"100選"もチョ・ソンギュ監督も一旦脇において大ファンのキム・テリ作品なので…高麗時代と現代を駆け巡るSFアクション・ファンジー大作「宇宙+人 1部」の続編(というより全体の後半)…「宇宙+人 2部」

 

高麗時代末期の1381年、瀕死のイ・アンにムルクが駆け寄り薬を飲ませる…10年前2022年からこの時代にやってきたイ・アンは思い起こす…エイリアン(外界人)は、彼らの囚人を人間に知られぬまま人間の体を刑務所として閉じ込めてきた。しかし2022年凶悪な囚人”設計者”が人間の体から脱獄、人類を”ハバ”という毒ガスで滅亡させ全ての囚人を解き放そうと考える。その原因を断つべく10年前囚人監視を使命とするイ・アンを10歳まで育ててくれた二人の父”ガード”と”サンダー”と共に高麗時代にやってきたのだ。しかし”設計者”との激闘で二人の父とはぐれたイ・アンは、未来に戻って”ハバ”爆発を阻止するために必要な”神剣”と父”サンダー”を10年間探している。そんな彼女を、あわや夫婦になりかけた道士ムルク、魔道士夫婦フクソル(黒雪)とチョンウン、そして秘密組織”ミルボン(密本)”の仮面男チャジャンらが追う。果たして“神剣”と”サンダー”は見つかるのか、そして、”設計者”は誰の体に潜んでいるのか、はたまた、未来に戻って”ハバ”爆発は止められるのか…物語は再び動き始める…

 

<1部と殆ど変わらないのでほぼ再掲ですが…>【高麗時代】懸賞稼ぎの道士ムルクに、若手きっての演技派リュ・ジュニョル、”神剣”と父“サンダー”を探し求める女闘士イ・アンに、「アガシ」で電撃デビューのキム・テリ、サムガク(三角)山の怪しげな魔道士夫婦フクソル(黒雪)とチョンウンに、美魔女ヨム・ジョンアと最近絶好調チョ・ウジン、”神剣”を欲しがる秘密組織”ミルボン(密本)”の仮面男チャジャンに、名優キム・ウイソン、ムルクの元猫の家来に、お馴染みシン・ジョングンとイ・シフン、”神剣”の場所を知るケットンイ(犬糞)に、「二つの光」では名演キム・ギチョン、<2部で登場>チャジャンに眼を切られやはり“神剣”を求める盲目の剣士ヌンパに、今や主演映画あまたチン・ソンギュ。特別出演では、”ミルボン(密本)”老婆に、超名女優キム・ヘスク、元県監(ヒョンガム)の宿屋ビョンナンジョン(碧爛亭)主人に、演技派ユ・ジェミョン(回想のみ)。【現代】エイリアン囚人を監視・管理する”ガード”に、「技術者たち」「マスター」の若手演技派キム・ウビン、少女時代のイ・アンに、「ザ・ソウルメイト」でマ・ドンソクの娘を演じた達者な子役チェ・ユリ、凶悪なエイリアンを体に閉じ込められる刑事ムン・ドソクに、韓流ど真ん中ソ・ジソブ<回想のみ>、”ガード”に岡惚れする税関調査官ミン・ゲインに、かつて世界4位の美女イ・ハニ、エイリアンを閉じ込められるチサン病院の患者に、「正直な候補」などのユン・ギョンホ、”ガード”相棒の形態自在アンドロイド”サンダー”の声に、「国際捜査!」などの名脇役キム・デミョン。尚、1部で現代から高麗時代に来てスーツ姿のまま人を殺しまくる”殺人鬼”を演じた精悍な脇役チ・ゴヌが昨年8月45歳の若さで交通事故のため亡くなったためエンドクレジットには哀悼の辞が添えられています。

 

新キャストもチン・ソンギュだけですし、物語も前作の延長なので、続編というより、4時間映画の後半という感じでしょう。幾分とっ散らかった感のある前半に、様々な因縁が新たに判明しつつ面白さそのままにクライマックスへ突っ走る、そんな風に観ることが出来るでしょう。実に良く練られた脚本ですが、キム・テリ演じるイ・アンを軸に整理すると、高麗時代に生まれ、赤ん坊として2022年に連れて来られ10歳まで成長、そこで再び高麗時代に戻り10年女闘士として成長して再び現代へ…そんな時間軸で見れば分かりやすいと思われます。1部から連投の役者達が勿論見事ですが、新規参入の盲目の剣士ヌンパを演じるチン・ソンギュ、1部では殆ど活躍しなかった税関調査官ミン・ゲインを演じるイ・ハニ、この二人の役柄と活躍が、相当に物語を盛り上げているので、嬉しい限り、といった感じだったりします。

 

800万人らしい損益分岐点に対し140万人ほどなので興行的には1部同様惨敗なわけですが、正直、全く理解できない所で、少なくとも500万人は集められる実力を感じるのはやはり映画鑑賞力の未熟さ故なのかもしれません。高麗時代vs現代、道士妖術vsエイリアン近代兵器の対比が新鮮な上、ど派手なVFXアクション、10人を超える名優たちのギャグとシリアスを絶妙に織り交ぜた熱演、文句のつけようがない4時間だと思えるんですが…ただ1部の感想で書きましたが、ワイヤーアクションがそれなりに多用されていて、あの動きが苦手なためやはり五つ星にはわずかに及ばず、といった感じになるんだと思います。様々な続編があり続編だけでも楽しめることも多いですが、本作は、必ず1部から観ること、そして出来るだけ間を置かず2部を観ること(ただ、実際の劇場公開では諸般の事情により1年半の間が空きましたが…)、が望ましいと思われるのでご参考に…

 

楽曲について。めくるめくクライマックスを飾る名曲は、「プリティ・ウーマン」の主題歌で知られるロイ・オービソン(Roy Orbison)1963年「夢の中で(In Dreams)」。デビット・リンチ監督の傑作「ブルーベルベット」でも印象的に使われています。