京都に来るなら…

鎌倉市山ノ内の東慶寺(とうけいじ)で、
このお寺の尼寺時代(~明治35年)の中興の祖である
「天秀尼(てんしゅうに)」をテーマにした特別展が、
初めて開かれています。

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天秀尼(慶長14(1609)年~正保2(1645)年)という女性について、
恐らく、ご存知ない方のほうが多いと思います。
しかし、彼女をとりまく人々を知れば、
きっと驚くことでしょう・・・。

彼女の父は、豊臣秀頼(ひでより)。
ということは、祖父は、天下統一した豊臣秀吉
そして、その正室は北政所(おね・ねねとも)、
側室は、淀殿(浅井長政と、
織田信長の妹であるお市の方との間に生まれた
「浅井三姉妹」の長女。幼名・茶々)。

天秀尼の父方を見るだけで、
豊臣、織田家のスター級の名前が並びます。

さらに、母方も豪華・・・と言いたい所ですが、
母は、豊臣秀頼の側室で、
成田氏五兵衛助直女と伝わっています。

しかし、秀頼の正室は、徳川家康の孫・千姫
千姫の母は、淀殿と同じ「浅井三姉妹」の末娘江(ごう)
大河ドラマ『江 姫たちの戦国』の主人公としてもご存知ですよね。

こんな戦国オールキャストの中、生まれ育った姫君が
天秀尼だったのです。

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↑境内は、いつの季節も花が美しい


しかし、何不自由ない子供時代は長くは続かず、
わずか7歳(8歳説もあり)で、
戦国最後の戦いである大坂の陣を体験し、
大坂城落城とともに過酷な運命が始まります。

戦火を逃れたものの、徳川家康に捕まり、
秀頼の正妻・千姫の助命嘆願により、命を救われたといいます。
一緒に逃れた兄弟・国松は、
もしもその後、また豊臣勢が旗揚げする際、
担ぎ上げられては困るということで、
幼い命を奪われました。

そして、天秀尼は、千姫の養女として、
遠く、鎌倉の東慶寺に尼僧として入ることになったのです。
それは、秀吉の血を絶やすことも意味していました。

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徳川勢に囲まれた大坂城で、
千姫のほかに、もうひとり、姫の行く末を案じた女性がいました。
それは、「浅井三姉妹」の次女・初(常高院 じょうこういん)でした。

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織田信長の妹・お市の方と、浅井長政の間に生まれた
「浅井三姉妹」とよばれる、
淀殿(茶々)、初、江
この三姉妹は、結婚して離ればなれになっても、
子供たちを介して、とても仲良くしているのが分かります。

淀殿の息子・秀頼が、
側室との間にこの天秀尼と国松をもうけた際、
関東の聞こえをはばかり、
つまり徳川家康の孫・千姫という正室がありながら、
先に、側室との間に子供をもうけてしまったことをはばかって、
なんと、淀殿の妹である初が、
天秀尼たちを預かっていた
という記録があるのです。

しかし、大坂の陣が始まり、
父・豊臣秀頼らと一緒にいるべきと、大坂城内に入り、
落城を迎えたとも言われています。

私は、かつて、浅井三姉妹の次女・初について
番組を作ったことがあり、
という女性が、大変慈悲深く、優しく、
ひとのために尽くす人であることを深く感じました。
そして、この初の優しさ、気遣い、慈悲深さは、
もしかすると、初が預かっていた間に、
幼い天秀尼に教えられたものではないかと感じたのです。


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↑境内には可憐な花が

初は、京極家に嫁ぎましたが、
残念ながら、自分の子には恵まれませんでした。
しかし、短い期間、姉・淀殿の孫にあたる天秀尼らを預かり、
戦火の大坂城へ届けたあたり、
また、秀頼の側室の子を預かる時点で、
徳川家康ににらまれる可能性もあるにもかかわらず、
それでもこの幼子を堂々と預かるあたり、
初の強さ、慈悲深さが伝わってきませんか?

きっと、そんなに触れた天秀尼だからこそ、
東慶寺に入山した後、
助けを求めて駆け込んでくる女性達を
強く、優しく受け止め、命懸けで守ることができたのではないかと
思えて仕方ないのです。

養母・千姫とのエピソードに隠れがちな
初との関係ですが、
ぜひ、そんな所も知っていただけると嬉しいです。

さて、天秀尼は30代で、生涯最大の危機が起こります。
それは、江戸幕府を巻き込む大事件。
女性の「駆け込み寺」を
彼女は守り通すことはできたのか・・・!?

自らの運命に立ち向かうだけでなく、
周りの人のためにも命懸けで戦う
戦国魂を受け継ぐ姫君・天秀尼

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ぜひ、この機会に鎌倉・東慶寺を訪れ、
『天秀尼展』をじっくりとご覧下さい。

天秀尼の和歌や千姫の手紙なども拝見でき、
また、境内にはひときわ大きな天秀尼の墓もあります。

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↑ 天秀尼のお墓

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↑ 静かな境内には多くの文化人も眠る

ちょうどこれから、花菖蒲やアジサイが美しいお寺です。
JR北鎌倉駅から徒歩4分です。

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東慶寺HPはこちら
『天秀尼展』

4月16日~7月7日(日)まで 
午前9時半~午後3時半まで
月曜休館
※5月19日(日)午後2~4時 記念講演会あり(要予約)
お話:三池純正氏