香りフェチは母ゆずり | 嶋田アキ&妙浩のopenthetomorrow

嶋田アキ&妙浩のopenthetomorrow

活かされている
それだけで
しあわせだなぁ
fight run
nice run
enjoy run

音は静かな方がいい

聴くなら
百恵ちゃんだったり
エレカシの宮本さんだったり
がいい

香りの方が好き

母は晩年
父からの遺族年金で
香道を楽しんでいた


珈琲の香り
1日1杯美味しく飲めたら
最高で

秋冬になるとバニラの香りを
まといたくなる
誰しも幼子のように
甘えたい本能だろうか

お家からは
白檀や沈香の香りが
漂っていてほしい
朝 水をお茶をかえて
仏さんに手向けながら
本当はわたしの心が
浄化されている

伽羅の香りを
胸いっぱい
いただきたいなら
寺院をたずねたい

去年の今ごろ
だったろうか
月に1度
当時
東京に行っており
新幹線が
京都駅から出るまで
出店してる香彩堂の
練り香水を試しては
癒されていた

もう
行かなくなることが
決まったとき
竜涎香の練り香水を
購入した

夏はさすがに
ベタついて
とろけるが
また
試すようになった

寝る前に
手首につけると
短い睡眠時間しか
とれずとも
満ちた状態で
目覚めることができる
秋になると
空が高いから
空気が澄んでくるから
香りを楽しみたくなる
金木犀は
昨日までの雨で
役目を終えたように
土にかえってゆこうと
してる

もうじき
柚子が恋しくなり
わたしは
三葉を求めるだろう

新年を迎えたら
寒さと向き合い
沈丁花を香りがしたら
もうじき春で
母さんが逝った頃になる

沈丁花は沈香の香りと
双子のよう

母さんは
自分の母さんに
なんでもクンクンするのを
叱られたそう

広島に生まれ
原爆の朝
同じ村から学校へ通う友達と
大きな雲を
見上げてきれいだなぁって

まもなく
市内の空は
みたこともない
黒い雲がかかって
大変なことがおきたことを
悟ったそうだ

女学生だった母さんたちは
それからまもなく
赤く
黒くなった
異臭とともに担がれ
体育館や教室に
運ばれた人に
水をあげることになった

母さんは
ウジをみた
そして
声にならない
声を聞いた
あまりの臭いに
吐いた
なんにも食べてないから
透明な酸っぱいものだけが
出た

そう話してくれた

先生たちは
体育館の裏で
広島市内の人々を
重ねて
焼いてゆかれた

母は
なんにもできずに
吐いたことを
年をとってから
話してくれた

わたしは
その日
はじめて
母をだきしめれたように
思う

命があるかぎり
わたしは
香りを楽しみたい

そして
あなたの香りとともに
生きたい