【次に会うとき】
今日、サヨナラをしました。
色々な形のそれがあると思うのですが、今日のは悲しいお別れです。
誰もいない場所で、彼が好きだったドライマティーニを作って、横にいない
彼の為に飲みました。
彼の好きだったパルタガスを吸っていると、後ろから声をかけられた気が
して…
でも、もちろんそこに彼の姿はありません。
もう聞けない、優しく豪快だった彼の声が「泣くな」って言って笑って
いるような気がしました。
冷たい空気を吸うために外に出ると、
こんな時にもサクラは綺麗で…………
彼は、私の涙は決して望まないはずです。
私に出来る事は、今みたいに涙を流すことではなくて、
【次に会う時】に私が笑顔でいる事です。
心から笑うために、
自信を持つために、
一流の葉巻を探し続けようと思います。
いつか、彼に自信を持って届けられるように。
【期待と想像の時間】
新しい葉巻に出会った瞬間、もうどうしようもないくらいに幸せな気持ちに
なります。
味の変化、香りの特徴……それらが煙に変わる瞬間を夢見ながら、手元に来て
から少しの間ヒュミドールに寝かせます。
そして、私好みの状態になって初めて、ようやく火を着けて愉しみます。
葉っぱの状態を見て、香りを嗅いで、火を着けて味を確かめる。
それらは当り前に幸福な時間なのですが、待っている時間も悪くないものです。
例えば、大好きな人とのデートの日を待っているような。
例えば、憧れの街への旅立ちの日を待っているような。
そんな、幸せな【期待と想像の時間】も愉しみます。
他の方のヒュミドールで17年。そして私のヒュミドールに移ってきて2年に
なる葉巻があります。
吸いごろを待っているのですが、もったいなくていつもタイミングを逃してしまい
ます。
いつか、この大切に時間を通ってきた葉巻を吸うことがあれば、ここで感想を
書きたいと思っています。
私がこの待っている状態を愉しんでいる限りは、それもいつの事になるかはわかり
ませんが……。
【彼女流の桜景色】
【一流の人】というのは、どの分野にもいると思います。
例えば、一流の音楽を創りだす、一流のミュージシャン。
例えば、一流の料理を提供する、シェフやサービスマン。
色々な世界があるのと同じ数以上の、一流の人間がいると思います。
先月、自分の時間の中に【映画特化週間】を作り、毎日睡眠時間を
削ってでも1日1本の映画を見ていました。
期間は10日間。
洋画、邦画関係なく、見たかった映画をここぞとばかりに見ました。
最後の映画は【さくらん】。
物語の舞台は吉原。花魁を目指す女性たちを描いています。
演者、脚本、音楽と、どれも私の好きな方々ですが、私が最も興味を
惹かれたのは監督です。
写真家の蜷川実花が、今回初監督を務めました。
ご存知の方も多いかもしれませんが、彼女の写真には、彼女のスタイルが
強く写り込みます。
原色を多く使い、命の生々しさを形に残す事の出来る希少な方です。
その彼女の感性が、映画という形でどう表現するのかが非常に楽しみ
でした。
しかし、【期待】、…というか私の【想像力】が及んでいませんでいた。
彼女の【才能】に。
「倉之助様がお前に桜景色を下さったよ。外を見てごらん」
画面いっぱいの襖の向こうにはきっと、蜷川実花流の桜景色。
もう、想像の時点で鼓動が速くなっているのに気付きました。
そして、襖が開いて…………………。
【彼女流の桜景色】に、エンドロールが終わるまでずっと、ナミダが
とまりませんでした。
皆様の手元にもっとたくさんの感動をお届するために、
私たちもさらなる高みを目指して頑張り続けようと思います。
【桜の蕾】
桜の蕾が綺麗です。
もちろん満開の桜も、葉桜も素敵です。
でも、この暖かな日が始まる頃の、【桜の蕾】が一番好きです。
先日、神戸コレクションが行われました。
仕事関係の方々も多く関係しているのでなるべく行きたいのですが、
なかなか都合が合いません。
なので、今回もテレビで拝見させて頂きました。
読者モデル出身のアパレルメーカー社長のMさんや、駆け出しモデルの
Cさんもテレビで笑顔を振りまいていました。
直前の彼女達を知っていますが、緊張と激務でヨレヨレになっていました。
それを、微塵もみせない笑顔。
頑張っている方々で、それを見せずに【余裕を振舞う方】は素敵だと思います。
「私も頑張らないと…」強くそう感じたので放送直後にメールすると、 すぐに
電話がかかってきて、柔らかく、それでいて激しいコトバをもらいました。
私は何の才能も持っていませんが、友人に恵まれる才能だけはあるようです。
【キラキラしたコトバ】に、ナミダが落ちそうになりました。
私はまだ蕾にすらなれていませんが、早く肩を並べて同じものを見たい…。
そんな事を葉巻の煙を見ながら強く思いました。
【幸福な食卓】
私の知人にイタリアでワインを造っている男性がいます。
彼のワイン造りにおける信条は、【妻の作る美味しい料理に合うためのワイン】。
その彼が育てたワインは、いまや世界中のテーブルで愛されています。
そしてそれは、この日本でも同じです。
関西で一番有名なイタリアンレストランが大阪にあります。
そこの総料理長も、そのワインを愛する人間の一人です。
そのシェフが、【そのワインに合わせる為だけの料理】を考え、遠い海の向こうに
いる彼にラブコールを送っていました。
「私は、あなたのワインのポテンシャルを、あなたの奥様以上に引き出す事が出来る」
プロとしてのプライドと、そのワインに対する愛情が溢れるセリフです。
しかし、彼の返事は、
「そんな料理が存在するはずはない。それに、君は妻の料理を食べた事がないだろう?」
というものでした。
それを聞いたシェフはお店をスタッフに任せ、すぐにイタリアへ訪ねて行きました。
アポイトメントも何もなく、ただ奥様の料理を御馳走になる為に。
陽気で情熱的なイタリア人はその熱い想いに惹かれ、今日、彼のお店にイタリアから
料理を食べにやって来ました。
自身が創り出した、最高のワインを手に。
そして、私も彼に招待されてその【幸福な食卓】に着く事が出来ました。
私の他にもワインのインポーターや、名の通ったお店の一線で活躍する有名ソムリエ。
この日の為に腕を振るった華道家や、上品な雰囲気で華を添える有名女優。
そして、その有名店はこのスペシャルな1日の為に、お店を臨時休業にして待ち構えて
いました。
ここに書くまでもありませんが、最高のマリアージュがそこにはありました。
申し訳ないですが、料理の内容や、ワインの品種などはここには残さないでおこうと
思います。
私が軽々しく【自分の気持ち】を残せるような、そんな出来事ではなかった気がするから
です。
それが、私が彼らに出来る唯一の敬意ではないかと思います。
ただ、これだけはここに残させて下さい。
【プロフェッショナルとしての熱い情熱と、経験のぶつかり合い】と、
【一人の人間として飲食を愛する気持ち】。
そして、
【最高に幸せな笑顔】がたくさんそこにはありました。
