続きを書きます。
前回の記事はこちらです。
大役を任されたオルレアン公ルイは、これまでの女性との巡り合わせの悪さを思うとぞっとした。大嫌いで恐れていた女性に執拗に追いかけられ、罰を受け、その女性のそのまた大嫌いな妹と強制結婚させられ、義理の弟と結婚するよう説得しなければならない女性のことが好きだったのだから。翌週、レンヌに到着し、アンヌに面会した。投獄されてから3年目に釈放。久しぶりの再会である。
小さな女公は、14歳になり大人の女性の仲間入りをしていた。自分と婚約した時よりもさらに美しくなっていたので、ルイは戸惑いシャルルの要望を伝えるのに大変大変苦労することになる。
(かつて敵対し、父の親友でもあったルイを送り込んでくるとは…フランス王は何か企んでいるのかしら?)
「フランス王はオーストリア大公との結婚を認めませんでした。条約にあるように、そしてお父様が同意されたように、フランスに敵対する外国勢力に領地を侵されないために、国王の許可を得て結婚しなければ駄目なのです。」
ルイは、お互い望んでいないのに、こんなことになってしまったとでも言いたげな顔をした。
アンヌは言い返した。このような発言は交渉の切り札になるかもしれない。
「殿下、私の結婚もまた既成事実ですよ。先王による強制ですが、それでも耐えてきました。あなたの結婚は違います。」
彼の目は暗くなり、突然光が消えた。
「未来の神聖ローマ皇帝が大使を遣わして、あなたの脚に自分の脚を絡ませたという話は、馬鹿げた茶番だと。そのことを申し上げるのは…残念ですが、ブルターニュ公家の当主が夫となるべき人物にそのような粗末な扱いを受ける場面に立ち会わなくて…よかったと私は思います。殿下にふさわしくありませんでしたから」
アンヌの目に憤怒の炎が宿った。
「オーストリア大公との結婚は許可しオーストリアへの旅費は負担するからブルターニュを明け渡すというものです。」
「却下。私はブルターニュを離れるわけにはいかない。どうせその間にフランスは占領する気なんでしょう?」
「では殿下、結婚相手をリュクサンブール公、ヌムール公ら三人の貴族から選んでいただきたいと…。フランス軍をブルターニュ全域からから完全に撤退させるので。」
「まあ、呆れた…。フランス王は自分がブルターニュを支配したいくせに随分舐めた真似をしてくれるわね。ブルターニュはかつて王国でもあったのよ?その価値を考えたら、そんな身分の低い者との結婚がいかに釣り合わないかわからないのかしら?皇帝か王かその息子としか結婚できないと伝えなさい!」
「フランス王はもっといい案を出すと思っていたけど、何様のつもりかしら。私は将来の神聖ローマ皇帝の妻なのよ!」
「名ばかりの妻にすぎません。脚と脚の間とでも言いましょうか。」
「お許しください、殿下。この一年、フランス宮廷はこの話で大いに盛り上がりました。」
「ですから、お父様が結ばれた条約で、あなたの結婚は無効とされています」
ルイは悲しそうに首を横に振った。
「殿下、私はあなたが7歳のときから、あなたの謙虚な召使であり、崇拝者です。でも、私を三年の牢獄から救ってくださったのは、フランス国王ご自身なのです」
ルイは石のような表情で彼女を見つめた。
ルイの顔には剥奪と苦しみが刻まれていた。
「殿下、選択肢を考えてみてください。結婚が有効だと仰るかもしれませんが、お父様が結ばれた条約により、結婚は無効です。未婚である以上、簡単に無効となります。」
「はぁ…、ルイ、あなたはこんなこと任されてつらくないの?本当はどう思っているの?」
ルイは非常にデリケートな立場にいた。
「殿下…私はいつでもあなたの味方です。でも、私は王に忠誠を誓いました。ブルターニュの民を苦しめ、あなたが捕虜になって辱めを受けるより、王と結婚することが一滴も血を流さない最も平和的な解決策なのです。私もそれを望んでいます。」
(本当のこと?それは君を妻にしたい…君のことを一番愛しているのは私なんだよ!だけどだけど、そんなことは絶対に言えない…)
「ルイ、そのことだけど、あなたの口からではなく本人が言わなくては。フランス王自身が何を考えているか全くわからない。国のトップ同士で対等に話したいわ。」
「殿下…国王は近くまで来ていますので、あなた様と面会していただくようお伝えします。他に王に知らせておくことはありますか?」
ルイが城門の向こう側で王にメッセージを伝えている間、彼女は内密にそのつらさに耐えた。
アンヌは公国内でもフランス王との結婚に賛成する助言者たちの圧力を受け始めていた。遠く離れた東の外国の王との共同統治よりもブルターニュの近隣であるフランスの方が民衆たちも親近感があり抵抗が少なかったようだ。ブルトン人たちは、フランス人との混血が進んでいた。この影響もある。
フランソワ2世のナント大学創設もタイミングが遅すぎたようだ。
横槍を突っ込んできたフランスが身勝手で一方的に悪いのですが、ブルターニュの民衆たちももっと賢くあるべきでした…マクシミリアンはフランス語が話せるのでコミュニケーションについての心配もありません。アンヌと連携すればうまく立ち回れた可能性が高いので、信頼して待って持ちこたえるべきでしたね。
時間がかかったとしても、この時代でだまし討ちや罠が横行する中で約束を誠実に守ってきたのはアンヌとマクシミリアンくらいだったのに…。
父帝フリードリヒ3世は反対こそしていますが、神聖ローマ帝国には代理結婚の成立を解消させるお金はないのでフランスが余計なことをしなければ、普通に時間が解決して成立だったのになとは思います。
公国にはもうお金も残っておらず破産していた。本来ならば…本来なら、ブルターニュの肥沃な土地であれば、産業や交易を通じて裕福になれるだけの地力はあるけれど、そもそもフランスがブルターニュを占領してしまったから完全に追い詰められてしまった。
そしてアンヌは泣き崩れた。摂政が結婚させたがっている男のことを本当はとても憎んでいた。
「リュクサンブール公、ヌムール公も即答で却下でしたね。憤慨していました。」
「ぷっ…wwリュクサンブール公を蹴った?あいつさ、俺より不細工だから。ざまぁwwww」
シャルルは、彼女がリュクサンブール公を断ったことに妙な高揚感を覚えながら、ほくそ笑んだ。
『シャルル…そんなことで優越感に浸ってないでしっかりしてくれ…』
「陛下、女公が会いたがっていますよ。お会いになっては?それに、あのお方は陛下を容姿で門前払いするような方ではありませんし、立派なお方なので…」
「本当?そこまで賢いならあの姉と知恵比べができ、とうとう俺も親政できるかな…なら会いに行くよ。」
数日後、シャルルとアンヌの会談が巧妙に手配された。国王はレンヌの城門にある礼拝堂に巡礼に出かけ、そこで身を固めた後、武器を捨て丸腰で城塞を横切った。実際には、王は50人の弓兵と100人の武装兵を従えていたため、この非公式な入城は領有に等しいものであった。
シャルルはすぐに女公に挨拶に行った。人払いがされ二人きりになった。
二人は他愛もない言葉を交わしながら、互いをよく観察した。
シャルルはアンヌが可愛らしく魅力的であることに気づいた。
やはり実際見て見ないことには彼女の魅力はわからないものである。世間的に容姿は優れているわけではないと言われていても(諸説ありますが、情報源がシャルル8世の婚約者マルグリットのおつきの年代記記者、つまり敵方神聖ローマ帝国の手の者なので悪意が込められている可能性があります。あと、マルグリットが美しかったかどうかですが、幼い頃はそうかもしれませんが、大人になると彼女もハプスブルク家独特の受け口が出ていました。何枚か肖像画を見比べましたが特徴があります。受け口の人は下唇がつき出る傾向です。)
重症の場合はカール5世のように顎がしゃくれることもあります…。これは近親婚のせいではなく、優性遺伝によるものです。嚙み合わせにも影響するため気の毒といえば気の毒ですが。)
容姿というのは本人の好みに合致してしまえばそれはたちまち理想の女性へと変わるもの。シャルルにとってアンヌはまさに理想の女性そのものだった。
辛口のヴェネツィア大使も彼女の容姿はまずまず綺麗だったと言っているため、アンヌは本当は美しかったのかもしれません。
私の見解では、シャルル8世はアンヌ・ド・ブルターニュを王妃にしたことでもインチキ自己肯定しているので、美人だったのではないかなと思います。
15世紀に描かれたシャルル8世とアンヌ・ド・ブルターニュのこちらの肖像画ですが、シャルルはこんなにハンサムではなかったし、アンヌはこんなに醜くなかったと海外では指摘されているそうです。容姿のコンプレックスが酷いシャルル8世がアンヌでインチキ自己肯定するならやっぱり美しくないと整合性がとれないわけで、2人の容姿は正反対くらいかなと思います。
一般的に出回っている肖像画のシャルル8世も変わった顔だなと思いますが、もっと酷いんでしょうね…。
シャルルは彼女の胸が豊かであることがとても気になった。
しかし、左右高さの異なるヒールのある特注の靴を履き、噂に聞く跛行を巧みに隠して歩くことにも興味があった。完璧だと思われる彼女にもこのような悩みを抱え、それと上手く付き合っていると思うとシャルルは安堵した。王は自身が小柄で容姿が醜くコンプレックスの塊だった。だが幸いにも彼女もまた小柄であった。
小柄だが、自信に満ち溢れており、その堂々とした立ち振る舞いから体が大きく見えた。
跛行については股関節の疾患があったのではと考えられます。現代の医学であれば手術等で治せたかも知れません。
15世紀の女性はこういう靴を履いていたらしいです。
こちらはブルターニュの人が描いた漫画のアンヌ・ブルターニュですが靴を脱いでいます。ヒールまではちょっとわかりませんが、中敷きの中に仕込んでいるタイプのものなのかもしれません。もしくはウエッジソールみたいなヒールとか。
出典:TROP TRO BREIZ
参考としたフランス語の資料ですが、原文の直訳は「喉が豊か」「喉が詰まっている」ですが、この喉という単語gorgeは乳房、胸の意味もあり、峡谷つまり谷間の意味もあります。
喉が豊か=胸が大きいってことなんですね。
アンヌ・ド・ブルターニュは巨乳だった?
ただでさえ少ない肖像画を探しました…見つけました!
谷間くっきりですが。コルセットで上にあげているとはいえど、大きいのでは?
比較としてシャルル7世愛妾アニェス・ソレルです。この時代で最も理想的な美乳とされた女性ですが、アンヌ・ド・ブルターニュも遜色ないです。
14歳でそんなに成長するか?というと、ヨーロッパの人は日本人より成長早いようなのであり得るかなと思います。なんせアンヌの父親は大の狩猟好きです。貴族の娘なので、確実に肉を食べている食生活です。
アンヌ・ド・ブルターニュに対するイメージについても、先入観というのはやっぱり怖いものです。海外ドラマ『ボルジア~欲望の系譜』に登場するアンヌ・ド・ブルターニュでは色気のある人がやっているので意外だと思いましたが、あながち嘘ではないのかもと思えました。
ただ、魔性の女タイプではなく、至って真面目、清廉潔白です。色気があって気品もあるので女性にも支持されやすい容姿、佇まいだったのかなと思います。
あと左右高さの異なるヒールを履いて歩くことで気になる点が…
そういえば左右高さの異なるヒールといえば、マリリン・モンローです。左右高さの異なるヒールを履いて堂々と歩くとモンローウォークになります。
これです。
当時の女性のファッションは、女性はヘッドドレスを身に付け、露出の少ない控え目なドレスの女性が多く、そのような服装から色気を出すって相当難しいと思いますが…。華奢だったと記録がありますが、フランスでの華奢はちょっと当てにならないかもしれません。日本人の感覚でいえば標準くらいでメリハリがある一番受けやすい体型かなと。
あとこれがフランス人男性皆に当てはまるのだとしたら、女性差別になりますね。脳内麻薬大国の人間が考えていることはどうしようもない…。
アンヌ・ド・ブルターニュは脚の矯正をしていたわけだから、本人が意図的に男性の気を引こうとではなく、たまたま色気が出る条件が揃ってしまった可能性もあるのかなと思います。仮説ですが、モンローウォークをしていたのかもしれません。
続きます。
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