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ネットで話題となったユ・イランの都市伝説ホラー集「ある日突然」をベースに作られた4本のオムニバス・ホラーから最後4番目、まさかただのゾンビ・ホラーに五つ星とは…、「ある日突然4番目の物語 死の森」。

江原道ソラク(雪嶽)山ハンゲリョン(寒渓嶺)峠を行く車から物語は始まる。トレッキングに向かう男女5人は、昨年の山火事のせいで目的の山への道路が封鎖されているため、無理やり脇道の施錠された登山口から山に入る。やがて、一行の一人が足首を捻挫し、進退極まった5人は野営することにするが、恐ろしい森の呪いが彼らに近づいていた…

一行のリーダー格Bigbrotherに、映画ではベテラン『グリーン・ローズ』悪役とか個性派イ・ジョンヒョク、その弟で兄と確執を抱える内向的なLonelyに、「僕の、世界の中心は、君だ。」とかキム・ヨンジュン、事故死した姉から霊能力を継いだWitchに、恥ずかしながら大ファン『恋するハイエナ』とか個性派美形ソ・イヒョン、軽薄な女たらしTomcatに、「コックリさん」チェ・ソンミン、やはり軽薄なグラマーTwinkyに、『ランラン18歳』美形チャン・イェウォン。特別出演では、Witchの姉に、『チャングム』でチャングムの母親を演じたキム・ヘソン。

所詮ただのゾンビ・ホラーにしか過ぎないにも関わらず、あまりに良く出来ていて、五つ星以外考えることが出来ない珍品にして逸品。まずはシナリオ。人間関係や小道具やその伏線がびっしり張りめぐらされた話の展開の巧いこと。別に深い世界観があるという訳ではないんですが、映画好きなら一度はこんなシナリオを書いてみたいと思わせます。そして演出。スピード感溢れるカメラワーク、画面分割、微妙なコマ落とし、ストップモーション、耳障りな音響効果などなど、その洒落た演出は、これまでにない個性的でスタイリッシュなゾンビ・ワールドを作り上げています。そしてやっぱり役者。イ・ジョンヒョクを軸にしたソ・イヒョンとキム・ヨンジュンの三人が、メロとスプラッターが渾然となった今までに見たことのない演技を見せていて、これがまた凄い。特に、これらの要素が凝縮されたクライマックスの素晴らしさは筆舌に尽くしがたく、そこまでの伏線が見事に活かされ、「韓流ドラマ」最終回のようにウェットでありながら、凄まじくスプラッターで…と、思わず涙ぐんでしまう出来ばえです。

繰り返しますが、決して深い世界観とかがあるわけではないので、真の映画ファンの期待に応える作品では絶対ないのですが、若手映画人たちの突出した才能が作り上げた、これまでにない、絶賛に値するゾンビ映画だ、と云わざるを得ません。

ちなみに、物語の背景となった山火事は、江原道ヤンヤン(襄陽)のナクサン(洛山)寺を焼失させた、映画が作られた前年2005年4月4日に発生した大規模な山火事を下敷きにしていると思われます。