Priceless time の気さくなホームパーティーに招待してくれた主人は、元々ブルガリア人。


ブルガリアと聞いて思い浮かべることのできるのは、ヨーグルトという、実にお粗末な私の知識。


どういう経路でアメリカに渡ってきたのかわからなかったのが、ふとした会話から彼が難民としてアメリカに入国したことがわかった。


移民の国、アメリカ。さまざまな背景をもつ人たちがさまざまな理由で来て作られた国。


自分の生い立ちはあまり語らない人のようなので、私も詮索はしなかったが、彼の祖父が住んでいたブルガリアの瀟洒な家が当時の政権下のもと、有無を言わせず理不尽にも没収され、いまは某国の大使館になっていると彼の奥さんが語ってくれた。


“ブルガリアはね、歴史的にどこの国にも奴隷として扱われたことがないんだ。だから人は皆んな一緒。たとえお金持ちでもそうでない人も同一なんだ。精神は自由なんだよ”と話してくれた。


後にブルガリア国籍を取り戻し、アメリカ市民権をもち、独露伊仏英を操る。


さらに元々は舞台衣裳とセットのデザイナーだったと言うからぶっ飛んでしまった。道理で、なんでもデザインするわけだ。


彼がデザインし作ったキッチンは、ずずずいーと、さ、ささ奥までーというくら位長い。動線の効率がよく無駄がない。これ、全部手作り?ってきいたら、そう、、って、、キャビネットも全部。私は”水戸のご老公の印籠”を見せられたみたいに平伏してしまいそうになった。




これだけできる人なのに、奢りのカケラもない。

彼の作る料理は、いつも興味深く私は根掘り葉掘り聞いてしまう。また、彼も日本なんて縁がないだけにあれこれ聞いてくれる。今回、サバの刺身風カルパッチョは新鮮で全く臭みがらなく、こんな食べ方もあるんだと目から鱗だった。


これは牛肉に塩をまぶして長い間干した物。ハムじゃなくて純粋に牛肉100%の干し肉。室内温度が均一で湿気のないところに吊るして熟成させたと話してくれた。


ここまで何でも手作りでしてしまう背景は、動機は何だろかと思ってしまう。


単に器用な人でない事だけは確かだろう。