私は昔から、国内でも海外でも、とにかく話しかけられる。とくに、道を聞かれる。
ひどい方向音痴で、何の役にも立てないのに。
パリでは日本人観光客に道を聞かれ、ソウルでは韓国人の国内旅行者に道を聞かれた。
どこに旅行に行っても、着いた初日からそんな調子。
昨年、まだカレと恋人になる前のこと。
いつものように、地元のビーチでくつろいでいる私に
「コンニチワ〜」
と話しかけてきた黒人男性と友達になった。
アフリカンのD・38才。
イギリスで数年仕事をしていたあと、東京で5年暮らして、奥さんが大学に行くために2週間前に家族とこの街に引っ越してきたばかりだという。
オンラインで仕事ができるSEプログラマーをしており、日本人の知り合いがいないから、この街のことと日本語などを色々教えてほしいということだった。
Dの奥さんも子どもたちも近くに来て、紹介されて挨拶をした。
奥さんはすっごく美人なアフリカンで、日本語が上手だった。
Dと、週に一回会って、お互いの言語を交換して会話しようと言われてLINEを交換することになった。
週に一度会った時は、私が車で色々なところに連れて行き、子どもを連れて行くのに良さそうな公園を教えたり、地震が起きた時の避難場所を調べて教えたりした。
D家族がここで暮らすために役に立ちそうなことを教えたり、車の購入を手伝ったりするなど、よい友人関係を築けそうだった。
しかし、数回目に会った時
「実は初めてあづきを見た時、クラッシュした。
だから、話しかけたんだ。」
と言われた。(英語で)
ムスリムであることを聞いていたが
Dはイスラム教徒であり、アフリカンであるから、妻を2人持つことができる、と私に言った。
「2人目の妻が欲しいなんて、これまで考えたこともなかった。
だけど、あづきにぼくのセカンドワイフになって欲しい。
ひとり目の妻と、同等に愛し、同等に与える。
すぐには答えはいらないから、考えてほしい。」
「きみがOKしてくれたら、ぼくは妻に許しを得なければならない。
ひとり目の妻が許さないとセカンドワイフは娶れないから。
だが、妻もムスリムだから。
彼女は許すだろう。
あづき、ぼくの2人目の奥さんになってください。」
真剣に見つめられ、そう言われた。
時々スマホのGoogle翻訳の助けを借りながら。
人生初のプロポーズは、妻子持ちのアフリカンからだった。
(元夫とは、妊娠を機に籍を入れたので、プロポーズはされていなかった)
もちろん
「ごめん、むり。」と即お断りしました。
だけどほんの一瞬だけ、彼と、彼の妻と、その子ども達と仲良くしている、セカンドワイフになった自分を想像してみたのは内緒の話。
私の乏しい想像力では、それ以上なんのイメージも湧かなかったけど。
なんか、世界って広いなんだなぁ、と思った出来事だった。
ちなみにDはその後も何度か、セカンドワイフになって欲しいと言ってきたけど、私に恋人が出来たと知り諦めてくれて(時々、カレと私がまだうまくいってるのかをチェックするけど)今ではいい友達。