イーエルつながりですが、それより大ファンのチャ・イェリョンがヒロインなので…綺麗なだけで高慢ちき無能女優が観念的高尚それでいて裸シーンたっぷりの舞台にキャスティングされて起きる騒動を意外にも真摯に描いて佳編…「女優はひどい」

 

芸能ニュースは女優ナビ(蝶)の悪口で一杯だ。主演した”きらびやかな継承”はボロクソ、属するガールズグループ<Suga Baby>では3分55秒の曲で歌わせてもらったのはわずか7秒、とか…それでも本人がめげる様子はない。一方、カンヌで卒業作品が高く評価されたホン・ジヌ監督はその作品”欲望の毛糸玉”を舞台化しようと計画する。しかし裸のシーンが多いためなかなか主演女優が決まらない。それを聞いたナビの所属会社タク代表は過去もみ消した様々なスキャンダルでナビを脅し、無理やり引き受けさせる。ろくに脚本も読んでいないナビも加わって本読みが始まる。監督や役者の間で高尚な演劇論が展開されるが、”カタルシス””マゾヒスト”などナビの知らない言葉ばかりだ。唯一知ってる”イデア”という言葉では、ソ・テジの名作アルバム”教室イデア”のことね、と顰蹙を買う始末だ。そんなナビにはサラという親友がいる。裸シーン代役専門の女優だ。次第に脚本を読み進むにつれて裸のシーンが多いことを知り、サラをボディダブル(代役)にすることを思いつくが、作品にプライドを持つホン監督が承知するわけがない。そこでナビとサラは一計を案じて…

 

悪評高い女優ナビ(蝶)に、女高怪談シリーズ「ヴォイス」で映画デビューしそれ以来ずっとファンの超美形チャ・イェリョン、映画監督ホン・ジヌに、映画は久しぶりですが『薯童謡(ソドンヨ)』主演といえば分かりやすいでしょうチョ・ヒョンジェ、裸専門代役女優サラに、相当色っぽいイーエル、主演男優ソル・ジャンホに、五つ星ゾンビ映画「ある日突然 4番目の話-死の森」で好演キム・ヨンジュン、ナビのマネージャー、メングンに、太目子役もすっかり太目脇役にイ・ゴンジュ、ナビの所属会社タク代表・ヒョンソクに、渋い名脇役イ・ジェグ。

 

序盤こそ、あのチャ・イェリョンにこんな演技させて良いのか、と怒りが湧く、尾籠オバカ喜劇の様相ですが、中盤すぎから一転、韓国ドラマお得意の四角関係物語に発展し、さらに様々な試練が4人を襲い…ってな結構真摯な展開になっていきます。これまたそのテーマから地上波放送は絶望的ながら、すぐに16話連ドラにするのは難しくないでしょう。この物語の雰囲気転換とヒロインのキャラ変を吉とするか凶とするかは観客によるんだろうと思います。

 

ともかく尻尾まで餡子の詰まったタイ焼きみたいに最後まで凛としたチャ・イェリョンを存分に鑑賞できるのは至福の限りなわけで、その意味でお得な作品だ、と思う偏屈もいるということはご理解いただいた方が平和なのかもしれません。とはいえ、まぁ普通考えれば、近寄らない方が無難だと思います。

 

楽曲について。エンディングを飾る洒落たポップは、チャ・イェリョンと<シュガー・ベイビー(楽屋落ちジョークと思われます)>の「近くに(가까이)」、劇中チョ・ヒョンジェが美事な美声で弾き語るのは「君(구대)」。

 

余談。途中のキャンプ場面で登場人物が”ダルマさんが転んだ”に興じるシーンがありますが、その掛け声は、”무궁화 꽃이 피었습니다(ムクゲの花が咲きました)”となります。最近大ヒット『イカゲーム』で知った方も多いでしょう。