勢いで気になっていたホラー・オムニバスをもう一本…翌年あわや五つ星美少女ホラー「少女怪談」を撮るオ・インチョン監督が描くショートホラー・オムニバス、凄い悪評ながら結構好きな…「深く赤い夜」(싶이야:깊고 붉은 열두 개의 밤 Chapter 1(十二夜:深くて赤い十二個の夜 Chapter 1))

 

【第1夜 ドライバー】ソウルの深夜、一台の高級車ジャガーX350がパジュ(坡州:ソウルの北西)に向け走る。ハンドルを握るのは代行運転手インシク、後部座席に座るのは若く美しい女だ。女はインシクに「金は好きか」訊く。「嫌いな奴はいないでしょう」と応えると、女は「頼みを聞いてくれたらトランクに積んでいる大金をあげる」と言うではないか。そしてその頼みとは…【第2夜 PM 11:55】翻訳で暮らしを立てるヨンナンが自宅オフィステル(仕事場に近いワンルーム)の駐車場に車を停めようとすると編集長から電話が入り、翻訳をやり直せと言う。文句を言えないヨンナンは、12時までには送る、と答えるしかない。その時駐車場に怪しい人影があるがヨンナンは気づかない。部屋で翻訳を急ぎ、編集長に原稿を送れたのは午後11時55分だ。そしてその時部屋のチャイムが鳴る…【第3夜 他人の声(atmosFEAR)】音声技師クァンヒョンは映画の効果音収録のため、友人の車で深夜の公園へ向かい、ゲームに夢中の友人を車に残しクァンヒョンは公園に入って行く。彼の収音マイクは遠くに停まる車での会話も拾う。そんな時、マイクが女の悲鳴を拾う…【第4夜 秘密の夜】バス停で時間を潰したヨンミンは深夜会社(第1話のオフィステルにある)に戻る。オフィスを覗くと先輩のパク代理がまだ仕事している。トイレで時間を過ごし戻ると無人だ。ヨンミンは会社のPCにUSBを挿しある重要プロジェクト計画書をコピーする。コピーを終えオフィスを出ようとすると…

 

<演じる俳優はみんな端役でしか見たことのないので名前だけ>【第1夜 ドライバー】代行運転手インシクに、二枚目イ・グァヌン、美しい女性客に、チョン・ボルム。【第2夜 PM 11:55】翻訳家ヨンナンに、ペ・ヨンラン。【第3夜 他人の声】音響技師クァンヒョンに、二枚目パク・ウンソク、友人に、ホン・スンノク。【第4夜 秘密の夜】パク代理に、キム・ハユン、ヨンミンに、キム・イェナ。

 

まずは悲しいお知らせから。Filmarksの☆評価は何と1.6で、見たことのない低評価だったりします。むべなるかな、という思いと、良い所もあるのにぃ、という思いが錯綜するところです。1~3話が12~3分、4話が30分弱という歪な時間配分であり、必ずしも終わり方が明瞭ではないこともあってチープ、不完全燃焼の思いは理解できますが、個人的には、そこまで嫌わなくても…という思いもあります。殆ど見たことのない俳優陣は結構フレッシュですし、重大なネタバレかもしれませんが、いわゆる怨霊の類の登場は全部合わせても60秒に満たない(ある事情を除けばですが)という変わった語り口も巧いと思います。また、一見バラバラなエピソードのように見えて【第1夜】の会話が【第3夜】に登場したり、【第2夜】のオフィステルが【第4夜】の舞台だったり、などと微かなつながりを見せ、全ての出来事が同じ夜(2013年6月6日)であることを仄めかしたりする辺りも好感ですし、小道具で、【第1夜】ジャガーのエンブレム【第2夜】テレビドアホン【第3夜】高性能収音機【第4夜】USBとかの使い方も悪くないでしょう。

 

とまぁ、必死で良い所探しているわけですが、やっぱり、アマプラ有料レンタル代(¥200)の価値を感じる観客は片手で数えられるくらい、というのは動かしがたいかもしれません。さらに悪いことに、原題に「十二夜」とある通り12のエピソードからなるはずが9年たった今も残り8話が出たという話を聞かない、という中途半端な状況も、心証を悪くしているでしょう。まぁリリカルな傑作(だと思う)「少女怪談」を観て、悪くない、と思うならば、絵作りの感じなどは良く表れているので、危険な出費を冒してみても良いかもしれません。勿論、保障の限りではありません。