シン・ヒョンジュンだけでなくイ・ムンシクも出ていて、観ずにはいられないでしょう…アヘンがはびこる朝鮮王朝の衰退期、朝鮮最高の殺手(暗殺者)を巡る時代活劇…「殺手(サルス)」

 

朝鮮最高の殺手(サルス:暗殺者)イナンについて、男が語り始める…彼の獲物で生き残った者はなく、今宵もある両班の屋敷に現れる。イナンは護衛たちを切り捨て、両班の首を刎ねるが、その後胸を押さえて跪く。心臓に重い病が現れたのだ。医者は、麻黄草(マファンチョ)という類まれな薬草が効くが手に入れることは不可能で、武器と女を絶つように命じる。しかしイナンはその足で妓生館に向かい美貌の妓生ヤウォル(多分、夜月)を抱くが、彼女は敵の殺し屋だ。イナンは女の左目を刺し、難を逃れる…1年後、追われるイナンの姿は北方の安辺(アンビョン:今の北朝鮮東南部)にあるが、居眠りをしている間に村の子供たちに刀と旅荷を奪われるほど落ちぶれている。途方にくれるイナンだが、道すがら、女が男たちに絡まれているのに遭遇する。イナンは止めに入るが、逆に男たちに蹴り倒される始末だ。女はみすぼらしい飯屋の女将ソンホンで、チルボクという少年の母親だ。あきれたソンフンはイナンを店へ連れていき、使用人として雇う。この一帯は、アヘンを栽培して売る山賊のナワバリで、頭はペク兄弟だ。そして獄につながれていた兄ペク・トチが小役人の手引きで脱獄する。こうしてイナンは否応なく、山賊、役人、追手たちとの激闘の中に再び身を投じることになるのだ…

 

朝鮮最高の殺手イナンに、『天国の階段』から活躍するシン・ヒョンジュン、小役人でありながら山賊を操るイ・バンに、こちらは『チェオクの剣(原題:茶母(タモ)』からのイ・ムンシク、みすぼらしい飯屋の女将ソンホンに、どこかで見た記憶があると思いきやマ・ドンソク主演「罠」で艶っぽい人妻を演じた美形キム・ミンギョン、イ・バンを守る若き剣士タルギに、初めて見るシャープな二枚目ホン・ウンギ、村の鍛冶屋でこの物語の語り手チョンボに、夥しいTV・映画出演歴の名脇役キム・ビョンチュン、美貌の殺手ヤウォルに、彼女もどこかで見たことがあると思ったら「デッドエンドの思い出」で無口なバイトを演じたシャープな美形イ・ジョンミン。

 

基本的には、大昔の、美男剣士が何十人もの敵を斬っても息一つ上がらないチャンバラ時代劇、ニヒルな拳銃使いが荒くれどもを片っ端から撃ち殺す西部劇、みたいに捉えれば、そんなに齟齬はないでしょう。ナムwikiの評価では「全体的に大学卒業課題水準級」「幼稚な展開」とボロクソで、それに胸を張って反論できない所が哀しい作品と思われます。個人的な違和感では、シン・ヒョンジュンの「家門」シリーズで見せたみたいなコミカル演技、不必要にトラジックな展開、妙に妖術めいた敵、など、面白いだろう、凄いだろう感がバランスの取れた楽しみを阻害しているように思います。もっと素直な活劇に徹すれば、ギラン・バレー症候群を抱えながらM-16と美女を禁じられたゴルゴ13、風のもっとスタイリッシュな物語になったんじゃないかと邪推します。

 

個人的には、50代も半ばのシン・ヒョンジュンの存在感は好感ですし、二つ年上のイ・ムンシクも貫禄十分ですし、観て損した、という感じはありません。とはいえ、そんな観客が多いとも思えないので、2時間ドラマ+α、くらいの感じで接するのが妥当なのかもしれません。