日本で働いていた頃、ドイツから私が当時住んでいた街に合唱団がやってきた。


片言の英語で彼らの滞在中のヘルプをした。


“みんなで食事に行きたいから、どこか探して欲しい”


20名くらいの団体。初めての日本、和食は避けるのが無難…だよな…。どうしたものかと考えていたところ、それぞれ個別にしゃぶしゃぶ鍋を出してくれるレストランがあり、話したところ行きたい!といわれ予約をした。


気にいったようで、滞在中にもう一度自分達で訪れたらしい。


彼らが母国へ帰国する空港行きのバスに乗る直前に私の前でさっと円陣を組み、ツアーの代表者の人がさっと手を挙げると、あの有名な”菩提樹”を全員が合唱してくれた。


“泉に添いて茂る菩提樹…したいゆきてはうまし夢見つ..”


この歌を音楽の時間に習っていて良かったと思った。

彼らの歌声でまさに詞の通りの見たことがない、知りもしない菩提樹の風景が私には見えた途端、私の目から涙があふれでた。


形のないもの、触れられない物は何を持って美しいと感じるのか私には説明できない。だけどそれが感じられた時、言葉でははいい表せないないからこそ涙が溢れてしまうのかなと思う。


一生忘れることのない、美しい贈り物だった。