前に見ていること、大使プールヘムから彼の魅力について聞かされていたこともあってか、予定外の相手がこう現れたならどうしても比較せざるを得ない。

 

[回想]

「マクシミリアン様はどのようなお方なのですか?」

 

 

とプールヘムも太鼓判を押していた。それが目前と迫ったところで、侵略者の醜い男と結婚だから納得もいかないのだ。

交渉が始まる。

 

『アンヌ、可愛い…ブルターニュもこの娘も絶対に手に入れるぞ!』

「もし?陛下?… 陛下!!

!!

 

「コホン、お嬢さん。」

「マダムとお呼びください。私は次期皇后です!マクシミリアン様と結婚しております!

 

ここでもアンヌは代理結婚を切り札として使う。

 

「マダムじゃない!皇后でもない!その結婚は条約違反だから認めない

「私は待ちます。必ず来てくださるわ。」

「禁じているから来ないよ、マダム。あなたが彼のところに行かない限り無理だろう

「来るわ!」

「道を封鎖するよ?フランスの地は通させない

「で、ではフランスを経由せず海路で…来て…いただくわ…

アンヌは自信がなさそうだ。

 

「そうなると彼はブルターニュからあなたを連れ去り戻ることはないだろう

「私は決して自分の土地から離れて暮らしたりしません!」

「その必要がないように、良い解決策があります。」

「どういう意味ですか、ムッシュー?」

「シャルルと呼んでください!」

「そう呼んでいいのは、あなたの姉妹か奥様だけですよ。」

「妻はいない!」

「マルグリット王女がいるのに?

「マダム、それがいかにあり得ないことか…あなたも統治者として、こちらの立場に立ってお考えを。もし私がオーストリアの王女を妃に迎えたら、子供の血統はフランスと神聖ローマ帝国の血統が混在することになります。」

 

 

「でも、お父上のルイ11世はそのことを承知の上で結婚を申し込まれたのですよね?」

「当時、神聖ローマ帝国はフランスの東の国境にしかなく、フランスにとって脅威にはならなかった。」

「それが今、彼女の父親が私の夫であり、私はあなたの義母でもあるわね......」

アンヌは深く考え込んでいた。シャルルは彼女が問題の本質を理解しているのがわかった。

「その通り。神聖ローマ帝国をフランスの左翼にも右翼にも置くことはできない。」

「しかし、マクシミリアン様がブルターニュで問題を起こすことありませんよ。約束したから。」

「それは信用に値しますか?」

「あの方は騎士道精神に熱い方ですよ。亡き奥様を救出に向かった話も大使から聞いているわ。」

「騎士道精神?彼は考えと行動が矛盾していますね。助けにも来ないでは大嘘つきではないですか。誠実さのかけらもないでしょう。」

「うっ…

「マダム、彼は今気が散っていますが、ハンガリーの問題が解決すれば、西方に目を向けるはず。自国の領土で囲い込んだら、さらに内側にその領土を飲み込もうと手を伸ばさない野心的な支配者がいるだろうか。」

「それならもちろん、あなたは彼と戦争をすることになるでしょうね。」

シャルルはため息をついた。

「マダム~、戦争はもううんざりですあなたもそうでしょう?私は父や姉とは違って謀略も嫌いだし手荒な真似をしたくないですよ。」

アンヌはしばらく彼を観察した後、目を閉じた。

「そうね…確かに戦争は苦しいわ。結局一番苦しむのは民だから

 

シャルルは手を伸ばし、アンの手をしっかりと握った。

 

「そうでしょう。では、いい考えがあるから聞いてほしい」

「どんな考え?」

 

彼女は半眼で彼を見つめた。

シャルルはフランスの王であり、彼が望めば、彼女を捕虜にさせることもできた。ただ、捕虜にして強引に無理矢理結婚というのは姉の考え方である。それに、そのようなことをして一体何が得られるというのか。束の間の平和にすぎず、そしてその先にはさらなる戦争が待っている。もっといい道があるはずだ。もし彼女が彼と一緒に歩むことに同意しさえすれば。その方が確実なのだと考えたのだ。

 

彼は椅子から立ち上がり、彼女の前に片膝をついた。

 

 

アンは警戒心と好奇心が入り混じった表情で後ずさった。

 

「どういうつもり?立って!頭を上げてよ!」

「あなたは俺を見て、いかに醜いかを知った

 

今まで女性から受けた唯一の純粋な賛辞は、ろうそくの火が消えた後の暗闇の中だった。

 

まぁ、明かりを消せば容姿の醜さも気にならないですからね。それにしてもこの人容姿のコンプレックスが酷いですね。

 

「やめてよ、シャルル。運命に選ばれた肉体は、誰にもどうすることもできないのだから、受け止めましょうよ。」

「マダム、自分の美貌の無さを許してくださりありがとうございます。」

(おっ、クリスチャンネームで呼ばれたってことはチャンスありドキドキ

 

「馬鹿なことを言っていないで、立って。片膝をついて言わなければならないことって?」(身内からもルイからも散々聞かされているからそろそろ覚悟しなければならない…か…

 

本題に入る。

 

 

「でも、私は...誓いを立てたわ...」

彼女の口調は、弱々しくなった。

「その件は代理人によるもので、誰もそれを完全に法的な結合とは取らない。それに…」

「それに?」

「結婚式に本人がいなくて、妻が命の危険に晒されているのに助けにも来ないことが既に誓いを破っている。無礼以外の何物でもないと思うけど。」

「確かに...代理を立てる、助けに来てくれないのは酷いと思った。矢のような催促の手紙を送ったのに返事もよこさなかった…

 

代理結婚が無効かですが、これはフランス側の強引な解釈となります。

代理結婚というのは中世ヨーロッパでどこの国でも行われています。双方の合意の下で行われる正式な婚姻として成立します。

 

「君はずっと俺を憎んできた。俺は愛されるような人間ではない。女性が毎日見たくないような体をしているから

 

彼は頭を下げ、一生懸命彼女の手にしがみついた。

 

「シャルル、自分が醜いというのはやめましょうよ。体の形が愛すべきものかどうかを決めるのではないわ。愛する目は体の中の人なのよ。」

『アンヌ…いい娘…ラブキューン飛び出すハート


アンヌはこれまでずっと気丈にふるまっていたが、夫からの救いの見込みもなくなった今、拒否すればフランス軍が公国を完全に破滅させ、自分が捕虜になるしかないこともわかっていた。もし捕虜になって拒否し続けた場合、男だったら拷問や処刑もあり得る…。ただ自分は女。凌辱されてしまうことになるかも。そんなことは考えたくもなかった。城を枕に玉砕するわけにもいかなかった。自分がいなければブルターニュを救うこともできないのだ。

それにシャルル8世は摂政とは違って慈悲深く優しいということも既に側近から聞いていた。

 

『…ぐぅ~…きゅるるる…(お腹の音)そういえばずっと何も食べてない…

 

「食べないと死んじゃうから。もうやせ我慢は止めようよ受け入れてくれたら、軍は撤退させるし、すぐにでも食糧輸送するよ。年金も与える。どうか自ら破滅の道を進まないでほしい

 

もし、この時の王がルイ11世だったなら刺客を送り込んでアンヌは暗殺されたかもしれませんね。

例えば14世紀のナポリ女王ジョヴァンナ1世は親戚と教皇の陰謀で暗殺されています。女性だからなめられやすいんだろうか。いつの時代も女性君主の代は何かと不穏な動きが起こりやすいです。

 

『ブルターニュの命運はこの人に握られているわ。確かに彼は慈悲深いし優しいところもある。父を死に追いやり残酷なことをしてきたのは摂政の方か…。摂政とこの人では全然違うわね…。この人本気で私のこと大事にしたいと思っているのがなんとなくだけどわかる…。』

 

もはや、選択の余地など残されていなかった。フランスの捕虜になってブルターニュ征服か、それとも平和的に結婚か。究極の二択だった。いずれにしてもフランスに命を握られているということで逃げ道はもうない。

 

 

ブルターニュの民たちが苦しむのをこれ以上見たくもなかった。

海外から派遣された傭兵たちの乱暴狼藉は凄まじいものがあり、金品は略奪され女性は襲われ酷い有様だった。無給になった傭兵たちほど手に負えないものはない。

 

「”はい”と言いたいところだけれど…、それでもブルターニュは渡したくない

「優れた統治者だよ、マダムなら、何を提供すれば同意してもらえるの?」

 

「ブルターニュがフランスの王位継承者ではない子供(次男、三男)に引き継がれることを約束してほしいわ。」

「君の言うとおりになるだろう。約束するよ

「他の子供たちの誰に私の公国に対する世襲の権利を遺贈するのを決めるのは私です。」

「おやどうやら俺たちにはたくさんの子供たちがいるようだ

びっくりマークあせる 滝汗

 

「君は、”はい”と言いたいと言った。俺は早く”はい”と言うのを聞きたい”はい”と言ってくれればこの結婚を政治的なもの以上にするために共に働くことになるから」

「…私はあなたの妻になり、王妃になることに同意します。あなたにたくさんの子供を産むために全力で尽くすことに…同意します。」

(なんか、完全に向こうのペースに飲まれたなぁ…あせる )

 

ラブラブ「ありがとう、アンヌ。敵としてではなく妻として君を歓迎する。これからもいろんなことが起こるだろうまたね

 

シャルルは立ち上がりアンヌを解放した。

こうしてアンヌはシャルルの提案に同意した。

 

あせる「お父様、マクシミリアン様、ごめんなさい。私は誓いを破った。事態は一刻を争う…私にはもうこうするしかなかったこうでもしないとブルターニュが…」

 

神聖ローマ皇后の夢は崩れ去った。

 

 

アンヌは敬虔なカトリック教徒なので、誓いを破ったことの罪悪感を生涯背負い込むことになる。

 

シャルル8世…こんな感じで交渉したようです。

この人は父親や姉とは対照的に性格は優しく慈悲深いとの情報がありました。「温厚王」はここからきていると思われます。この人はものすごい承認欲求の塊です。愛されるためなら何でもやろうという激しい執着ですね。優しい言葉をかけて警戒心を解きアンヌの情を入れさせる流れを作ったようです。

目の前に現れた女性が意外にも理想の女性だった。でも人妻でした。どうするか?シャルル8世の取った行動は王の特権を使ったわけです。

 

王の権力なら命を握ることも可能です。でも誇り高い彼女は、暴力的な強引な交渉では心に傷を負いトラウマを作ります。そしてかえって王を恨むでしょう。実際暴力的な支配や交渉はシャルル8世も嫌っていたのです。何より彼女に拒絶されることが耐えがたい苦痛だったのです。目の前の女性が理想の女性だから。

だから彼女が嫌々ではなく自発的に結婚を受け入れさせる方向にもっていきたかったのです。

このような一見穏便に見える交渉実はものすごく汚い手ですね。これは同調圧力になるんですよ。同調圧力…つまり

 

悪魔術をかけまくっているということです

 

それで、アンヌ・ド・ブルターニュは屈した。

強制的に情を入れざるを得なかった状況をつくらされたと言ってもいいでしょうね。こうやって相手の命を握り追い詰め思い通りに動かす術を…ストックホルム症候群と言います。シャルル8世はこれを使ったことになります。

ストックホルム症候群についてWikipediaより。

1973年8月、ストックホルムにおいて発生した銀行強盗人質立てこもり事件(ノルマルム広場強盗事件)において、人質解放後の捜査で、犯人が寝ている間に人質が警察に銃を向けるなど、人質が犯人に協力して警察に敵対する行動を取っていたことが判明した。また、解放後も人質が犯人をかばい警察に非協力的な証言を行った。

スウェーデン国内で、犯罪学者で精神科医でもあるニールス・ベジェロット (Nils Bejerot) が「ノルマルム広場症候群」を意味する Norrmalmstorgssyndromet と呼んだ。それをスウェーデン国外のメディアは「ストックホルム症候群 (Stockholm syndrome)」と報道した。

最初期に、この問題を調査したアメリカ人のフランク・オックバーグ (Frank Ochberg) 博士は、FBIとイギリス警察の交渉担当者に、次のように報告していた。

人は、突然に事件に巻き込まれて人質となる。そして、死ぬかもしれないと覚悟する。犯人の許可が無ければ、飲食も、トイレも、会話もできない状態になる。犯人から食べ物をもらったり、トイレに行く許可をもらったりする。そして犯人の小さな親切に対して感謝の念が生じる。犯人に対して、好意的な印象をもつようになる。犯人も人質に対する見方を変える

引用の赤字の部分が該当しているなと思います。

 

『正直、何度心臓が飛び出るかわからないくらいだったな…俺が王じゃなかったら全く相手にされなかったのは確実。王で良かったな。』

 

結婚交渉が成立したことを自画自賛するシャルルは、早速姉に手紙を送った。

 

「姉上、ご満足いただけると思いますが、私はレンヌとそこにいる少女を私が望んだ方法で手に入れたのです。」

 

私が望んだ方法、騎士道精神をもって一滴の血を流すことなく平和的に交渉したこと。それが実権を握る姉への唯一の反抗でもあった。21歳になったシャルルは本当は姉から自立したかった。この成果はその第一歩とも言える。

 

あの強い姉に対抗できる女性として彼女に匹敵する強さと賢さを兼ね備えた女性が必要だった。それがアンヌでもあったのだ。

シャルル8世親政開始まであと少し…。

 

続きます。

 

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