ロン・キッチン ハンドブックに見る70年代のチネリのパーツ類 | CICLI LA BELLEZZAのブログ

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愛するヴィンテージ自転車たちとの生活

長年欲しいと思っていたロン・キッチン ハンドブックを今年のフリマで入手したので、ちょっとご紹介したいと思います。

 

ロン・キッチン ハンドブックは、イギリスで自転車用品の貿易・販売業を営んでいたロン・キッチン(Ron Kitching)が発行した総合サイクルパーツカタログの元祖ともいうべき本です。

発行年は1970年で、当時のさまざまなパーツやウェア類が、ダニエル・ルブールのイラスト入りで紹介されています。日本では見たことがないアイテムもあり、ながめているだけで楽しめる本です。

 

全体が8つのセクションに分かれていて、最初の6セクションが各種アイテムのカタログ、最後の2セクションは自転車に関するアドバイスとパーツ類の数値データになっています。

このように、カタログ以外の内容も充実しているところが『ハンドブック』という名前の理由でしょう。

 

セクション1は120ページほどあり、主要パーツメーカーがアルファベット順に掲載されています。なぜかカンパやサンプレ、マファックといったメーカーは掲載されていませんが、このあたりは何かビジネス上の事情があったのだろうと推測されます。

今回は、その中からチネリのページを見てみましょう。

 

全4ページのうち、最初のページは、おなじみのハンドルバーです。『新たに素晴らしい仕上げになった軽合金製』と書いてありますので、チネリのバーは1970年以前と以後で仕上げが違うのですね。

 

ロード用のバーは、63=カンピオーネ・デル・モンド(浅曲がり)、64=ジロ・デ・イタリア、65=クリテリウム(ここではモデル名がありません。)、66=カンピオーネ・デル・モンド(深曲がり)の4モデルのほか、16=鉄製のカンピオーネ・デル・モンドが紹介されています。

右のイラストはちょっと間違っているように見えますね。64となっているのは65のクリテリウムではないでしょうか?

 

ピスト用のバーは、14=ピスタのほか、18,19=マディソンというモデルが載っています。マディソンはピスタに比べて前方への曲がりが少ないようですが、18と19の違いはよくわかりません。

 

2ページ目はステムです。

Model 1=ロード用、Model 2=ピスト用、Model 3=スプリント用、Model 4=スライド式となっていて、スプリント用の方がピスト用より落ちる角度が急になっています。いずれも鉄製で、バッヂ付きとバッヂ無しがあると書いてあります。

最後に、新製品としてModel 1/Aが載っていて、軽合金製で7mmのアーレンキー締めと紹介されています。

 

3ページ目は、その他のパーツです。

最初に紹介されているのはBBで、リヴィエラ、コルサ、スーパーコルサの3種類があり、リヴィエラがスタンダードモデル、コルサは中空シャフトを使っていて、スーパーコルサは、さらに椀がニッケルメッキ仕上げになっています。

 

二番目はスーパーコルサという名称のクランクです。細身の鉄製で、5ピン、長さは6インチ3/4(170mm?)のみと書いてあります。ただ、このイラストを見ると5ピンではなく3ピンですね。

 

三番目はビニール製のバーエンドで、赤、白、青の三色があります。

 

四番目はジュニア用のハンドルバーとステムが一体化したセットで、ブレーキレバーの溶接ありモデルと無しモデルがあると書いてあります。

 

最後はヘッドセットで、BBと同じようにリヴィエラ、コルサ、スーパーコルサの3種類がありますが、細かい違いは書いてありません。

 

最後のページで大きく紹介されているのが、ビヴァレントというハブです。『インターチェンジャブル(交換可能)ハブ』と書いてありますが、簡単に言うと、前輪にも後輪にも使えるハブです。

通常、後輪のハブはフリーの厚み分だけ幅広くなっていてフリーをはめ込むネジが切ってあります。しかし、このハブは前後共通で、片方のサイドにリング状のギアが切ってあり、後輪に使う場合にはこのギアに専用のフリー(レジナ製)をはめて、エンド幅分だけロックナットを継ぎ足して使う仕組みになっています。

結局、このビヴァレント・ハブは普及しませんでしたが、このアイデアは現在のカセット式フリーの先駆けのように思われます。ビンディングペダルのM71もそうですが、チネリは時々、このような『時代が早すぎた』先駆的製品を出すのですね。

 

今回、これを読んでみて、私が知らなかったパーツもあり、パーツメーカーとしてのチネリの魅力を再発見することができました。機会があれば、また他のメーカーについてもご紹介したいと思います。