中学になって初めての英語の授業。


赤ら顔で大きな身体にメガネをかけた男性教師。

勿論教科書に沿って授業はするのだけれど、独特の教え方だった。


まず音読。コテコテのじゃばにーずイングリッシュ。だけど彼が目標としているのは文法で、これを学ばすして英語はありえん!の信条の持ち主。音読で詰まると、テストの点数からマイナス一点という珍しいシステム。なので皆んな必死で音読練習をしてくる。


あとは文法。全て図式にして、例えば、助動詞がある質問は△◽︎◯。つまり三角は助動詞、四角は主語、丸は動詞の原型と説明しながら例文をいくつもあげ、助動詞、主語、動詞に三角、四角、丸で囲んでいく。


これも復唱させる。”三角、四角、丸”と。

今から思えば、この音読、復唱こそが鍵で、言った言葉が耳から入って頭に刻まれる。授業はこんな具合で最初から最後までビュンビュン飛ばしていく。息抜きの冗談なんてなかったと記憶している。


ある年、風邪が流行った。その教師は、水が入ったコップを持って教室に現れて効率のいい、うがいの方法を実演して喉の半分まで濃いめの塩水を入れてうがいをするように勧めた。またある時は、授業を妨害する生徒をビビるほど厳しく叱った後で、”どうやれば表面に傷をつけないで相手を制裁する方法をしっているがそれは教えられない”と不気味なことを言ったりするので、一体どんな経験をしてきたんだろうかと子供心に思った。


決して柔和な、とか話しやすい教師像からはかなりかけ離れていたけど、少なくとも自分の授業は落ちこぼれがないようにやり遂げる意気込みがヒシヒシと伝わってきた。彼の独特の教育法もこれまでの自身の教員経験を元にあみだした方法だろうと思う。退屈な眠気を催す授業とはほど遠かった。


個人的には話したこともなかったが、かなり個性的な教師だったのでほかの教員と和気藹々という光景は見たことがなかった。多分時代が違っていたら彼は学習塾でかなりの”業績”をあげられたのでは?と思う。


図書館の管理をしていたので、休憩時間も図書館にやってくる生徒のために必ず開けて職員室には行かなかった。これがどうやらよくなかったようで、図書館の管理から外されたと聞いた。


その後、中学卒業するまでこの教師の英語授業をうけることはなかったが、時々この教師を思い出す。