1964年に行われた東京オリンピック自転車競技の写真集を入手しました。保存状態が良く、60年前に発行されたとは思えないほどの美品です。
この写真集は、横尾双輪館や長谷川自転車商会でちょっとだけ見たことがありますが、当時の競技用自転車を知る上で大変貴重な資料です。
東京オリンピック1964の自転車競技について、これまで私は、主に記録映画の映像から、選手達の乗る自転車について調べてきました。でもやはり、写真で見ると映画ではわからなかった所まで見えて来ます。
この写真集から得た詳しい情報については、別の機会に改めてお話しするとして、ここでは、いくつかのページを簡単にご紹介しましょう。
最初に登場するのはピスト競技です。ピスト競技は、オリンピックのために八王子市内に特設された屋外の自転車競技場で行われました。
一番左の選手は、1960~70年代にメルクスの盟友としてロード、ピスト両方で活躍したパトリック・セルキュです。セルキュは1000mタイムトライアルで金メダルを獲得しています。
東京オリンピックと言えば、外国人選手が皆チネリに乗っていて、その自転車を見た日本の自転車関係者がカルチャーショックを受けたという逸話が伝説的に語られています。
ロードレースについては未確認ですが、ピスト競技、特にタンデムにおいては、たしかにチネリが目立ちます。
これはイタリアチームですが、センタープルブレーキ全盛だった当時にユニヴァーサルのサイドプルを使っている選手がけっこういますね。一番手前の選手は、カンパのチェンホイールにサンプレのリアメカを使っています。こういう時代だったんですね。
こちらはフランスチームですが、さすがに全員マファック・レーサーを使っています。この写真ではわかりませんが、彼らがカンパを使っていたのかどうか興味のあるところです。
右から二人目が、2年後の1966年にツール・ド・フランスで優勝したリュシアン・エマールですね。
そして、アマチュア時代の超人エディ・メルクスを擁するベルギーチームです。
メルクスは東京五輪でも優勝候補でしたが、ゴール前の集団スプリントから抜け出せず、12位に終わりました。
右端のヴァルテル・ゴーデフロートも、その後プロで活躍した名選手で、この時、銅メダルを獲得しています。
スタートラインに並んだ選手達。右から二人目の帽子をかぶっているのがメルクスですね。
八王子市の多摩丘陵を走るプロトン。個々の自転車の仕様については、後でじっくり調べてみたいと思います。
メルクス(二人目)が乗っている自転車のブランドはスーペリアで、バーエンドコントロールとサイドプルブレーキを装着していました。
注目選手の顔ぶれ。
右から三人目がイタリアのスーパースター、フィリーチェ・ジモンディです。こうやって見ると、東京オリンピックには、すごい豪華メンバーが来日していたことがわかります。もちろん、この時はまだアマチュアだったのですが。
史上稀に見る大集団でのゴールを制して金メダルを獲得したのはイタリアのツァニンでした。
当時の写真技術の限界で、解像度が低くてハッキリ見えないところもありますが、この本に収められている写真をもとに、当時の自転車について新しい発見ができればいいなと思っています。
いずれにしても、この写真集は、私にとって宝の山であることは間違いありません。