ロードレーサーのバーテープの変遷 | CICLI LA BELLEZZAのブログ

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愛するヴィンテージ自転車たちとの生活

ハンドルバーテープは120年以上前に誕生しました。その後、色や素材、機能性などの点でさまざまな流行や進化を経て、今日に至っています。今回はヨーロッパのレースシーンの写真を見ながら、バーテープの変遷をたどっていきたいと思います。

 

(LE TOUR DE FRANCE)

ドロップハンドルが定着した1920年代には、ほぼ現在と変わらない形になっています。1970年代までの半世紀以上の間、バーテープの素材はコットンでした。

 

(Miroir du Cyclisme)

1950年代以前はカラー写真が非常に少なく、残念ながらどんな色だったのかは正確にはわかりません。カラー写真が残っているスター選手で言うと、コッピは白、バルタリは赤、ボベも赤のバーテープを使っていたようです。

 

(LE TOUR DE FRANCE)

さて、60年代のレースシーンの写真を見てみると、バーテープはカラフルで、赤、白、青が多いですね。どちらかというと赤が多数派のようです。

もっとも、これは選手個人の好みというより所属チームの方針でしょうから、そういった色を採用するチームが多かったということですね。フレームとのコーディネイトとか、レース中に観客の目を引くかっこよさも重視されたと思います。

 

(The fabulous world of cycling) 

ところが70年代になると、白が圧倒的に多くなります。青のバーテープを使うチームが少数あったものの、60年代に流行った赤のバーテープは、ほとんど見なくなってしまいました。

なぜ70年代になって、急に白がトレンドになったのか、理由は定かではありません。ただ、私の仮説は、自転車にうるさかったメルクスが白にこだわったからではないか?というものです。

もちろん、バーテープの色と自転車の性能はまったく関係ないのですが、白いバーテープで勝ちまくるスーパースターの眩しいオーラで、やはり白はかっこよくて強そうに見え、それまでの赤は時代遅れに見えてきたのかもしれません。これは、あくまで何の根拠もない私の推測ですので、何かそのあたりの事情をご存知の方はご教示いただけるとうれしいです。

 

(LES GEANTS DU CYCLISME)

80年代に入っても、白が主流の傾向は続くのですが、大きな変化として、この時代に材質がコットンから合成樹脂製にシフトしていきます。最初は薄くてピカピカしたビニールのリボンで、滑りやすくてクッション性もなく、使いにくそうなものでしたが、やがて、現代の物に近い、しっかりした厚手の樹脂製のテープになり、丈夫で握り心地も良いため、コットン製に代わって主流になっていきました。

 

(LE TOUR DE FRANCE)

90年代になると、コルク製のバーテープが主流になり、色もカラフルで、柄やロゴが入ったものなど、斬新なデザインのものが次々と登場しました。コルク製バーテープは、ちょっと厚くてモコモコした感じがあるものの、ホールド性やクッション性など、多くの長所を持っており、この時代に一気に普及した感があります。エアロバイクやアルミフレームなど、自転車の形が大きく変わっていった時代に、コルク製バーテープの登場は、バーテープに大きな進化をもたらしました。

 

今世紀に入ってカーボンバイクの時代になると、コルク製から再び合成樹脂製が主流になってきました。もちろん、以前と同じ素材ではなく、握り心地も向上し、厚さや質感、色など、機能的にもデザイン的にも多様化していて、好みに合わせてチョイスすることができる時代になっています。最近のトレンドとしては、派手な柄物よりも落ち着いたデザインのものが流行りかなと感じていますがどうでしょうか。

 

バーテープは、人間の身体に直接触れるパーツでもあり、デザイン面では自転車の第一印象を決める大事なパーツでもあります。そのため、素材の進化や選手の嗜好、自転車のデザインなど、各時代でさまざまな影響を受けながら、今日まで進化を遂げてきました。

ヴィンテージ自転車マニアとしては、自転車の時代性の表現として、メカパーツのアッセンブルだけでなく、バーテープの色や素材に目を向けることも有効なのかなと思います。