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今回も雑談から…18日"Music Bank"でも、天才グループ"Mamamoo"の<넌 is 뭔들>が1位を死守しました。慶祝! また、異才グループ"Red Velvet"が、多分七夕(チルソク)伝説をモチーフにした不思議なスローバラード<7월7일(7月7日)>でcombackしたのも嬉しい限りです。異次元風の美しいメロディが圧巻です。他にも、悲劇を乗り越えようとcomebackした"Ladies' Code" <Galaxy>とか、かなりパワーアップしてcomebackした"Brave Girls" <변했어 (Deepend)>など個性的な楽曲が揃い、ガールズグループ好きには嬉しい春になりそうです…そろそろ本題に…

STAP細胞事件の連想から長らく放置していたんですが、意を決して観てみると、これが何と傑作…「提報者 (邦題:提報者 ~ES細胞捏造事件~)」。

「この映画は実際の事件から霊感(インスピレーション)を得ましたが、映画的に再構成されたフイクションであることを明言します」。イ・ジャンファン博士招待講演「生命工学と韓国科学の未来」会場。幹細胞研究所でのES細胞研究でノーベル賞も期待されるイ博士の講演に、満員の会場は称賛の嵐だ。貧しい家。みすぼらしい男が、NBS放送「PD追跡」という報道番組を担当するユン・ミンチョルPD(プロデューサ)に、病院から帰った妻が間もなくして死んだ、と訴えている。話が眉唾だと感じたミンチョルPDは帰ろうとするが、追ってきた男の一言が彼を引き止める。男の妻は生活苦から卵子を売った、と言うのだ。事件の匂いを嗅ぎ取ったミンチョルPDは、その病院を訪れるが、そこは雑居ビルの一室で、出入りする男も病院はないと言い張る。ミンチョルPDがビルを張り込むと、バンが乗り着けては数人の若い女がビルに入っていく。やがて、ケースを大事そうに抱えた男が出てくる。ミンチョルPDはその車を尾けるが、着いたのは不妊治療で有名な"ニューマン・メディカル"という大病院の裏口だ。ミンチョルPDは、時事制作局に戻り、チーム長イ・ソンホに違法卵子売買の取材を進言するが、ソンホの顔色は冴えない。"ニューマン・メディカル"は今をときめくイ博士が関わる病院なのだ。ミンチョルPDは、却って闘志をかきたてられる。幹細胞研究所を辞職したシム・ミノ医師は、TVで堂々と語るイ博士を暗い顔で見つめている。そこへ、今も幹細胞研究所に勤める妻キム・ミヒョンが帰ってくる。ミヒョンは、このアパートを売りに出したと言う。夫が研究所を辞めて、生活が苦しいのだ。そんな夫婦の部屋を監視する者がいる。朝、二人の娘スビンが泣き止まない。スビンは難病で苦しんでいるのだ。そこへミンチョルPDから電話が入るが、妻ミヒョンはそんな人間はいない、と切る。韓国大学幹細胞研究所。出勤してきたミヒョンは、イ・ジャンファン博士に呼ばれる。博士は、夫ミノが辞めたことが残念で、二人の娘スビンのために最高の病院を準備したと申し出る。イ博士は「世界幹細胞バンク設立のための後援会」で、難病の子を救いたい、と高らかに宣言し、記者たちのフラッシュに囲まれる。夜、ミンチョルPDが家で卵子採取手術を調べていると、ミノから電話が入り、すぐ会いたいと言う。ミノの話は衝撃的だった。イ博士の核移植ES細胞作製は捏造で、そんな細胞は一つもない、と言うのだ。早朝、ミンチョルPDはチーム長のソンホを呼び出し、その話をするが信じない。二人は、キム時事制作局長にも相談する。局長も信じないが、最後には折れて極秘での取材を許可する。その頃ミノは、娘スビンの入院する病院に着く。最新の大病院だ。娘の病室には、イ博士がいる。イ博士によるミノ懐柔策なのだ。その頃、局ではソンホが、時事制作局のエースを自称する跳ねっ返りの若手記者キム・イスルにミンチョルPDの助手を命じる。こうして、ミンチョルPDとイスルによる、危険な取材が始まるのだ…

NBSユン・ミンチョルPDに、40歳を前にどんどん円熟するパク・ヘイル、イ・ジャンファン博士に、ここ最近は大作に引っ張りだこの名優イ・ギョンヨン、イ博士を告発するシム・ミノ医師に、ここ数年主演級の活躍が著しいユ・ヨンソク、ミンチョルPDの上司でNBC時事制作局チーム長イ・ソンホに、存在感たっぷりで主演もこなせるパク・ウォンサン、シム・ミノ医師の妻キム・ミヒョンに、美形リュ・ヒョンギョン、ミンチョルPDの助手キム・イスルに、「赤ちゃんと僕」「私は公務員」など主演も多いベラボーにキュートなソン・ハユン(キム・ビョルから改名)。特別出演では、NBS放送局の社長に、悪役の印象が強すぎるのに今回は…? チャン・グァン、ミンチョルPD上司のキム時事制作局長に、『冬ソナ』からずっとファンのクォン・ヘヒョ、ミンチョルPDの妻に、いつも笑える個性派女優イ・ミド。

元になった実話は、2006年に発覚したファン・ウソク(黄禹錫)博士「ヒト胚性幹細胞捏造事件」ですが、この映画を観る前に一切調べなかったことが、映画を観る上で良かったと思います。史実との差に神経質になる必要がないからです。日本でもSTAP細胞事件があり何となく観るのを先延ばしにしてた感がありますが、全くの杞憂でした。こんなことを書くと叱られるでしょうが、観た感覚に最も近いのはウォーターゲート事件を扱った「大統領の陰謀」です。巨悪に立ち向かうジャーナリスト、という映画は決して少なくありませんが、殺しも派手なアクションもないにも関わらず、提報者(情報提供者)の心変わりや上層部からの取材妨害の中、必死で真実を追うジャーナリストの姿が実に生々しく、そしてドラマチックに描けています。このイム・スルレという女流監督は、「私たちの生涯最高の瞬間」とか五つ星「牛とともに旅する方法 (邦題:牛と一緒に7泊8日)」とかの名監督ですが、独特の柔らかい語り口を持っていて、上から目線で社会派を気取ったりしない庶民的な感性は、この作品でも活きているでしょう。ミンチョルPDとイスルの凸凹コンビ、苦悩するシム・ミノ夫婦の対比を上手く使いながら物語を転がしていく腕前は、さすがだと思わせます。役者では、やはりパク・ヘイルでしょう。単調な正義漢ではなく、巨悪にたじろぎながらも取材を進める生身のPD像は見事です。提報者を演じるユ・ヨンソクもハマリ役です。自分の正義感が妻子を苦しめる、といった苦しい役所(ヤクドコロ)を静かに演じて称賛に値するでしょう。個人的には、怖いもの知らずの若手記者を演じるソン・ハユンが一押しです。暗くなりがちな展開を明るく照らす見事なアクセントになっていて、早やアラサーとなって実に次回作が楽しみな女優です。また、パク・ウォンサンとクォン・ヘヒョのお茶目な存在感も忘れてはならないでしょう。

史実を題材にしているようですが、それとは無関係に、きりりとしながら人肌感覚の上出来サスペンスに仕上がっていると思います。実際の事件との距離感は全く不明ですが、この映画作品単独の評価としては、充分五つ星と云えるでしょう。お見事です。