”YouTubeで観る韓国映画100選”第9弾は大ファンのシム・ヘジンが出てるので…熱々カップルが結婚して起きる悲喜劇を驚くほどスマートな現代的センスで描いて本音ラブコメの元祖…「結婚物語」

 

西洋風の墓地。不敬にも木陰でいちゃつく男女がいる。同じラジオ局IBCに勤める、番組PDのキム・テギュとアニメ・洋画のアテレコ声優チェ・ジヘだ。「妻がいない時間が天国だ」「夫を切り刻んでやりたい」既婚友人たちの恨み言も馬耳東風、二人は結婚に至り、雪道を空き缶を鳴らしながら新婚旅行に向かう。始めは激しく情熱的な新婚の日々が続くが、次第に、テギュのせいで濡れた便座、びしょ濡れのシャワー室、洗面台に張り付く長い髪、歯磨きチューブの絞り方…などなど些細な亀裂が生じ始める。そしてその亀裂はある時…

 

夫ラジオ局PDキム・テギュに、当代きっての二枚目チェ・ミンス、妻アニメ・洋画のアテレコ声優チェ・ジヘに、『宮(クン)』秀麗な惠政宮(ヘジョングン)で記憶されている方も多いでしょう文芸・コメディなんでも来いの実力派美形シム・ヘジン、映画のナレーションに、文芸作品の大御所ムン・ソングン、ジヘと組むラジオDJパク・チャンスに、「千年愛」など渋い二枚目トッコ・ヨンジェ、テギュの職場に出入りする不思議な靴磨きに、顔を見れば、あのおじさんかぁ、となる筈お馴染みユン・ムンシク、テギュ上司の次長に、同じくお馴染みヤン・テクチョ、女性DJに、観てる時は気づきませんでしたが何とこれが映画デビュー今や超売れっ子オム・ジョンファ。

 

観ている時は、魅力的な映画ではあるものの既視感いっぱいの夫婦ラブコメの一本だよなぁ、といった所が正直な感想です。しかしながら”100選”の評を見ると、①夫婦が専門職の共働きであり家事も分担していること②夜の生活を含めて赤裸々な夫婦の本音が語られていること③その結果の52万人の集客は今の1000万人超えに相当する大ヒットだったこと、などそれまでの男尊女卑風メロドラマを脱却する映画史の転換点を刻む名作として選ばれたようです。エンドクレジットを見ると、”(製作を)助けてくれた方々”の中に8組の夫婦(부부)の名前が挙げられており、綿密な取材やインタビューを土台に物語が組み上げられていることが分かりますし、夫の「君と話しているより壁と話していた方がましだ」とか妻の「一人でいると買い替えのきく家具みたいな気分よ」とか生々しい会話も巧みで、さらに謎めいた靴磨き親父の深淵なつぶやきも洒落ているでしょう。

 

確かにこの映画の延長戦上に、夫婦、男女の本音での顛末を描くあまたの名作TV・映画ラブコメが生まれてきたんだろう、と考えることは十分可能なんだろうと思います。改めて単独で楽しむ、というわけにはなかなかいかないとは思いますが、個人的には、えくぼの美しい25歳シム・ヘジンの大女優へ至る経過点として大いに楽しめた、といったところでしょう。

 

使用楽曲・映像について。テギュが一人バーへ行く時のBGMは、レイ・チャールズ1962年「アン・チェイン・マイ・ハート(Unchain My Heart)」。ジヘがアテレコする映画は、ヒチコック1958年「めまい」のラストシーン、夫婦が二人で観ているTV映画は、チャップリン1925年「黄金狂時代(The Gold Rush)」で犬を連れてダンスを踊る名シーン。二人が再会する喫茶店に大きく掲げられる煽情的な映画ポスターは”Accadde in Paradiso”となっていてティモシー・ハットン、ケリー・マクギリス主演1987年「メイド・イン・ヘブン」と思われます。

 

【YouTube】Story of a married couple (결혼이야기) english subbed full movie<rouisk>(英・中字幕付き)(恐らくVideoCDがソースなんでしょう、相当画質が悪いのには覚悟が必要です)