遠田潤子(※注:猫なし。長文になります) | 尻尾の先まで 猫に恋

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優しいシャムトラ♂、自己主張が激しめの三毛猫♀、卓球少年の中学生男子との日々です。猫のこと、子育て後半戦、映画と本、筋トレ、断捨離などについて書いていきます。
ねじめ正一さんの俳句「ビリビリっと 尻尾の先まで 猫の恋」
こういう世界観が好きです。

新しい作家さんに出会う喜び。

本好きの人に共通体験ではないでしょうか。

 

遠田潤子。NIKITAさんから教えていただきました。

タイトルを見ても分かるかと思いますが、言葉への意識が高い作家さんです。そして、読みやすい綺麗な文体で描かれる家族は苦難に襲われても前に進もうとします。家族って血のつながりだけじゃない。

 

『雪の鉄樹』

鉄樹とはソテツ。鉄の字から、金を失う木とも言われるそうですが、日本庭園にも使われる植物です。蘇鉄のある庭は南国風で庭にインパクトありますね。

主人公は庭師。冬の庭では「藁ぼっち」を被せて樹を寒さから守ります。この雪の日の鉄樹に寄り添うように物語が描かれます。

 

もうね、登場人物にまともな大人がほぼいない(笑) 強いて言えば、施主のおじいさん?

私の息子が遼平と同じくらいの年齢。「そうなのよ、この時期の子って正義感をこじらせるのよ。なのに、まだまだ甘えたなのよ」って共感しつつ読み見進む。「そうそう、男の子はかっこもつけたがるのよ」と分かり味深め。

 

「もっと気持ちを分かってあげたら良かった」

「あの時はこう言ったら良かった」

息子が予想外の行動をとると「自分の対応が悪かったんや」って自分を責めてしまうことがあって(でも、私はよっぽどじゃないと謝らないw)

 

もう一点。

愛情を与えられて育つと叩かれてもそんなに響かない。逆に愛情不足のまま成長した人は挫折や失敗に弱くなる。まぁ、なんとなく分かりますよね。「いつも完璧でいなくてはならない」と、愛されることに条件が付いている感じでしょうか。

 

では、この小説のこだわりの一つ。母性を知らずに育った男子について。これはどうなんでしょうか。遠田作品を読みながら、ぼちぼち考えてみたいと思います。

 

『ドライブインまほろば』

"まほろば"と言えば日本武尊(やまとたけるのみこと)

倭は国の真秀ろば 

畳なづく青垣 山籠れる 倭し 麗し

「やまとは国のまほろば」と『古事記』に出てきますが、美しい素晴らしい場所。

 

こちらは大阪が舞台(奈良じゃないのね)救いのない家庭で育った少年が出てきます。母親との関係をこじらせた女性の言葉が印象に残りました。

「親の干渉は布団に浸み込んだ毒のようなものだ。柔らかいけれど思い、最初はふかふかなのに、いつの間にか冷たく、硬くなる。気付いたときには不快でたまらない」

 

『銀花の蔵』

こちらは奈良が舞台。妖怪好きの私が”座敷童”というワードを見て棚に戻せるわけがない。

物語の冒頭に出てくる夾竹桃。花にも葉にも、根にも毒があり、周りの土壌まで毒性を帯びる食打つ。落ち葉や花がらにも毒があるので枯れてなお毒を持つという。綺麗なのに迷惑ばかりかける母親を主人公は「夾竹桃のようだ」と思っています。

 

醤油蔵を継いだ祖母と、自分の生き方を決める主人公。

 

子どもから親を見る目線で描かれる母親。

遠田潤子の物語の主人公は、問題をかかえつつもEQが高い。理不尽な仕打ちに対しても謝るんですが、謝られる人の気持ちを上手く描いてるのが印象に残ります。

 

「この人が悪いわけじゃない」と分かっているけど、許せない。自分が感情をコントロールできてないことも分かってる。そこで謝られたとき、謝罪を押しつけがましく感じて、身勝手に思える。とても鋭いです。

 

一方、子どもの心情描写については、遠田さん、甘いな。優しすぎる。そんなに理路整然と考えてないんですよ、彼らは(笑) 

 

さて、明日からは『紅蓮の雪』を読みます。

 

まとまりのない感想になってしまいましたが、自分が母親になって「子育てって難しいなぁ」って思うことが本当に多いです。

母親も人なんですよ。でも、相手にするのは自分とは別の人格を持った経験の浅い子どもで、迷いも多いです。

私は子育て中、育児本よりはこういう小説を読みたいな、と思います。

 

教えていただき有難うございました。

 

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