細胞内液(さいぼうないえき、英: intracellular fluid)は、体液のうち細胞内に存在するものの総称です!。
動物種により異なるが、体重の30~40%程度を占め、細胞の種類によりその含有率は異なります。
細胞膜を介して物質交換を行っており、同一の細胞であっても活動状況によりその組成は異なる。
なお、細胞内液等における無機塩類の代表的な濃度は表のとおりである
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
にて
体重70Kgの男性の体液の内訳[1] 全水分量42ℓ 細胞外液14ℓ 血漿(血管内)2.8ℓ
間質液11.2ℓ
細胞内液28ℓ
なお、細胞内液等における無機塩類の代表的な濃度は表のとおりである[2][3]。
イオン 血漿等細胞外濃度(mMol/L) 細胞内濃度(mMol/L)
ナトリウム(Na+) 145 12
カリウム(K+) 4 140
マグネシウム(Mg2+) 1.5 0.8
カルシウム(Ca2+) 1.8 <0.0002
塩素(Cl-) 116 4
リン酸(HPO4 2-) 1 35
電解質とは?電気を帯びてものです!
人体での反応は~
人体の給水、血中のpHを制御するのに影響しており、また、神経と筋肉の活動にとって不可欠である。
筋組織と神経線維は両方とも、人体で電気的な組織と考えられている。筋肉と神経線維は細胞外体液と細胞内体液の間の電解質の活動によって動作する。電解質は、プラズマ半透膜にあるイオンチャネルと呼ばれる専用のタンパク質構造を経由して、細胞膜を出入りする。例えば、筋肉の収縮は、カルシウム、ナトリウム、カリウムの存在に依存している。こうした主要な電解質が適正なレベルでないと、筋肉は弱くなったり、極端な筋肉の収縮が起こることがある。
電解質バランスは経口、または緊急時にあっては電解質を含む輸液によって維持される。また、ホルモンによって調整されている。一般的には腎臓から余剰分を放出する。ヒトにおいては、電解質の恒常性(ホメオスタシス)は、抗利尿ホルモン、アルドステロン、および副甲状腺ホルモンといったホルモンによって調整されている。
脱水(熱中症)や水の過剰摂取(水中毒)のような、極端な電解質の不均衡が起こった場合、心臓や神経に合併症が起こることがあり、速やかに改善されないと医学的緊急事態になる。
電解質についてのスポーツドリンクで、こんなものが一般に言われてました!
栄養学的な重要性 [編集]
経口給水療法においては、運動、過剰な発汗、下痢、嘔吐または飢餓による脱水の後で、体内の水と電解質のレベルを補給するためにナトリウム塩とカリウム塩を含んだ電解液を用いる。こうした人に純水を与えるのは、液体レベルを回復するには最善手ではない。体細胞中の塩類を薄め、その化学的はたらきを妨げるからである。これは水中毒に至ることもある。
スポーツドリンクは、一般にエネルギーを補給する目的で大量の炭水化物が添加されている。こうした大衆向け飲み物は、栄養学的なニーズに合わせて、アイソトニック(浸透圧が血液のそれに近い)、ハイポトニック(浸透圧が低い)、およびハイパートニック(浸透圧が高い)といった種類がある。
スポーツドリンクは非常に大量の糖分を含んでいるため、子供が日常的に飲むことは推奨できない。むしろ、専用に調合された、市販の電解液が推奨される。 また、スポーツドリンクは下痢による体液損失を補うことにも適さない。スポーツドリンクの役割は、電解質の損失を予防することであって、既に発生した電解質の不均衡を回復するにはまったく不足なのである。主要な電解質イオンの補給のためには、医療用の給水パックが用いられる。歯科医は、スポーツドリンクを常用する人は、虫歯予防についての注意書きをよく読むべきであると推奨している。
電解液とスポーツドリンクは、適切な比率の砂糖、塩、および水を使って、家庭で調合することもできる。
金福がさんが、口をすっぱくしてイオンやカリウムを言う理由
水の飲み過ぎ [編集]
またこれと前後して、ダムやプラントの建設現場で炎天下で作業していた作業員が相次いで倒れる問題が発生している。労働の現場では、作業員達は脱水症状を防ぐため、自由に水を飲むことが許されていたはずであるにもかかわらず、このような事故が発生したわけで、調査と研究が行われることになった。これによって、暑さから水を飲み過ぎ、体内の塩分濃度が薄まった上に尿としても体外に排出されてしまったことで、体内のナトリウムイオンとカリウムイオン等の電解質バランスが崩れてしまうという人体のメカニズムが明らかにされた。
この問題に対して、医者は塩の錠剤を支給し、作業員達は水を一定量飲む毎に塩の錠剤を服用することで、事態の収拾を見ることになった(実は製鉄所やボイラー室など、高温の場所で働く労働者の間では、かなり昔から水分と一緒に塩分を摂ることの必要性が、経験上から知られていた)。
生化学の分野で、次第に全身の細胞が持つ、浸透圧やイオンチャネル、イオンポンプの働きが解明されると、一般にも広く「バランスが大事」という思想が広がり、そこからスポーツ時や炎天下での水分補給と並んで、イオンバランスの問題や、ミネラル補給の重要性が認識されるようになった。 しかし上のように、未だに競技場での飲料が禁止されているなどの矛盾が生じている。
マグネシウムについて
薬理作用 [編集]
マグネシウム欠乏症の治療と予防に用いられるほか、乳酸が溜まった状況下で、足のつり(こむら返り)等の緩和に有効性が示唆されている。
マグネシウムは生体に必要不可欠な成分である反面、マグネシウムが豆乳を豆腐に固化することに見られるように高濃度のマグネシウムイオンはタンパク質を固化する性質を有する。 マグネシウムの吸収機構は解明されていないが[6][要高次出典]、腸管からのマグネシウムの吸収率は、マグネシウム摂取量が多ければ吸収率が低下し、摂取量が少なければ吸収率は高くなる[7]。腸管から吸収されなければ、マグネシウムイオン濃度の高まりにより腸管内での浸透圧が高まることになる。このためマグネシウムの過剰摂取で下痢を起こす。この作用を利用し、クエン酸マグネシウムなどは大腸検査のときの下剤として使われる。また、便秘の不快症状を緩和する目的の下剤として酸化マグネシウム(通称カマ)が投与される場合がある。弱い塩基である酸化マグネシウムや水酸化マグネシウムは、胃酸中和のために胃腸薬に配合される。食品では、豆腐や天然塩などに含まれるにがりからマグネシウムが微量に摂取される。
過剰摂取により高マグネシウム血症を引き起こす。重篤な腎不全患者における大量摂取は非常に危険。心ブロック患者には静脈注射が禁忌[8]。なお、近年のダイエットブームにより、にがりの過剰摂取で死亡した事例もあるので、安易な過剰摂取は厳に慎むべきである。マグネシウムの急性毒性は、塩化マグネシウムとして、マウス経口 LD50は4700 mg/kg、ラット経口 LD50は2800 mg/kgである[9][要高次出典]。このラットのデータを70 kgのヒトに当てはめれば約200 gの塩化マグネシウムを一時に摂取すれば50 %の確率で死に至ることに相当する。
なお、1999年の「第6次改定日本人の栄養所要量について」によると、マグネシウムの所要量は約200~320 mg/日、マグネシウムの許容上限摂取量は約700 mg/日、である[10]。
また、マグネシウム摂取量が多いグループの男性の大腸癌リスクが低い[11]、との報告がある。
糖尿病との関連性 [編集]
平成22年国民健康・栄養調査によれば、日本人成人(30~49歳男性)の推定摂取量は240~244mg/日とされ、WHO推奨量である420mg/日より不足している[12]。慢性的な摂取不足は、脂肪細胞から分泌される分泌蛋白アディポネクチンの低下を招き、高感度CRPやIL-6の上昇に関連しており、2型糖尿病発症リスクを上昇させている[13]。
うつ病との関連性 [編集]
マグネシウム欠乏下では興奮性グルタミン酸神経のNMDA受容体の抑えが効かなくなり、[14]その神経毒性によりうつ病が引き起こされているのではないかという仮説がある。NMRを用いた計測では治療抵抗性うつ病で自殺企図あるいは自殺未遂経験のある患者では脳脊髄液中のマグネシウム量が低いこと。抗うつ薬は脳内マグネシウム量を増やす作用があること。2008年の糖尿性うつ病患者へのマグネシウム投与で成果をあげている[15] ことなどから、治療抵抗性うつ病患者に限らずマグネシウムの処方は有益であるとする報告がある。[16] また、magnesium glycinate または magnesium taurinate の投与によりおよそ1週間程度の短期での症状改善の報告がある。 [17]
免疫系との関連性 [編集]
閉経後の女性に関するコホート研究において、さまざまな変数を調整後のマグネシウムの摂取量と炎症に関係するバイオマーカーの数値とが反比例するとの報告がある。[18] すなわち、マグネシウムの摂取量が多いほど体内の炎症反応が少ないことを示している。
カルシウムについて
生化学 [編集]
カルシウムは真核細胞生物にとって必須元素であり、植物にとっても肥料として必要である。
生理作用 [編集]
人体の構成成分としてのカルシウムは、成人男性の場合で約1 kgを占める。主に骨や歯としてヒドロキシアパタイト Ca5(PO4)3(OH) の形で存在する。
生体内のカルシウムは、遊離型・タンパク質結合型・沈着型で存在する。ヒトをはじめとする脊椎動物では、主に骨質として大量の沈着型がストックされているが、細胞内のカルシウムイオンは外より極端に濃度が低く、その差は3桁に達する。同様の濃度差はカリウムとナトリウムでも見られるが、カルシウムでは細胞内濃度が厳密に保たれている。これは、真核細胞内の情報伝達を担うカルシウムシグナリングのためと考えられていて、細胞膜にカルシウムイオンを排出するカルシウムチャネルが備えられている。
筋肉細胞では、収縮に関わるタンパク質(トロポニン)に結合することが不可欠である[10]。カルシウムイオンは細胞内液には殆ど存在せず、細胞外からのカルシウムイオンの流入や、細胞内の小胞体に蓄えられたカルシウムイオンの放出は、様々なシグナルとしての生理的機能がある。
植物細胞では、有機酸の対イオンとなるなど物質代謝に関わっているため動物細胞より多く必要とし、肥料の三要素に次いで4番目に必須となっている。
薬理作用 [編集]
カルシウムは便や尿として体外に排泄されるため、これを補う最低必要摂取量として、日本の厚生労働省は1日に700mg(骨粗鬆症予防には800 mgを推奨)をあげている[11]。
いくつかの症状に対し、医薬品として処方されることがある。定番となっている胃の制酸薬以外にも、カルシウム欠乏による筋肉の痙攣、くる病、骨軟化症、低カルシウム血症、骨粗鬆症の治療に、主に経口摂取で用いるほか、血液中のリン酸濃度を抑制したい場合に用いる。また、栄養補助食品も広く販売されており、病気治療で食事制限中だったり、重度の骨粗鬆症で大量摂取したいとき、食事量が落ちた高齢者などで効果が期待できる。
健常者では体液内濃度は平衡に保たれ、妊娠期の女性も食物からの吸収能力が自然に増すため、偏った食生活でなければ追加摂取は必要ない[12]。一方、過剰摂取は高カルシウム血症や腎結石、ミルクアルカリ症候群の原因となるため、一日摂取許容量上限として2300 mgが示されている。
俗説に、カルシウムが不足すると血液中の濃度が低下し、イライラなど精神不安定の原因になるとされる。しかし血液中の量は約0.5 g(成人男性の場合。濃度10mg/dL、血液量5kgとして)とわずかで、人体の成分として不足する事はなく、イライラの原因候補は無数に存在する。もし血中濃度が正常範囲を外れているならば、骨からの出し入れ量を調節する副甲状腺機能の異常などが疑われる[13]。
疫学 [編集]
カルシウムは必須元素として以上の効果を期待され、幾つもの疫学調査が行われている。
有効性ありと判定された例[14]
低カルシウム血症
くる病・骨軟化症
制酸剤
おそらく効果有りと判定された例
閉経前後の骨量減少
胎児の骨成長・骨密度増加(註:リバウンドを含め、出生後の追跡調査例見つからず)
上皮小体亢進症(慢性腎機能障害患者)
可能性有りと判定された例
骨粗鬆症、骨密度減少(ステロイドの長期間服用者でビタミンD併用時)
高齢者における歯の損失
歯へのフッ素の過剰沈着(小児でビタミンC・D併用)
虚血性発作
血圧減少(腎疾患末期)
高血圧、子癇前症での血圧減少(カルシウム摂取不足の妊婦)
直腸上皮の異常増殖、下痢(腸管バイパス手術を受けた人)
妊娠中のこむらがえり
骨粗鬆症診療ガイドラインでは、カルシウムのサプリメントの摂取は骨密度を2 %増やすが骨折率には変化がないので、すすめられる根拠がない(グレードC)に分類される[15]。
加齢による骨の減少を遅くする効果 ハーバード大学の公衆疫学部によれば、十分なカルシウムを摂取することで効果があるが、乳製品がもっとも良い選択かは明らかではないとする。乳製品以外のカルシウムの摂取源として コラード、チンゲンサイ、豆乳、ベイクドビーンズ が挙げられている[16]。
ビタミンDは、小腸の腸細胞の柔もうを通じてカルシウムを吸収する際にカルシウム結合タンパクの量を増加させるカルシウム吸収の要因として重要である。ビタミンDは、腎臓において尿からカルシウムが損失することを抑制する[17]。
癌との関わり [編集]
2つの無作為化比較試験[18][19]の国際コクラン共同計画によるメタ分析[20]によると、カルシウムは大腸腺腫性ポリープをある程度抑制し得るかもしれないことが発見された。
最近の研究結果は矛盾したものであるが、1つはビタミンDの抗癌効果について肯定的なものであり(Lappeほか)、癌のリスクに対してカルシウムのみから独立した肯定的作用を行っているとしたものである(以下の2番目の研究を参照のこと)[21]。
ある無作為化比較試験は、1000 mgのカルシウム成分と400 IUのビタミンD3は大腸癌に何も効果を示さなかった[22]。
ある無作為化比較試験は、1400-1500 mgのカルシウムサプリメントと1100 IUのビタミンD3が塊状の癌の相対的リスクを0.402まで低下させることを示した[23]。
ある疫学的研究では、高容量のカルシウムとビタミンDの摂取は更年期前の乳癌の発生リスクを低めていることが発見された[24]。
日本の国立がん研究センターが4万3000人を追跡した大規模調査では、乳製品の摂取が前立腺癌のリスクを上げることを示し、カルシウムや飽和脂肪酸の摂取が前立腺癌のリスクをやや上げることを示した[25]。
体液と細胞内液
ナトリウムと塩素は血液・リンパ・組織液などの体液の主成分で、他にマグネシウム、カルシウム、カリウムなどのいろいろなミネラルが体液にイオンとして溶けており、細胞の周囲を満たしています。これらのミネラルの濃度は細胞が正常に活動するための範囲があり、身体は腎臓で余分なミネラルを除去したり、排泄する水分量を調節して体液のミネラル成分の濃度を一定に保つしくみが備わっています。
ヒトの体液はちょうど海水を薄めたようなミネラルの組成になっています。主成分は食塩(塩化ナトリウム)が水に溶けた成分即ちナトリウムイオンと塩素イオンで、他にマグネシウムイオン、カルシウムイオン、カリウムイオンなどが存在します。最初の生命は海の中で生まれた単細胞生物(源核生物)だといわれています。体液の成分が海水に似ているのは、生命の進化の過程で海水の環境をそのまま体内に取り込んだものと考えられています。脊椎動物においては、最初の魚類が誕生した今から約5.5億年前の海水組成の体液を持ったまま、哺乳類まで進化したと考えられています。当時の海水の塩分濃度は現在の海水の塩分濃度よりも低く体液と同等だそうです。
体内で体液の塩分やその他のミネラルの濃度は主に腎臓の働きで厳密に調整されています。これらの濃度が少しでも変化すると直ちに生命維持が困難な状況に陥ることになります。
元素 海水(g/l) 体液(g/l)
ナトリウム(Na) 11 3.3
カリウム(K) 0.4 0.2
カルシウム(Ca) 0.4 0.1
マグネシウム(Mg) 1.3 0.15
塩素(Cl) 20 3.7
体内ではナトリウムイオンは細胞外液(体液・血液)に多く、細胞内液に少なく、逆にカリウムイオンは細胞外液(体液・血液)に少なく、細胞内液に多く存在します。
ナトリウムイオンとカリウムイオンの細胞内外における濃度は以下の様になります(1リットル当たりの重量(グラム))。
イオン 細胞内液(g/l) 細胞外液(g/l)
ナトリウムイオン 0.3 3.3
カリウムイオン 5.5 0.2
ナトリウムイオンとカリウムイオンの働き
ナトリウムイオンとカリウムイオンは相補的に作用して以下のような働きを担います。
細胞膜の浸透圧の維持
細胞の大きさ、機能を維持します。カリウムイオン、ナトリウムイオンなどのイオンがないと細胞はその形態を維持することはできません。
酸塩基平衡の調節
体内のpH※2を弱アリカリ性に維持し組織の正常に機能させます。pHとは酸性、アルカリ性の度合いを示す数値で、体液のpHは一定値7.35~7.45の弱アルカリ性に保たれています。この範囲を超えると体内の組織の活動に大きな支障が出ます。ナトリウムイオン、塩素イオンなどのイオンは、体液のphを調節して一定に保つ働きがあります。
神経伝達に関与
神経細胞の外部のナトリウムイオンと内部のカリウムイオンの両者の働きにより電流が生じ、刺激が伝達されます。細胞膜内外のナトリウムイオンとカリウムイオンにより膜電位が生じ、刺激により活動電位が発生し刺激が伝達されます。
筋肉の収縮に関与
筋収縮はナトリウムイオン、カリウムイオンの筋肉細胞への作用により開始されます筋収縮は神経伝達物質であるアセチルコリンが、筋肉細胞と神経末端の間にあるシナプス間隙に放出され、筋肉細胞がアセチルコリンを受け取ると、ナトリウムイオンとカリウムイオンによる電位変化が発生し、ナトリウムイオンチャネルが開き、ナトリウムイオンが流れ込みます。すると筋活動電位が発生し、筋肉が収縮します。
細胞の栄養分の吸収に関与
ブドウ糖、アミノ酸などの栄養素はナトリウムが細胞内に流入するエネルギーを利用して、細胞が吸収することができます。細胞の内外でナトリウムイオンとカリウムイオンの濃度が大きく違うので、細胞はアミノ酸やグルコースなどの栄養素を細胞内に取り込むできます。例えば、細胞外から細胞内へ流入しようとするナトリウムイオンの力が細胞膜上のタンパク質で出来たポンプの駆動力となってこれらの栄養素が細胞内に取り込まれます。このようにナトリウムイオンとカリウムイオンは細胞膜を境に逆向き濃度勾配を作っています。これはダムに蓄えられた水のようにエネルギーが蓄えられているということになります。
ナトリウム-カリウムイオンポンプ
細胞が正常に機能する為には、細胞内外のカリウムイオンとナトリウムイオンの濃度は一定に保たれる必要があります。しかし、ナトリウムイオンは濃度の高い細胞外(体液)から細胞膜のナトリウムチャネルを通って濃度の低い細部内に流入し、カリウムイオンは逆に濃度の高い細胞内から細胞膜のカリウムチャネルを通って濃度の低い細胞外へ流出します。イオンチャネルとは細胞膜に存在するタンパク質(膜タンパク質)の一種で物質を選択的に細胞内外に出し入れします。ナトリウムイオンチャネルはナトリウムイオンを細胞内に取り込み、カリウムイオンチャネルはカリウムイオンを細胞外に放出します。
このためナトリウム-カリウムポンプという調節機能があり、細胞外からカリウムイオンを取り込むと同時にナトリウムイオンを細胞外へと排出してそれぞれの濃度が細胞内外で一定に保たれます。
ナトリウム-カリウムポンプはATPによりエネルギーが供給され駆動します。似たようなしくみとして細胞内から細胞外へカルシウムをくみ出すカルシウムイオンポンプがあります。このようにミネラルイオンを細胞内外で一定の濃度に保つしくみをイオンポンプといい、身体全体で全ATPの25%も使用するといわれています。
腎機能が低下したり、ナトリウムとカリウムの摂取バランスが大きく崩れるとナリウム-カリウムポンプの働きだけでは、細胞内外のナトリウムとカリウムの濃度が一定に保てません。身体は他の方法で一定に保とうとします。例えばナトリウムイオンが細胞内に溜まり過ぎると濃度を一定に保つために細胞が膨張し細胞浮腫(むくみ)や高血圧などを引き起こしたりします。
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参考資料
・からだの働きからみる代謝の栄養学 田川 邦夫 (著)
・「ハーパー・生化学」Robert K. Murry (著), Peter A. Mayes (著), Daryl K. Granner (著), Victor W. Rodwell (著), 上代 淑人 (翻訳)
・「生化学辞典」 井上 圭三 (編集), 鈴木 紘一 (編集), 豊島 聡 (編集), 星 元紀 (編集), 大島 泰郎 (編集), 脊山 洋右 (編集), 畠中 寛 (編集), 渡辺 公綱 (編集), 今堀 和友, 山川 民夫
動物種により異なるが、体重の30~40%程度を占め、細胞の種類によりその含有率は異なります。
細胞膜を介して物質交換を行っており、同一の細胞であっても活動状況によりその組成は異なる。
なお、細胞内液等における無機塩類の代表的な濃度は表のとおりである
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
にて
体重70Kgの男性の体液の内訳[1] 全水分量42ℓ 細胞外液14ℓ 血漿(血管内)2.8ℓ
間質液11.2ℓ
細胞内液28ℓ
なお、細胞内液等における無機塩類の代表的な濃度は表のとおりである[2][3]。
イオン 血漿等細胞外濃度(mMol/L) 細胞内濃度(mMol/L)
ナトリウム(Na+) 145 12
カリウム(K+) 4 140
マグネシウム(Mg2+) 1.5 0.8
カルシウム(Ca2+) 1.8 <0.0002
塩素(Cl-) 116 4
リン酸(HPO4 2-) 1 35
電解質とは?電気を帯びてものです!
人体での反応は~
人体の給水、血中のpHを制御するのに影響しており、また、神経と筋肉の活動にとって不可欠である。
筋組織と神経線維は両方とも、人体で電気的な組織と考えられている。筋肉と神経線維は細胞外体液と細胞内体液の間の電解質の活動によって動作する。電解質は、プラズマ半透膜にあるイオンチャネルと呼ばれる専用のタンパク質構造を経由して、細胞膜を出入りする。例えば、筋肉の収縮は、カルシウム、ナトリウム、カリウムの存在に依存している。こうした主要な電解質が適正なレベルでないと、筋肉は弱くなったり、極端な筋肉の収縮が起こることがある。
電解質バランスは経口、または緊急時にあっては電解質を含む輸液によって維持される。また、ホルモンによって調整されている。一般的には腎臓から余剰分を放出する。ヒトにおいては、電解質の恒常性(ホメオスタシス)は、抗利尿ホルモン、アルドステロン、および副甲状腺ホルモンといったホルモンによって調整されている。
脱水(熱中症)や水の過剰摂取(水中毒)のような、極端な電解質の不均衡が起こった場合、心臓や神経に合併症が起こることがあり、速やかに改善されないと医学的緊急事態になる。
電解質についてのスポーツドリンクで、こんなものが一般に言われてました!
栄養学的な重要性 [編集]
経口給水療法においては、運動、過剰な発汗、下痢、嘔吐または飢餓による脱水の後で、体内の水と電解質のレベルを補給するためにナトリウム塩とカリウム塩を含んだ電解液を用いる。こうした人に純水を与えるのは、液体レベルを回復するには最善手ではない。体細胞中の塩類を薄め、その化学的はたらきを妨げるからである。これは水中毒に至ることもある。
スポーツドリンクは、一般にエネルギーを補給する目的で大量の炭水化物が添加されている。こうした大衆向け飲み物は、栄養学的なニーズに合わせて、アイソトニック(浸透圧が血液のそれに近い)、ハイポトニック(浸透圧が低い)、およびハイパートニック(浸透圧が高い)といった種類がある。
スポーツドリンクは非常に大量の糖分を含んでいるため、子供が日常的に飲むことは推奨できない。むしろ、専用に調合された、市販の電解液が推奨される。 また、スポーツドリンクは下痢による体液損失を補うことにも適さない。スポーツドリンクの役割は、電解質の損失を予防することであって、既に発生した電解質の不均衡を回復するにはまったく不足なのである。主要な電解質イオンの補給のためには、医療用の給水パックが用いられる。歯科医は、スポーツドリンクを常用する人は、虫歯予防についての注意書きをよく読むべきであると推奨している。
電解液とスポーツドリンクは、適切な比率の砂糖、塩、および水を使って、家庭で調合することもできる。
金福がさんが、口をすっぱくしてイオンやカリウムを言う理由
水の飲み過ぎ [編集]
またこれと前後して、ダムやプラントの建設現場で炎天下で作業していた作業員が相次いで倒れる問題が発生している。労働の現場では、作業員達は脱水症状を防ぐため、自由に水を飲むことが許されていたはずであるにもかかわらず、このような事故が発生したわけで、調査と研究が行われることになった。これによって、暑さから水を飲み過ぎ、体内の塩分濃度が薄まった上に尿としても体外に排出されてしまったことで、体内のナトリウムイオンとカリウムイオン等の電解質バランスが崩れてしまうという人体のメカニズムが明らかにされた。
この問題に対して、医者は塩の錠剤を支給し、作業員達は水を一定量飲む毎に塩の錠剤を服用することで、事態の収拾を見ることになった(実は製鉄所やボイラー室など、高温の場所で働く労働者の間では、かなり昔から水分と一緒に塩分を摂ることの必要性が、経験上から知られていた)。
生化学の分野で、次第に全身の細胞が持つ、浸透圧やイオンチャネル、イオンポンプの働きが解明されると、一般にも広く「バランスが大事」という思想が広がり、そこからスポーツ時や炎天下での水分補給と並んで、イオンバランスの問題や、ミネラル補給の重要性が認識されるようになった。 しかし上のように、未だに競技場での飲料が禁止されているなどの矛盾が生じている。
マグネシウムについて
薬理作用 [編集]
マグネシウム欠乏症の治療と予防に用いられるほか、乳酸が溜まった状況下で、足のつり(こむら返り)等の緩和に有効性が示唆されている。
マグネシウムは生体に必要不可欠な成分である反面、マグネシウムが豆乳を豆腐に固化することに見られるように高濃度のマグネシウムイオンはタンパク質を固化する性質を有する。 マグネシウムの吸収機構は解明されていないが[6][要高次出典]、腸管からのマグネシウムの吸収率は、マグネシウム摂取量が多ければ吸収率が低下し、摂取量が少なければ吸収率は高くなる[7]。腸管から吸収されなければ、マグネシウムイオン濃度の高まりにより腸管内での浸透圧が高まることになる。このためマグネシウムの過剰摂取で下痢を起こす。この作用を利用し、クエン酸マグネシウムなどは大腸検査のときの下剤として使われる。また、便秘の不快症状を緩和する目的の下剤として酸化マグネシウム(通称カマ)が投与される場合がある。弱い塩基である酸化マグネシウムや水酸化マグネシウムは、胃酸中和のために胃腸薬に配合される。食品では、豆腐や天然塩などに含まれるにがりからマグネシウムが微量に摂取される。
過剰摂取により高マグネシウム血症を引き起こす。重篤な腎不全患者における大量摂取は非常に危険。心ブロック患者には静脈注射が禁忌[8]。なお、近年のダイエットブームにより、にがりの過剰摂取で死亡した事例もあるので、安易な過剰摂取は厳に慎むべきである。マグネシウムの急性毒性は、塩化マグネシウムとして、マウス経口 LD50は4700 mg/kg、ラット経口 LD50は2800 mg/kgである[9][要高次出典]。このラットのデータを70 kgのヒトに当てはめれば約200 gの塩化マグネシウムを一時に摂取すれば50 %の確率で死に至ることに相当する。
なお、1999年の「第6次改定日本人の栄養所要量について」によると、マグネシウムの所要量は約200~320 mg/日、マグネシウムの許容上限摂取量は約700 mg/日、である[10]。
また、マグネシウム摂取量が多いグループの男性の大腸癌リスクが低い[11]、との報告がある。
糖尿病との関連性 [編集]
平成22年国民健康・栄養調査によれば、日本人成人(30~49歳男性)の推定摂取量は240~244mg/日とされ、WHO推奨量である420mg/日より不足している[12]。慢性的な摂取不足は、脂肪細胞から分泌される分泌蛋白アディポネクチンの低下を招き、高感度CRPやIL-6の上昇に関連しており、2型糖尿病発症リスクを上昇させている[13]。
うつ病との関連性 [編集]
マグネシウム欠乏下では興奮性グルタミン酸神経のNMDA受容体の抑えが効かなくなり、[14]その神経毒性によりうつ病が引き起こされているのではないかという仮説がある。NMRを用いた計測では治療抵抗性うつ病で自殺企図あるいは自殺未遂経験のある患者では脳脊髄液中のマグネシウム量が低いこと。抗うつ薬は脳内マグネシウム量を増やす作用があること。2008年の糖尿性うつ病患者へのマグネシウム投与で成果をあげている[15] ことなどから、治療抵抗性うつ病患者に限らずマグネシウムの処方は有益であるとする報告がある。[16] また、magnesium glycinate または magnesium taurinate の投与によりおよそ1週間程度の短期での症状改善の報告がある。 [17]
免疫系との関連性 [編集]
閉経後の女性に関するコホート研究において、さまざまな変数を調整後のマグネシウムの摂取量と炎症に関係するバイオマーカーの数値とが反比例するとの報告がある。[18] すなわち、マグネシウムの摂取量が多いほど体内の炎症反応が少ないことを示している。
カルシウムについて
生化学 [編集]
カルシウムは真核細胞生物にとって必須元素であり、植物にとっても肥料として必要である。
生理作用 [編集]
人体の構成成分としてのカルシウムは、成人男性の場合で約1 kgを占める。主に骨や歯としてヒドロキシアパタイト Ca5(PO4)3(OH) の形で存在する。
生体内のカルシウムは、遊離型・タンパク質結合型・沈着型で存在する。ヒトをはじめとする脊椎動物では、主に骨質として大量の沈着型がストックされているが、細胞内のカルシウムイオンは外より極端に濃度が低く、その差は3桁に達する。同様の濃度差はカリウムとナトリウムでも見られるが、カルシウムでは細胞内濃度が厳密に保たれている。これは、真核細胞内の情報伝達を担うカルシウムシグナリングのためと考えられていて、細胞膜にカルシウムイオンを排出するカルシウムチャネルが備えられている。
筋肉細胞では、収縮に関わるタンパク質(トロポニン)に結合することが不可欠である[10]。カルシウムイオンは細胞内液には殆ど存在せず、細胞外からのカルシウムイオンの流入や、細胞内の小胞体に蓄えられたカルシウムイオンの放出は、様々なシグナルとしての生理的機能がある。
植物細胞では、有機酸の対イオンとなるなど物質代謝に関わっているため動物細胞より多く必要とし、肥料の三要素に次いで4番目に必須となっている。
薬理作用 [編集]
カルシウムは便や尿として体外に排泄されるため、これを補う最低必要摂取量として、日本の厚生労働省は1日に700mg(骨粗鬆症予防には800 mgを推奨)をあげている[11]。
いくつかの症状に対し、医薬品として処方されることがある。定番となっている胃の制酸薬以外にも、カルシウム欠乏による筋肉の痙攣、くる病、骨軟化症、低カルシウム血症、骨粗鬆症の治療に、主に経口摂取で用いるほか、血液中のリン酸濃度を抑制したい場合に用いる。また、栄養補助食品も広く販売されており、病気治療で食事制限中だったり、重度の骨粗鬆症で大量摂取したいとき、食事量が落ちた高齢者などで効果が期待できる。
健常者では体液内濃度は平衡に保たれ、妊娠期の女性も食物からの吸収能力が自然に増すため、偏った食生活でなければ追加摂取は必要ない[12]。一方、過剰摂取は高カルシウム血症や腎結石、ミルクアルカリ症候群の原因となるため、一日摂取許容量上限として2300 mgが示されている。
俗説に、カルシウムが不足すると血液中の濃度が低下し、イライラなど精神不安定の原因になるとされる。しかし血液中の量は約0.5 g(成人男性の場合。濃度10mg/dL、血液量5kgとして)とわずかで、人体の成分として不足する事はなく、イライラの原因候補は無数に存在する。もし血中濃度が正常範囲を外れているならば、骨からの出し入れ量を調節する副甲状腺機能の異常などが疑われる[13]。
疫学 [編集]
カルシウムは必須元素として以上の効果を期待され、幾つもの疫学調査が行われている。
有効性ありと判定された例[14]
低カルシウム血症
くる病・骨軟化症
制酸剤
おそらく効果有りと判定された例
閉経前後の骨量減少
胎児の骨成長・骨密度増加(註:リバウンドを含め、出生後の追跡調査例見つからず)
上皮小体亢進症(慢性腎機能障害患者)
可能性有りと判定された例
骨粗鬆症、骨密度減少(ステロイドの長期間服用者でビタミンD併用時)
高齢者における歯の損失
歯へのフッ素の過剰沈着(小児でビタミンC・D併用)
虚血性発作
血圧減少(腎疾患末期)
高血圧、子癇前症での血圧減少(カルシウム摂取不足の妊婦)
直腸上皮の異常増殖、下痢(腸管バイパス手術を受けた人)
妊娠中のこむらがえり
骨粗鬆症診療ガイドラインでは、カルシウムのサプリメントの摂取は骨密度を2 %増やすが骨折率には変化がないので、すすめられる根拠がない(グレードC)に分類される[15]。
加齢による骨の減少を遅くする効果 ハーバード大学の公衆疫学部によれば、十分なカルシウムを摂取することで効果があるが、乳製品がもっとも良い選択かは明らかではないとする。乳製品以外のカルシウムの摂取源として コラード、チンゲンサイ、豆乳、ベイクドビーンズ が挙げられている[16]。
ビタミンDは、小腸の腸細胞の柔もうを通じてカルシウムを吸収する際にカルシウム結合タンパクの量を増加させるカルシウム吸収の要因として重要である。ビタミンDは、腎臓において尿からカルシウムが損失することを抑制する[17]。
癌との関わり [編集]
2つの無作為化比較試験[18][19]の国際コクラン共同計画によるメタ分析[20]によると、カルシウムは大腸腺腫性ポリープをある程度抑制し得るかもしれないことが発見された。
最近の研究結果は矛盾したものであるが、1つはビタミンDの抗癌効果について肯定的なものであり(Lappeほか)、癌のリスクに対してカルシウムのみから独立した肯定的作用を行っているとしたものである(以下の2番目の研究を参照のこと)[21]。
ある無作為化比較試験は、1000 mgのカルシウム成分と400 IUのビタミンD3は大腸癌に何も効果を示さなかった[22]。
ある無作為化比較試験は、1400-1500 mgのカルシウムサプリメントと1100 IUのビタミンD3が塊状の癌の相対的リスクを0.402まで低下させることを示した[23]。
ある疫学的研究では、高容量のカルシウムとビタミンDの摂取は更年期前の乳癌の発生リスクを低めていることが発見された[24]。
日本の国立がん研究センターが4万3000人を追跡した大規模調査では、乳製品の摂取が前立腺癌のリスクを上げることを示し、カルシウムや飽和脂肪酸の摂取が前立腺癌のリスクをやや上げることを示した[25]。
体液と細胞内液
ナトリウムと塩素は血液・リンパ・組織液などの体液の主成分で、他にマグネシウム、カルシウム、カリウムなどのいろいろなミネラルが体液にイオンとして溶けており、細胞の周囲を満たしています。これらのミネラルの濃度は細胞が正常に活動するための範囲があり、身体は腎臓で余分なミネラルを除去したり、排泄する水分量を調節して体液のミネラル成分の濃度を一定に保つしくみが備わっています。
ヒトの体液はちょうど海水を薄めたようなミネラルの組成になっています。主成分は食塩(塩化ナトリウム)が水に溶けた成分即ちナトリウムイオンと塩素イオンで、他にマグネシウムイオン、カルシウムイオン、カリウムイオンなどが存在します。最初の生命は海の中で生まれた単細胞生物(源核生物)だといわれています。体液の成分が海水に似ているのは、生命の進化の過程で海水の環境をそのまま体内に取り込んだものと考えられています。脊椎動物においては、最初の魚類が誕生した今から約5.5億年前の海水組成の体液を持ったまま、哺乳類まで進化したと考えられています。当時の海水の塩分濃度は現在の海水の塩分濃度よりも低く体液と同等だそうです。
体内で体液の塩分やその他のミネラルの濃度は主に腎臓の働きで厳密に調整されています。これらの濃度が少しでも変化すると直ちに生命維持が困難な状況に陥ることになります。
元素 海水(g/l) 体液(g/l)
ナトリウム(Na) 11 3.3
カリウム(K) 0.4 0.2
カルシウム(Ca) 0.4 0.1
マグネシウム(Mg) 1.3 0.15
塩素(Cl) 20 3.7
体内ではナトリウムイオンは細胞外液(体液・血液)に多く、細胞内液に少なく、逆にカリウムイオンは細胞外液(体液・血液)に少なく、細胞内液に多く存在します。
ナトリウムイオンとカリウムイオンの細胞内外における濃度は以下の様になります(1リットル当たりの重量(グラム))。
イオン 細胞内液(g/l) 細胞外液(g/l)
ナトリウムイオン 0.3 3.3
カリウムイオン 5.5 0.2
ナトリウムイオンとカリウムイオンの働き
ナトリウムイオンとカリウムイオンは相補的に作用して以下のような働きを担います。
細胞膜の浸透圧の維持
細胞の大きさ、機能を維持します。カリウムイオン、ナトリウムイオンなどのイオンがないと細胞はその形態を維持することはできません。
酸塩基平衡の調節
体内のpH※2を弱アリカリ性に維持し組織の正常に機能させます。pHとは酸性、アルカリ性の度合いを示す数値で、体液のpHは一定値7.35~7.45の弱アルカリ性に保たれています。この範囲を超えると体内の組織の活動に大きな支障が出ます。ナトリウムイオン、塩素イオンなどのイオンは、体液のphを調節して一定に保つ働きがあります。
神経伝達に関与
神経細胞の外部のナトリウムイオンと内部のカリウムイオンの両者の働きにより電流が生じ、刺激が伝達されます。細胞膜内外のナトリウムイオンとカリウムイオンにより膜電位が生じ、刺激により活動電位が発生し刺激が伝達されます。
筋肉の収縮に関与
筋収縮はナトリウムイオン、カリウムイオンの筋肉細胞への作用により開始されます筋収縮は神経伝達物質であるアセチルコリンが、筋肉細胞と神経末端の間にあるシナプス間隙に放出され、筋肉細胞がアセチルコリンを受け取ると、ナトリウムイオンとカリウムイオンによる電位変化が発生し、ナトリウムイオンチャネルが開き、ナトリウムイオンが流れ込みます。すると筋活動電位が発生し、筋肉が収縮します。
細胞の栄養分の吸収に関与
ブドウ糖、アミノ酸などの栄養素はナトリウムが細胞内に流入するエネルギーを利用して、細胞が吸収することができます。細胞の内外でナトリウムイオンとカリウムイオンの濃度が大きく違うので、細胞はアミノ酸やグルコースなどの栄養素を細胞内に取り込むできます。例えば、細胞外から細胞内へ流入しようとするナトリウムイオンの力が細胞膜上のタンパク質で出来たポンプの駆動力となってこれらの栄養素が細胞内に取り込まれます。このようにナトリウムイオンとカリウムイオンは細胞膜を境に逆向き濃度勾配を作っています。これはダムに蓄えられた水のようにエネルギーが蓄えられているということになります。
ナトリウム-カリウムイオンポンプ
細胞が正常に機能する為には、細胞内外のカリウムイオンとナトリウムイオンの濃度は一定に保たれる必要があります。しかし、ナトリウムイオンは濃度の高い細胞外(体液)から細胞膜のナトリウムチャネルを通って濃度の低い細部内に流入し、カリウムイオンは逆に濃度の高い細胞内から細胞膜のカリウムチャネルを通って濃度の低い細胞外へ流出します。イオンチャネルとは細胞膜に存在するタンパク質(膜タンパク質)の一種で物質を選択的に細胞内外に出し入れします。ナトリウムイオンチャネルはナトリウムイオンを細胞内に取り込み、カリウムイオンチャネルはカリウムイオンを細胞外に放出します。
このためナトリウム-カリウムポンプという調節機能があり、細胞外からカリウムイオンを取り込むと同時にナトリウムイオンを細胞外へと排出してそれぞれの濃度が細胞内外で一定に保たれます。
ナトリウム-カリウムポンプはATPによりエネルギーが供給され駆動します。似たようなしくみとして細胞内から細胞外へカルシウムをくみ出すカルシウムイオンポンプがあります。このようにミネラルイオンを細胞内外で一定の濃度に保つしくみをイオンポンプといい、身体全体で全ATPの25%も使用するといわれています。
腎機能が低下したり、ナトリウムとカリウムの摂取バランスが大きく崩れるとナリウム-カリウムポンプの働きだけでは、細胞内外のナトリウムとカリウムの濃度が一定に保てません。身体は他の方法で一定に保とうとします。例えばナトリウムイオンが細胞内に溜まり過ぎると濃度を一定に保つために細胞が膨張し細胞浮腫(むくみ)や高血圧などを引き起こしたりします。
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参考資料
・からだの働きからみる代謝の栄養学 田川 邦夫 (著)
・「ハーパー・生化学」Robert K. Murry (著), Peter A. Mayes (著), Daryl K. Granner (著), Victor W. Rodwell (著), 上代 淑人 (翻訳)
・「生化学辞典」 井上 圭三 (編集), 鈴木 紘一 (編集), 豊島 聡 (編集), 星 元紀 (編集), 大島 泰郎 (編集), 脊山 洋右 (編集), 畠中 寛 (編集), 渡辺 公綱 (編集), 今堀 和友, 山川 民夫