転院の日 | 夫が借金残して倒れた日から

夫が借金残して倒れた日から

2021年2月、夫は借金を残したまま倒れ、寝たきりとなってしまいました。その後高度障害認定により借金完済。そして2022年6月永眠。いろいろな思いや、生活のこと、お金のこと。忘備録を綴ります



2021年6月3日

夫の転院に娘と息子も来た

病院にスーツケースといろいろな荷物をもって
先日買ったパジャマを渡す

今、吸引をしているという

会計を終えて
準備が整う

ひさしぶりに夫に会う

以前より、なんというか
悪くなっている…

最後に会った時は
元気だった頃の夫の面影があったけれど

今日見る夫は、別人だった

もう、夫の人間性と人格が感じられなかった

脳疾患により肢体麻痺になった
意識障害のある病人のそれだった

看護師さんから、転院先に渡す数々の書類と
薬、装具をもらう

介護タクシーが待っていた

恭しく挨拶をしてくれるタクシーの方

ストレッチャーが病棟まで運び込まれ

夫を移動させて
病院の大きなエレベーターで下まで行く


介護タクシーに乗り込むときに
今までお世話になった看護師さんたち

ソーシャルワーカーの方
そして主治医の先生が見送りに出てくださった

私は今までお世話になったことを感謝して
頭を下げる

病院の方々は一様に複雑な表情で
笑顔を作っていた

本当にありがとうございました
お世話になりました

がんばってくださいね、と主治医から声をかけられる

がんばります、と笑顔で答えた

どう頑張ればいいのかわからないけれど



あの日、救急車で運び込まれてから
今日まで3ヶ月

不安な気持ちと悲しみを胸に通ったこの病院

なんとも言えない切なさが込み上げる

介護タクシーは高速に乗った

夫は車の運転が大好きだった

夫は久しぶりの高速道路で
なにか思うところがあるのではないかと思ったけれど

なんの反応もなかった

痙攣したように
身体がたまに動くだけ

息子が顔をのぞこきんでも
なんの反応もない

倒れたばかりで意識がなかった頃

息子が声をかけると
びくっと反応していた夫

目を開こうとしていた夫

私は介護タクシーの窓から
高速の防音壁を眺めながら
心が鉛のように沈んでいくのを感じた

今まで、夫が回復したら保険はあきらめなくてはと
そんな考えをする自分を責めていたけれど

そんな気持ちが薄らいでいく


そんな心配をしなくても
夫はもう…回復はしない…

夫はもう戻ってこない

そう実感させられる
夫の姿だった